「国」について考えさせられるシリーズ
さまざまな部活で表現される国の個性
学園ヘタリアのエピソードとして、ドイツ・イタリア・日本の三人が新聞部として校内のさまざまな部活を紹介するものがあります。黒板に書かれた変な部たちの中には、「国旗の赤は血液部」、「一国ぼっち部」、「ブブゼラブーブー部」、「島国愛好会」などが見られます。ねこふわ部、シエスタ部、モテる研究部の部長はイタリア(部員もイタリアのみ)だったわけですが、これらの部のメンバーを勝手に想像するのも楽しいものです。島国愛好会のメンバーは日本とイギリス、アイスランド、ニュージーランドなどでしょうか。
「国旗の赤は血液部」のメンバーは、考えられるのは以下の国々でしょうか。イタリア、オーストリア、ハンガリー、スイス、スペイン、リトアニア、ポーランド、ラトビア、トルコ、キューバ、ベトナムなど……想像すると、やかましくてまとまりのなさそうな部になりそうですが、一体活動内容は何なのでしょう。気になるところです。
新聞部が取材した部の中では、個人的には美食部が勉強になりました。世界三大料理がフランス料理、中国料理、トルコ料理だということを学べました。トルコ料理は知りませんでした。
魔術部で登場するルーマニアもいい味を出しています。呪術師や占い師が多数おり、さらに国民の七割が魔女の力を信じているというのはとても面白いので、もっと本編に出てきてイタリアと魔法勝負してほしいものです。
ミクロネーションたち
国として認められていたりいなかったりの不思議な自称国家、それがミクロネーション。
シーランドは第一期「Axis Powers」で既に登場していますが、今回はワイ公国やセボルガが登場します。
ミクロネーションという概念自体「ヘタリア」によって初めて知ることになりましたが、彼らが国家を自称したかった、あるいは自称せねばならなかった理由や理念などを考えると、改めて国とは何だろうと考えさせられるきっかけになりました。
Axis Powersにて国になりたいと会議に参加したシーランドが、リトアニアに「どうすれば国になれるか」を尋ねたシーンを思い出します。問われたリトアニアは戸惑い、国になどならないほうがいい、国になるとはとても大変なのだとシーランドを諭します。リトアニアのような歴史を持つ国なら当然の考えなのかもしれませんが、反面「国である」ということは、国としてのアイデンティティを持っている、言い換えれば民族としての誇りや自国言語や文化への愛が備わっているということにもなります。
シーランドならイギリス、ワイならオーストラリアという国への反発のようなもの、そこより生まれた「自分は違う」という意識、アイデンティティ。それは非常に小さな個人レベルの国意識ですが、国というのは本来そういった小さいレベルで生まれて大きく育っていったものなのではないか、と、大陸の地図に描かれた国境線を見ながら考えてしまいます。
フランスのちょっと特殊なエピソード
ヘタリアのキャラクターは国が擬人化されたもの、という設定ですが、ちょっとずつ姿を変えながら(大人の姿に成長しながら)長い長い時間を生きているわけで、われわれ普通の人間とどこがどのように違うのか、というそもそもの疑問にちょっとした答えをくれるのが、第五話のフランスのエピソードです。「若いときフランスさんに会った」というおじいさんに写真を見せられる少年。少年が成長して青年になり、当時の写真と全く同じ姿の「フランスさん」に出会って話をするというものです。
フランスは、何故長い間姿が変わらず生きているのかと問われ、自分は船のようなものだと答えます。政府はマストで国民は風、時代は海だとも。そして修理してくれる人間がいれば船はずっと走り続けられると。
つまり彼ら「国」は、当たり前ですが、政府や国民の力によって成り立ち生きていると言えます。その船の状態は政府や国民の舵取りや修理によって変わっていくのだということです。
帰宅後、ずっと生きていられるなんていいよな、という青年に対し、青年の妻はそれがどれだけ辛いことかを語ります。自分の周りの人々がどんどん死んでいき、一人になっていく孤独と寂しさ。終わりたくても終わりにできない命というのは、ガリヴァー旅行記で書かれたような悲劇でしかないのかもしれません。
フランスはそんな二人の様子を見ているのかいないのか、窓を見上げながら優しく微笑みます。そこにフランスの国としてのこれまでの歴史や、そこで経験したさまざまな悲哀を少しだけ感じ取ることができます。同時に、フランスの国としての喜びは、彼ら国民が「普通に生まれて恋をして、遊んで笑って」暮らし、幸せな人生を送ることなのでしょう。最後のフランスの笑顔は、国民を見守る眼差しを表しているのでしょう。とても優しいものになっています。
「私が去ろうとも貴方は残る」というタイトルが、このエピソードがずばり言わんとしていることなのでしょう。国民が次々に死んでいき、時代が変わっても、「国」は残り、続いていく。
国とはいったい何なのか、ということを考えさせられるエピソードの多いシリーズでした。
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