封神演義を読んで考えさせられたこと
太公望の妻になった馬氏は賢い人だった
地上に降りた太公望は、馬氏と言う名のお婆さんと夫婦になります。68歳なので美貌はやや衰えていますが、料理の技術は一流で結婚式の際の料理を作っていました。中国の小説は不思議と、老いて益々盛ん、と言った言葉が似合う人物が何人か登場します。もしかすると、老いても若い者に負けずに頑張れるということを伝えているのかもしれません。素晴らしい考えなので、見習いたいものです。
そして馬氏は、「なんでもいいから商売をして銭を稼げ」と言って太公望の尻を叩きました。これは現代にも通じる部分なので、数千年前からこうした思想が確立しているのはすごいと感じました。貨幣経済は日本でも古くから行われていることですが、それでもまだ歴史は浅い方です。中国4千年の歴史という言葉がありますが、文化として成り立っているので、言い過ぎではなさそうです。ただ、崑崙長寿薬については、内容がせこかったせいか笑い話にしか見えなかったです。着眼点は悪くないですが、売れたら問題がありそうです。
離縁状を書いて離婚が成立したにも関わらず、馬氏の国へ殉じた態度は立派でした。夫でもある太公望への思いが残っていた可能性もありますが、これは誰にでもできることではないです。ただ、馬氏の話を聞いた後の太公望の反応が、やや薄かったのが残念です。できれば、心の中で涙を流したという演出があったり、またはこっそりと隠れた場所で泣く場面がほしかったです。宰相として軍を進めていく必要があったため、非情に徹しなくてはいけなかったのはわかります。ですが、悲しむべき場面では、きちんと悲しんだ方がいいと思います。
申公豹は何故封神されずに済んだのか
封神榜に名前があったのですが、白鶴童子が名前を消し、代わりとして飛廉と悪来の名が加わりました。この2人は悪さでは凡道を超えていたため、封神されるのは納得がいきました。
封神にならなかった理由には、皇帝から帝位を譲られた際に断った経緯が挙げられます。しかも断った後に耳が汚れると言って、家の裏にある川で耳を洗ったのだから驚きです。普通の人間なら皇帝になってほしいと言われれば、贅沢三昧な暮らしができるため、すぐに話に飛び乗ってくるでしょうね。私も間違いなく皇帝になっていたと思います。こうした人間の欲望とは無縁な人は、太上老君の言うように、確かに三界共有の人間宝貝かもしれません。珍しいタイプの人間なので、封神せずに放っておこうと考える気持ちはよくわかりました。
中国の歴史を見ていくと、帝位を拒否したという人間は出てきていないです。武力で侵略して領地を奪い、皇帝を名乗ったりする場合がほとんどです。三国志の魏に帝位を譲ることを断った話はありますが、こちらは策略が絡んでいるので、その例には含まれないです。
仙人としての能力がずば抜けているのも理由に見えますが、似たような技量を持つ者が何人か封神されているため、違うと判断して良さそうです。あと、最後まで生き残ることができたのは、実力だけでなく黒点虎の存在も大きいです。黒点虎には千里眼の能力があるため、申公豹に危害を与えようとする者がいれば、すぐに見つけ出すことができます。移動速度も迅速なので、逃げるにはうってつけな乗り物ですね。
封神榜に武吉の名前が載らなかった理由とは
太公望が西岐に向かった際に、出会った人物に武吉がいます。2人の出会いは、武吉にとって出世につながり、将軍としての地位を得る結果へとつながります。ですが、武吉の名前は封神榜に載らなかったため、最後まで生き残ることができました。あと、武吉の武将としての能力はかなり高かったので、名前が出ていてもおかしくなかったです。命令を無難にこなしていたので、そんな風に思いました。
武吉はムードメーカーとしての役割も担っていました。中盤以降は仲間達が次々と封神されていくのですが、1人だけ明るく振舞って、味方を元気づけようとした場面もありました。なので、物語を暗くさせないようにする役割を担っていた可能性があります。やや乱暴な言葉も多かったですが、書いてあることはその通りだと納得できる部分ばかりで、普通に読むことができました。
最後の方には、太公望と武吉が仲良く斉に出発する場面が出ています。名前が載らなかった理由には、太公望が斉に向かった後のことを考えていたことも挙げられそうです。それを視野に入れていた人物は、恐らくですが元始天尊だと思われます。裏から全てを操っている、そんな雰囲気がありますが、策士ならではのやり方と言えそうです。また、太公望にはまだ役目がある、それには武吉という優秀な人物が必要だ、そう思った人がいてもおかしくなさそうです。1人で斉に向かえば前途多難ですが、武吉という優秀な人物がいれば、協力しながら国造りができます。その結果として、斉国は一気に強くなっていったみたいです。
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