ゆずゆを愛する結平が愛しすぎる
ほっこりだけじゃない展開が素敵
一言で言えば、本当にいい話。蒸発しちゃった親戚の子どもを、まさかの高校3年生男子が面倒をみることになるというトリッキーな展開。女遊びの激しかった結平が、ゆずゆを理解しようと奮闘していくことで、どんどんママスキルを高めていく物語になっています。全体として、ゆずゆと結平が心を通わせていく過程が描かれているのですが、子どものゆずゆは素直ですぐに誰とでも仲良くなるタイプ。成長しているのはむしろ結平のほうだっていうのが物語のミソだと思います。ただ、結平のもとからの良さもすごくあるんですよ。寄ってくる女の子と遊びまくっているが、優しいし、人望がとにかくある。先生の怒り方も、漫画とは言え優しい雰囲気ですし、終始ほんわか~としています。イケメンだけど、憎めないキャラの典型というか。でも男として決めるところをきっちりとキメるので、こりゃー女の子にモテないはずがない。心ちゃんも、そんな優しい結平が大好きだったんだよね。チャラ男のギャップ、本当に心臓に悪い…。
そして、ほっこりしているだけではなく、ちょっとダークな雰囲気も混ぜているのがおもしろいですよね。まさか幼稚園児のゆずゆを本気でいじめようとする恩田さんみたいな人が出てくるとは…って感じだし、心ちゃんに片想いして勢い余ってキスしてケガさせるような奴も登場するし、そしてゆずゆの母親の蒸発と勝手な再婚という大問題…結平は頭が悪いからなのか、あっけらかんとしているところがありますが、これは一大事のことばかりですよ。あと一歩で犯罪か?というレベルでしょう。ゆずゆが母親の記憶失くしそうになるくらいストレス抱えるというのもリアルさがありました。
ママっぽい結平とパパっぽい心
結平はモテるけど、実は結平といつも仲良くしているお友達は男勝りな女の子ばかり。ビシッと言うこと言ってくれる元木さんみたいな子ばかりです。それはやっぱり結平元来の女の子みたいなかわいさのためだろうなーと思いますね。ゆずゆを育てていく過程で、もうやってることどんどんママになって…一番結平がママっぽかったのは、やはり毎日のお弁当作りシーン。ゆずゆのお弁当づくり、時間がかかっちゃうから早起きなんだよ…ってどんだけかわいいの。もうがんばっている結平を誰か抱きしめてあげて!イケメンだけではない、結平の本来の優しさと、ゆずゆが一緒にいてくれたことで学べた「親」という立場、高校3年生にして、家族を知ったって感じでした。おかげさまで女遊びをする暇もなく、ゆずゆに愛情を注いでいきます。
そこを支えてくれたのが心ちゃん。口数少ないけれど、優しく、美しい女の子でしたね~。クールビューティー素敵!ゆずゆのピンチを何度も救ってくれた、ヒーローのような人でした。だからこそ、かわいすぎる結平とお似合い。なんか結平と心ちゃんが付き合うタイミング、微妙~に早かった気がするんですけど、気のせいですかね…?ゆずゆにかまけて心ちゃんにかまってあげないとか、どんだけ女の気持ちのわからない奴なんだよ結平。なんかいろいろゆずゆちゃんがらみで心ちゃんと乗り越えつつ付き合うのかなーって気がしていたのに、別個でそれぞれの成長を描いていた気がしますね。ゆずゆがいたからこそ心ちゃんの気持ちがわかったことがあって、心ちゃんがいたからこそゆずゆのことが分かってあげられたこともあって…持ちつもたれつ、心地いい雰囲気が流れていました。
母親の存在の大きさ
ゆずゆと結平の日々は永遠じゃない。それを日々感じていく結平。そしてゆずゆもちゃんと考えているんですよね。そこがもう…かわいいというか、むずがゆいというか、幼稚園児だってなんだって、人間ちゃんと相手の事を考えるんですよね。
