自然体な恋人たちの魅力
空気感の魅力
これは卯多子と原田の恋のお話。高校1年生になって初めてのクラス。隣の席に座った人とまさか恋に落ちるなんてね…狭かった世界が一気に広がっていく。学校という空間の中で起こる出来事はいつも真新しい…
このStand Upの中で印象的なのは、「風」ですね。いつも風が吹いて、吹き抜けていく。学校の中、教室の中、卯多子や原田の周り、風がびゅーっと吹いて、隠そうとするもの全部をさらけ出させるというか。爽やかさの演出がそのまま風として表現されているように思います。全体的にとても静かで、そこにあるのはそのまんまの会話だけ。会話は飾らず自然体です。どうでもいい会話なんだけど、着実に近づいている感じ、無駄がないなーと思いますね。また、絵がとても綺麗なので、卯多子や原田が風に紛れて流れていくような、そんな描写が素敵です。
ちょっと変わってるなーと思うのは、驚いた時の描写ですかね。静かな雰囲気の漫画なので、いきなりガタッ!!と立ち上がったり、突如としてジェットコースターにでも乗ったのかというくらい線が急に変わりだしたりするんですよ。なんだ、この空気に合ってない驚き様は…確かに、読んでるこっちもびっくりしたよ。インパクトは十分伝わってきますね。また、女からすると、男同士のやけにスキンシップの多いからみがどうも理解できないなと思ってしまうのですが、物語の中で男友達の多い原田をあらわすこと、卯多子との世界の違いをあらわすためにはけっこう重要だったりするのかなーと思います。
キャラクターの魅力
まず主人公の古屋卯多子(うたまる)ですが、かわいいよね~…身長が172cmもあるって忘れるよ。原田よりは若干小さい気がするから、気にするな!気が小さくて、恥ずかしいと耳が真っ赤になってしまうというのが特徴的なうたまる。そしてそれきっかけで原田に興味を持たれたという節もありますね。ピュアのかたまりみたいな女の子で、内気ってほどじゃない。何を考えているのか解き明かしたくなる魅力を彼女は持ってますね。原田の気持ちがわかるわ~。
うたまるの友達、舞花。うたまるの良き理解者であり、応援してくれる親友。小さくてかわいいが、意思が強くて面白いキャラ。うたまるとは真逆だけど、お互いがお互いに憧れみたいなものも抱きつつ、大事にしているのが伝わってきます。舞花って、フルネーム太子舞花なんですよね…サッカーのくだりのときにわざと太子って使って面白くしてるんだと思ったら、本当に自分の名前言っただけだったって言う…2度おいしい面白さがありました。
そして原田直行。彼は本当に…正直で、全力投球。ほしいものは絶対我慢しないという彼は、仲良くなりたい人とガンガン関わろうとする。言葉もストレートで、優しく、人を傷つけることがありません。原田のいじわるは…かわいいよね。振り回されるうたまるがちょっとかわいそうにも思いますが、許してしまいたくなるそのやんちゃ感。クラスに1人くらいいるよね~ってうたまる言ってるけど、いないですが。
身長と立場と気持ち
うたまるがコンプレックスにしている身長の高さ。物語の中で対比としてよく使われています。例えば、体は大きいのに、気が小さい。身長が大きいのに、原田のいる高さには立ってない。そんな表現のされ方ですね。中学校での失恋も、身長がネックになっていたところがあります。自分は本当は全然だめなんだ。そんな自分を卑下する気持ちを表しつつ、その高さはだんだん身長に負けないくらいの高さへ自分を持っていこうとがんばる目標として意味を変えていきます。原田と同じ高さで世界を見れるように・ちゃんと好きだと伝えよう。うたまるの芯の強さが素敵です。
原田はね、ちゃんとうたまるのこと見てましたよ。ウチキタたちがばらしてたけど、もうラブは初日から始まっていたのでしょうね…名前を最初から把握しているし、一緒に帰ろうって誘うのってすでに始まっちゃってるとしか思えません。うたまるも、すぐコロッケパンの人にやきもち焼いちゃうくらい、すでに原田ラブでしたね~…恋の始まりは本当に何気なく、どうでもいいようなことから始まっている。ちょっとしたことも気になるし、気づいたらいつも相手のことを考えている。恥ずかしいと思ったり、優しくしたいと思ったり、知られたくないけど知りたいと思う。そんな気持ちの表現が細やかに演出されていますね。好きな人にどう見られているだろう?近くにいてもいなくても、君の声だけは耳がとらえようとするんだ…わかるわ~何話してるんだろうって聞き耳立てるから、意中の人の声だけが大きく聞こえるんだよね。
一番は告白シーンだよね
一番の名場面といえば、告白シーンですよね。だって授業中よ?しかも恥ずかしがり屋のうたまるから。原田が消しゴムをまさに拾ってくれようってときに、目と目が合って好きだともらす…無理。まじで無理。公衆の面前で。うたまるすごすぎ!しかも、授業が終わるチャイムの音に隠れてこっそりずっと愛を伝えるって、すごくない?チャイムどんだけでかいの。そして前の席の人どんだけ耳聞こえてないの。そのまま掃除の時間になり、掃除のガチャガチャした喧騒の裏でまだ語らっている…原田の答えも、ありがとうとうれしいだけって…ちょっと!心決まってるでしょ?もったいぶるなよ、願ったりかなったりだろ?!告白OKを出すのは2人乗りの自転車の上で…絶対焦らして楽しんでる。嬉しくて舞い上がっている。うたまるのこと言えないくらい、耳が赤くなっている。ぐ…そんな原田も好きだ…!
付き合ってからの原田は、かわらずやんちゃです。うたまるは自分にちゃんと自信を持とうとがんばっていく。元カノがどうだ、不登校の奴がどうだ、いろいろあるけど、二人は順調に愛を深めていきます。付き合ってから、登場人物たちはどんと増え、いったいどんなことになるのだろうかとちょっと心配になりました。しかし、これはもちろん、うたまるの世界が広がったことを表現していると思うし、どんどん新しい自分を見つけていってほしいなと微笑ましくなりました。
これからの話
なんと途中作者さんの休載により中断されていたこの物語。そろそろ終わるかなーと思うのですけれど、単行本でピシッと締めてもらいたいですね。うたまると原田の恋は1歩ずつ、好きが積もっていく感じ。どうかこのまま離れずにいてほしいと思いますね。というか、ケンカは想像できないな~…お互い正直に想いを伝え合える人だと思いますし。迷ったらアドバイスをくれる友だちにも恵まれているし。原田のいじわるがちょっとエスカレートしてうたまるを若干本気で怒らせちゃうみたいなエピソードは普通にあっていいけど。甘さの限りを尽くした二人を見せてもらいたいものです。とったとられたはやめてほしい限りですよ。
2人は協力して不登校の生徒を学校に通ってもらえるよう動いたり、まさに「風」をクラスに入れてくれています。どんだけ爽やかさん…クラス公認で、いい子たちで、仲が良くて、泥臭さがない。そんな学校もいいよね。ていうか学校ってそういう学び舎であったほしいですよ。いつも嫉妬と憎悪で渦巻いているよりもずっと楽しい。タイトル通り、何かあったらStand UP。前向いてとにかくやってみろ。若いからこそ結果が予測できないことが多い。何があるかわからないからやるしかないし、やってみないことには何も手に入らない。頑張れ少年少女たち!
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