タイトルの意味に注目してみて! - さんすくみの感想

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漫画レビュー数 3,135件

さんすくみ

4.504.50
画力
4.00
ストーリー
4.50
キャラクター
4.50
設定
4.17
演出
4.33
感想数
3
読んだ人
3

タイトルの意味に注目してみて!

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
5.0
演出
5.0

目次

ゆるいキャラクターが魅力

メインキャラクターたちのゆるいキャラが魅力的でした。3人の青年の日常を軸にストーリーが進みますが、その3人はヘタレな神職、チャラい上にオカルトが趣味の神父見習い、幽霊が怖い僧侶…。いずれも神職、神父、僧侶のイメージとはかけ離れた、普通の人よりちょっとダメなキャラクターですが、だからこそ宗教的な職業の設定にもかかわらず、特別な感じがなく、親しみが持てました。

「うちは延命長寿の神様を祀ってるけど、どうせなら近くの神社みたいに縁結びの神様ならよかった」とか、「お化けが怖いから夜のお墓は行きたくない」とか、グダグダですが、でもきっと、そう言うことで苦悩している神職さんとかお坊さんもいますよね(笑)。

禊払いの人形についつい願い事を書いてしまったり、きわめて俗っぽい3人ですが、人間味があって微笑ましいです。なんだかんだで仲良しなのも、きっとこのままおじいちゃんになっていくんだろうな~という感じがして微笑ましかったです。

そんな雰囲気だったので、こちらもついうっかり騙されて、「3人だからタイトルは『さんすくみ』でいいか~」という感じなのだと思って読み進みました。

宗教のことが軽~く学べる

ゆるい青年たちが織りなす、ゆるいストーリーの中に、神道・キリスト教・仏教の豆知識が混ぜ込まれているので、普段あまり知る機会がない宗教のことをサラッと軽く学べるようになっていて、そのさじ加減が絶妙だったと思います。

難しすぎず、専門的過ぎず、「キリスト教ってそうなのか~」「仏教ってそうなんだ~」という感じで、読み進むうちに自然に宗教のことが少し解かるようになっているので、入門書のさらに入門編みたいな読み方もできますね。

プロテスタントとカトリックの違いや、神道式のお葬式のやり方など、おそらく多くの人が「そう言えば気にはなってたけど知らなかった」と思っているであろうことが書かれていて面白いです。地鎮祭のやり方なんかも、家を建てたことがある人や建築関係の人じゃないと、普通はなかなか知る機会がないですよね。個人的には、「地鎮祭の様子を見てみたいけど、知らない人の家の地鎮祭をじーっと見るわけにいかないしな」という願望を叶えてもらえたのもよかったです。

やる気があるのかないのか分からない、グダグダな青年たちを通しているおかげで、神職の苦労や神父の苦労、僧侶の苦労も身近に感じやすかったです。

特に、お坊さんの棚経は、どの家もお茶菓子出すから途中でお腹壊して辛い…というシーンは、「あ~!確かにありそう!」という感じでした。

そんな感じで全体的にゆるい雰囲気ですが、その中にたま~にわりと真面目なシーンが出てくるので、ハッとします。小さいときからお世話になっていた氏子さんの神葬祭を、未経験で自信がないながらも斎主を務めると決心するまでの主人公の葛藤などは、世間一般人の私たちも身に覚えがあったりして、ドキドキしました。

タイトル「さんすくみ」にまさかの意味が!

冒頭で書いたとおり、「さんすくみ」というタイトルは3人だからという理由でテキトーに付けられたものだと思っていました。何しろ、キャラもゆるければストーリーもゆるいので、作者もそんな真面目にタイトルを考えていないだろうと思っていたのです。

私はデジタル版で読みましたが、完読している他のレビュアーも、みんなタイトルの意味までは気が付いていなかったようですが…。(実際、3人だからさんすくみなんだよね、という内容のレビューもありました。)

 この作品は、メインキャラクター3人の心情をちゃんと見ながら読んでいくと、「さんすくみ」というタイトルがかなり重要な意味を持っていることが解かります。ですが、理解力や読解力・想像力に乏しい人だと、何回読んでも解からないかもしれません。全体的にサラッと描かれているので、ちょっと気が付きにくいんですね。

3人とも自分の家の家業をクラスメイトに言えずに孤独な子供時代を送って来ましたが、自分と同じ境遇である他の2人に出会うことで、初めて家のことを隠さずにつき合える友を得ました。だから仲良しだし、家業のことも含めて受け入れてもらえる居心地のよさもあるし、そしてそういう友達はきっと、他にはいない…。

だから、お互いに、離れられたり、今の関係が壊れるのが怖いんです。ぬるま湯のごとく心地良い関係に、3人とも身動きが取れなくなってしまっているんですね。3人のそうした心理状態を表しているのが「さんすくみ」というタイトルです。

私はてっきり、ゆるゆるダラダラと最後まで行くものと思っていたので、タイトルの意味に気が付いたとき、「え!?これ真面目な話だったの?」という衝撃を受けました。やられた~!って感じです。だって、全10巻中、9巻の終わりまでゆるゆるだったんだもの(笑)。まさか今さら、真面目な展開が来ると思わなかった(笑)。

9巻の最後の辺りから最終話にかけて、3人がそれぞれ、さんすくみ状態から脱却していく様が見ものでした。この3人みたいな時期って、結構みんなありますよね。

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