結局、蒸発した上に新しい男の人と再婚することにした都おばちゃん。でも、決してゆずゆを憎んでのことじゃない。それはわかるんだけど、そんな自分の子ども怖がってどうするんだよ!って言いたくなる母親が多い事でしょう…こんな母親ありえない、と。迎えに来てくれたのはいいけどさ。子どもが産めないとわかってしまったお姉さま、どんな気持ちでゆずゆや結平を見ていたか…産んだからには責任を果たす。親ってそうでなければならないんですよね。今までそうやってずっと責任を果たしながら、脈々と人はつながってきたんですから…。ちょっと飛躍しすぎた…。
結平が、結局本当の母親にはかなわないんだな…って言ったこと、うん、そうなんだよねって思いました。ましてや相手は幼稚園児。ママのこともちゃんと覚えている子どもなんです。記憶のないうちから育てていれば、絶対結平と一緒にいることを選んだと思うけど、思い出のインパクトの分だけ、離れて悲しかったという記憶の分だけ、やっぱり母親が勝ってしまう。「母なる大地」とはよく言ったもので、母には勝てないんだわ、人間。
永遠の別れじゃない
ゆずゆと結平は離れ離れになってしまったけれど、別れはとてもあたたかで、もう名シーンですよね。結平、一番イケメンだったと思うよ!離れて暮らしても、いなくなるわけじゃない。ここで過ごしたこと、絶対忘れないで…もうその気持ちがヒシヒシと感じられるし、共感できてしまいました。これからはきっと、心と結平が育んだ家庭に、新たな命が生まれてくれるんだろうって思えた、いいラストだったな…
7年後のお話、とてもよかったですね。ゆずゆが実際に会いに行くのではなくて、小学生になったゆずゆの手紙っていうのがまた…かわいい。きっと直接会いに行ったら母親にも申し訳ないっていう気持ちを持ったんじゃないですかね。それくらい、あの頃よりもっとたくさんのことを考えられる年齢になったんでしょう。結平と過ごした時間は、人生の中であまりにも短く、いつか忘れてしまうくらいの出来事かもしれない。だけどちゃんと覚えててくれたんだね。愛情が伝わって、素敵な思い出としてゆずゆに残っているんだねって思ったらもう目頭が熱くなります。大きくなったら、きっと会いに行けるよ。だって親戚なんだし、会っちゃダメってわけでもないんだから。いつか気軽に再会できるようになってたらいいなーって妄想を膨らませてました。
できれば皐のこと、鈴子のこと、ハッピーにしてくれる何かをもっと見たかったですね。特に鈴子は、本当に複雑な気持ちでゆずゆを・都おばちゃんを見ていたと思うから。子どもを持てても育てられない人もいる。子どもを持ちたくても持つことができない人もいる。掘り下げるとちょっとシリアスすぎる話題も含めてくれているので、けっこう考えさせられるよね。
結平の母親はどうした
最後にちょっと言いたい。結平の母親、全然働いてませんけど…?結平がママとして奮闘するのはとてもおいしい展開でしたし、グッジョブなんですけど、なんかこう母親としての心得の伝授とか、母親らしいサポートを見せるとか、もっとないんですか?って思ってしまった。結平だけでは解決できないことを、こっそり手伝ってくれるような話があってもよかったんじゃないでしょうか。せっかくこれだけ事情の分かる人がいて、育てるということを知っている人がいるっつーのに、結平に全部任せているのはちょっと影が薄すぎです。しかも事を起こしたのは自分の妹ですからね?もうちょっと仕事してくれたらもっと厚みが増した気がするな~って思います。
結平が心ちゃんと結ばれたことは本当によかったな~と思うし、ゆずゆが母親のもとに帰れたことも、素直に嬉しく思いました。最後まであたたかな雰囲気のままでいてくれて、読んでる側も優しい気持ちになれますね。結平ラブ。
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