恋人同士になるってこんな感じかな
ゆっくり流れる歩み寄りの時間
中学校を卒業し、高校1年生になる。まだ中学生っぽさが抜けない、まだまだ自分は子供である気がする。でも、確実になんだか悩むようになっていると思う。そんな複雑な気持ちになるのが高校生。卯多子と原田はクラスメイトで隣の席に座った2人。昨日まで知りもしなかったこと、意識するようになっただけで雪崩のように一気に見えてくる。昨日までってどうやって接していたっけ?なんでこんなに気になるんだろう?
初々しい。もうこの2人にはこの言葉がぴったりである。何かを感じ取るとき、お互いの周りには常に風が吹き抜けていく。髪の毛がなびいている。その風で常に心が揺さぶられている。そんな感じがして気持ちのいい少女漫画である。
恥ずかしいときに異常に耳が赤くなることや、驚いた時にあまりにも1つ前のコマには似つかわしくない反応を示したりするのがどうも気に食わないが、メリハリがあると言えるかもしれない。学校の教室で繰り広げられる、男同士のいちゃつきは、そういえばこんなやつらいたなーとは思いつつ、ちょっとぞわっとした。やけにスキンシップの多い奴って中学生だろう?ただこれも、中学生が高校生になる、なんかちょっと変わってくる。そんな時を表現しているのかもって思ったら気にならなくなったが。
基本的に卯多子はかわいい。背は高いが、原田よりは小さいのですべて許される。「ヒールを履いたら原田より大きくなっちゃってかわいくないかも…」うん、気にしたことあるよね女子の皆さん。
登場人物たちがかわいい
ヒロインである卯多子(うたまる)は、もう、かわいい奴。図体がでかいのに気が小さい、そんな女の子はきっと多いことだろう。おさるさんのような耳だって、原田に好かれるならそれは大好きになれるパーツ。自信を持ってもらいたい!いや、自信満々だとうたまるではないのだが、立派なチャーミングポイントだ。「いや~耳が残念だよね~」とか言う人ってあまりいないし。大人しい子ほど、探求心をそそる。人懐っこくて人気者の原田には、うたまるがヒットするらしい。ここで「俺モテるから」アピールや、「クラスの輪に入れてやるよ」みたいな俺様野郎だったら論外なのだが、ただうたまるを見て、そして単純に気になって、好きになる。その流れがウザくなく、自然で気持ちがいいと思った。
忘れてはならないのがうたまるの大好きな友だちである舞花。理解者を持つということは、これほどまでに強みになる。身長は小さいが、気が強くてはっきりものを言うタイプ。うたまるにとっては舞花みたいになりたいって思うし、舞花はうたまるみたいにかわいげが欲しいって思っている。そんな相思相愛の友だちで、崩れることが全然予想できないから好きだ。
そしてヒーロー原田直行。君は本当にまっすぐな奴だね。欲しいと思ったら我慢しないと言う彼の言葉に野獣感も感じられて、ドキッとした女子が多そうだ。強引というわけではなく、好きな気持ちや近づきたい気持ちを我慢しないということであり、無理矢理どうにかしてやろうっていう男の子ではないからうたまるも安心できる。いじわるすらも愛しいと思えるそんなキャラだ。
実は男のほうが先に好きだったんだよってロマン
筆者も経験があるが、私が好きになるより前に、相手の男の子も自分を好きになっていた、という事実を聞かされる時のあの喜び。もう原田にもときめく上、うたまるの心情もわかってしまって胸が高まりまくった。うたまるがかわいく身長の高さを気にして原田に告れなかったけれど、原田だってうたまるに告る勇気までは出ていなかったんだと思うと萌の境地になる。原田と同じ高さに…って言ってるが、いや、もう原田にとってはかなり高いところにうたまるはいたんだよ。ちゃんと好きだと伝えようと思える時点で、うたまるはヘタレでもなんでもなく、潔くてカッコいい奴だと思う。
ウチキタたちがカミングアウトしてくれたことはもうナイス!!としか言いようがない。すでに、始まってたんだよ。コロッケパンに関しては、なんでコロッケパン…?と思うが、やきもち焼いたり、走ったり。なにより全力投球の形としていい表現だった。走ってパンを買うことが、どうでもいいようだけれど、走って原田にたどり着くことにつながってる。
好きだから相手のちょっとしたことが気にかかるし、何より隣の席だから、友だちとの会話も気になってる。うたまるの話、聞き耳立てて一生懸命だったと思うよ原田。なぜかはわからないが、好きな人の声というのは大きく聞こえる。ありがちな表現だけれど、ストレートに伝わってくるいい空気感がこの漫画には流れているなーと思う。
カッコいいぞうたまる!
告白ですよ。告白。授業中ってどうなってんの?あの恥ずかしくて顔あげれないうたまるが、です。落とした消しゴム拾って顔が近づいて、
好き
って言える?いや、それ絶対聞こえてる!こっそりとか絶対に無理!でも最高に緊張の一瞬だった…!普段感情の起伏があまり激しい方ではないのだが、このシーンではさすがに動揺を隠しきれなかった。もしかしたら、チャイムの音が相当でかい学校で、うたまるのことをすでに好きになっている原田からすれば、小さい声だろうと聞き取ることはできちゃってたっていうことかもしれない。ここで原田が
ありがとう うれしい
ってそれは付き合おうってことなのどうなの??ここまできていじわるするの??と続きが気になって仕方なかった。夢がかなって相当舞い上がっているのを、からかうことでどうにか紛らわせているのだろう。と推測する。
原田と付き合い始めることで、友達のつながりも全然変わってくる。付き合う人間によって生き方が変わってくるっていうのは本当で、うたまるは自分に自信を持ってがんばっていこうと決める。作り上げられた自分を変えていくことはすごくエネルギーのいることだし、難しいことだけれど、それも含めて好きになってくれた原田をずっと大切にしてほしいなと願うばかりだ。相変わらず原田は小悪魔で、心配事もいろいろ重なるが、関係性は順調そのもの。あまり不安なところはないが、去り際がどうなるのかがいまいち読めないところではある。
続きがあったら嬉しい
やっと付き合うことができて、あとはどう締めるのかというところだと思う。休載で長らく間があいてしまっているのだが、ラブラブなままほのぼのと終わることができるのか、結末が知りたいところだ。この2人が喧嘩するって…どのパターンだろう。何かあってもうたまるなら直接聞くだろうし…いや、可能性の1つとしては、原田が人気者になりすぎて不機嫌になるというパターンかな。かわいいから許されるだろうが、やきもち焼いてくれることが嬉しくて、原田はそのまんまでいってしまいそう。そうすることでうたまるがちょっぴり怒り、原田がめっちゃ焦る…という構図なら想像しやすい。それ以外は起きてほしくない…。
たいていはラブがどのように深まっていくのかにスポットライトが当てられるが、Stand Upでは自分たちだけじゃなく、友達も立ち上がらせる場面が多い。何より、不登校の生徒に対して学校に来れるようにいろいろがんばってみるのが印象的。友達が友達を大事にしているのが直に伝わってくるのが爽やかである。こんな風に人のためにがんばれる人間は愛される。続きがどうなるのかわからないが、原田とうたまるがたくさんのムーブメントを起こしてくれるのだろう。
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)