詩春さんの笑顔に癒される漫画
年の差ってやっぱり関係ない
詩春さんは高校生。孤児院で育ったけれど、自分がお姉さんとして小さな子どもたちをお世話することが、何より楽しいことだった。そんな詩春さんは、アルバイトとして働いていた保育園で茜と葵という天使のようにかわいい双子と出会う。詩春さんのことを気に入って、どうしても離れたくないという双子。純粋で、わがままで、かわいい子どもたち…ついつい願いを叶えたくなってしまった詩春さん。双子とその親代わりである松永政二さんの事情を知り、ベビーシッターとして働かせてもらうこととなる。
なんかこう、ゆるぎなく癒し系で、鈍感な詩春さん。いい子で、直の気持ちにも気づいてなくて、でもイラっとはこないそのパワー。素敵だった。松永さんは、詩春さんの境遇にも同情したし、苦手な子どもの世話も頼める、家も片づけてもらえるとあっては、もはや断る理由が見当たらない。詩春さんが高校生だから、自分が好きになるなんてことはない…はずだった。付き合うという段階を通り越して、もはや家族から始めたこの4人。毎回ほほえましい出来事ばかりで、このまま家族になっちゃうんじゃないかって何度も思ったね。でもやっぱり、本当の親が登場し、育ての親との対比をさせながら、どちらも大切な存在であるということを再確認させてくれた。17巻も続くとは思ってなかったけど、おもしろい話だった。世の中女子高生との淫行がどうのこうのと騒いではいるが、普通にサラリーマン男が女子高生に恋するってあるんだろうねって思う。変な行為はもちろん除くが、やはり魅力的な相手に対してはもはや逆らえないのかもしれない。
イケメンの生活能力のなさに萌
松永さんは本当にいい奴である。大人として文句言わずに働いているし、自分がアナウンサーであるということを肝に銘じていて、詩春さんへの想いを大切に、葵と茜への想いを大切に、生きていこうとしているのが実に好印象。茜と葵を置いて出ていった兄のこと、ふざけるなと思いながらも、自分の兄妹として憎めない彼の優しさもまた、詩春さんにはよく合っているというか。誰かを大切にできる人って…いいよね。
そんな彼は本当に生活能力が低くて…かわいかった。そんな松永さんを、大人だけどかわいい人・お世話しがいのある人、と思えた詩春さんは、もはや精神年齢の高さをうかがわせる。
最も彼が輝いたのは、やはり詩春さんへの告白シーンであろう。もうどんだけ待ったと思ってるんだ!というくらい、待ちに待ったシーンだった。
今のオレと同じくらいの歳になっても希望があるなら…
そんな先まで待てるんだ…!あーいい言葉。いつまでも君だけだよみたいな!詩春さんの気持ちを考えて、立場を考えて、それでもやっぱり俺はこうやって生きていきたいと思うから。誠実さがよく伝わるセリフだった。「大切だと思うものを守りたい」という気持ちでいた詩春さんを、今度は俺が守りたい。お互いが両想いになるまでの間にも、詩春さんだけでは解決できなかったことがいっぱいあって、そのたびに松永さんが助けてくれた。松永さんにとっても、自分にできないことをいとも簡単にやってのける詩春さんは魅力的で、手放したくない人だった。あー恋したい。梨生ちゃんごめん。松永さんとだったら、詩春さんの欲しい終わらない場所がつくれると思うんだ。
少しずつ成長する双子の天使
泣けば誰かが助けてくれる。泣いて待っていれば詩春ちゃんがきてくれる。そんな子どもも、成長とともにいろいろなことを覚え、自分にとって大切な人を自分たちも大切にしようとする。こういう流れを見ていると、やはり子は育ての親を見て育ち、学び、愛されているからこそ誰かを愛そうとできるということを知る。嬉しかったこと、相手が楽しそうに笑うことがなんであるかをきちんと見て、それを与えようと一生懸命努力する。それは褒められたいからであったり、また自分たちが愛されたいからでもあるのだが、「ありがとう」の気持ちを少しずつ覚えていった茜と葵が本当にかわいらしかった。
そんな2人が、本当の親の元へと行かなければならなくなったラスト。辛かったが、一生のお別れなんかじゃない。詩春さんが2人にくれたもの、松永さんが2人にくれたもののおかげで、これからがつくられていく。子どもを持つということは、いろいろな責任が付きまとうことだし、難しいこともいっぱい起こるが、やはり愛情いっぱいに育ててあげることを忘れずにしたいものである。
それにしても、双子はかわいい。やることがよく似ているのもかわいいし、実はお互いにけっこう考えていて、子どもなりに相談しあったり、悩んだり…小さいうちは本当に育てる苦労だらけのように思うが、喜びだって2倍になる気がする。そして、そんな2人の素朴な質問に対して、ひらりと返す詩春さんのスキルには恐れ入る。
詩春さんを強烈に追いかける恋はなかった
たいてい、ヒロインにはヒーローともう一人、恋のライバルになる人物が現れる。おそらく、直だったと思うのだが、インパクトはだいぶ薄めだ。孤児院にいて、ずっと詩春さんのことを好きだったにもかかわらず、本人にいつまで経っても言えなかった直。俺だって…と思えるほど、直は強くはなかったし、松永さんに勝てるところがないと考えていた。フラれても仕方ないって思っていて、詩春さんにとってはやっぱりかわいい弟ポジションであった直は、当て馬にもなりきれていない。ド根性でがんばるってこともしないのは、詩春さんを困らせたくないっていう、直なりの優しさでもあり、そんな彼の事は、ひそかに応援してあげたいと思った。せめてもう少しキャラのたった奴だったらな…身長が低くても松永さんと張り合えたと思うんだ。
物語のテーマとしても、家族に憧れる詩春さんが、どうやって家族というものを知っていくか、そして自分でどう作り上げていくか、ということがメインになっているので、やきもちやめんどくさいやり取りは最小限。そのほうがまぁ正常と言えば正常であるし、健全な漫画だったなーと感じられる。好きだという気持ちが、本当に激流のようになってしまう人もいれば、松永さんと詩春さんのように静かに生まれて大きくなっていく人もいる。どろっとした漫画を読んだ後には、白飯的に読むとほっこりとするであろう。
成長した葵が奪いにやってくるかもしれないが…それはまだ先のお話。松永さんを熟知し、よりダークに、Sっ気全開で攻めてくれるに違いない。
やはり白飯は長く続く
安定感があるからこそ、連載は長くなる。まさか続編が違うタイトルで出るとは思っていなかった。確かに、さらっと読めて、ほっこりして、嬉しくなれる漫画は長く読みたいとは思う。LOVE SO LIFEでは、松永さんが男になりきれていなかったため、強引だが優しい松永さんも…できればのぞかせてほしいと思う。そりゃー落ち着いた優しい彼を残しておいてほしいとは思うが。どんどん大人になっていく詩春さんだとは思うが、変わらないものがどうかあるように。それは切に願いたい。詩春さんには、ちゃんと母親がいたという記憶があり、愛情の記憶もあった。これが彼女をこんなふうに優しい人に育ててくれたのだと思うし、これからも自分の家族だけでなく、大切だと思う人に愛情を与えられる人であってほしい。
成長した葵と茜は、それぞれに恋をするだろう。葵はすでに詩春さんを狙っているが…どんな気持ちを見つけるのか、楽しみである。
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