憎むべき者が何なのか考えさせられる - あやしやの感想

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あやしや

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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憎むべき者が何なのか考えさせられる

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画力
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ストーリー
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キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

カラーで読みたい美しさ

ぱっと見はおどろおどろしい、ホラー系を連想させるイラストです。単行本・雑誌ともに、カラーが最高ですね。色彩が美しく、そんなに人物画は繊細な感じではないんですが、妖艶でもあり、妖しい雰囲気もあり、恐ろしくもある。雑魚の鬼の形相はいかにも怖さを引き立てますが、白陽のように異質な雰囲気と怖さのある人物も綺麗に描かれています。

舞台は鬼と人が存在する世界。江戸か京都のような、都が舞台になっています。そこで毎夜繰り広げられる鬼と人との戦い。鬼は人を喰らうことが必要であり、人は喰われぬように抗うことが仕事である。グロめのシーン・バトルシーンがメインになっているので、そちらは血しぶきの激しい画になっていますが、目も当てられないというほどではありませんね。むしろ、だまりの食事シーンはそんなにグロくはならないと思うので、見せてもらいたかったかなーと思います。人が人を殺すほうが、もっと生々しく、気持ち悪い。

そんな世界で、鬼を倒し鬼を喰らう、人でもなく鬼でもない仁とだまりが、自分たちの利害のために協力して戦いを繰り広げます。鬼導隊はいけ好かない奴らばかりで、隊としての統率はいまいちだし、いつでも崩れそうな感じがしてましたね。予想通り、もう個人プレーの嵐です。今となっては。あまり感情移入できるキャラがいませんね。咲も含め、存在感はいまいち。仁・楽・花のインパクトがとても大きかったです。

ダークファンタジーというほどではなく、人情もたくさん見ることができるし、鬼神族のように人にとても近い鬼の種族もいて、実に多種多様な世界。どちらかが正義で、どちらかが悪であるとする単調な物語ではないので、そこもまたいいですよね。

仁とだまりの関係性

仁は呉服屋の若旦那。ただお店のみんなを守っていきたかった。母さんを守っていきたかった。なのに、ある日現れた顔のない鬼によって、それは奪われた。大切な人も、家も、自分自身でさえも。なぜか鬼と同化し、生きながらえることとなった仁。だまりもまた記憶がなく、食欲を満たすため・記憶を取り戻すために鬼を喰らいます。仁もまた、「顔の無い鬼」を殺してみんなの敵を討つため、だまりとともに戦い続けていました。

ここでおもしろいなーと思うのは、完全なる同化ではなくて、影への同化であること。鬼が回復させている傷は、鬼が不完全な状態で離れればすべて戻ってくるということ。そして、鬼が感覚を麻痺させて人の人間としての感覚を失くさせていたこと、の3つでしょうか。完全に1つになる、合体する、能力だけ継承させるなどではなく、影への同化を選ぶことによって、憑りつかれている感が出て、雰囲気がいいですよね。日光がとても苦手であるということだけではなくて、「妖しさ」が引き立つ気がします。そして、傷は全部治してるのではなく、なかったように見せているだけという設定はなかなかないと思います。お互い、離れたら死ぬということがとても強く意識されており、切ったら終わりの協力関係だということがわかりやすい。だまりも仁も、早く解決することを望み、人間としての感覚が麻痺されて鬼を倒すのに必要な感覚が研ぎ澄まされている。その状態から脱却し、人間らしく在ることを取り戻すことによって、仁は弱くなるのか強くなるのか。ここもまた気になるところです。

楽・花・咲とのお店再興も魅力的

序盤にラスボスっぽい白陽が登場し、敵は比較的明確になりました。鬼との戦いがひと段落したところで、いったん楽・仁・花の3人は「絢糸屋」のお店を建て直す方向へと進みます。呉服屋としての仕事がわりと当たり前のように行われていき、これは何の漫画だったか…?と思ってしまうほど。楽も、あれだけ鬼になりたいと言ってボロボロだったくせに、よくここまで立ち直ったね…。血塗られた過去、いなくなってしまった大切な家族。だけど、今はこんなにも仁を理解し、助けてくれる仲間ができた。自分は仇を討つことだけを考えてきたけれど、こうやって創り直すこともできると知っていく。怖い漫画の中の、ひと時のやすらぎ。花もまた、自分が死ぬことを望んでいたにもかかわらず、仁・楽との楽しい日々が1日でも長く続けばいいと願っています。どうか最後まで、殺すことなく残してほしいですね。初期から考えられていたキャラなのであれば…!死ぬこと以外での解決策が出てくれるのかどうか、気になるところです。

咲もまた、仁に味方することによって立場が危うくなりそうなものですが…なかなかの行動派ですね。服のセンスがそんなに悪いのか、あまり分からなかったですが…仁に仕立ててもらって、かわいくなっていくのは確かでした。最後に裏切らなくてはならない、という事態は今のところなさそうですが、白陽と戦っていくにあたり、核心にせまることで、間違いなく思い悩むであろうと思います。それでも最後は、あったかい絢糸屋を思い出してくれる気がしています。

物語の核心は「味方」の中にこそあり

白陽が序盤から黒い人物になっていました。ラスボスの雰囲気は出ていますが、ここからさらに1つ上があるような気がしますね。そのキーとなるのがだまりなんだと思います。「ついに物語の核心へ!」と帯で語っているにも関わらず、なかなかすべてが明らかにならない。じれったいなーと思いつつ、結末が楽しみすぎる。

鬼導術によって鬼は殺され、残された骸は鬼導術によって「顔」を失くした鬼と化す。鬼を死してなお利用しようとする鬼導隊に対し、鬼神族が恨みを持つのは仕方がない事なのかもしれません。花が序盤からあれだけ鬼導術を嫌悪し怒りをあらわにしたのは、そういうことを知っていたからなのかもしれませんよね。目が見えませんから、顔がないとかとういうのはわからなかったんじゃないかな。

味方だと思っていた者から裏切られる。これは漫画のお約束でもあり、そういう世界であることを認めなければならないという教訓でもあります。誰もが自分の事ばかりを見ているし、自分の道を肯定したがるもの。社会に認められるから正しいのではなく、自分を貫き通すから正しいのでもなく…何が正しいのかは、自分で見極め選んでいくしかないのだと、毎回こういう裏切りのシーンを読むと考えさせられちゃいますね。真実がなんであるかは、その時関係した人にしかわからないし、どう感じるかも千差万別です。いくらでもねじ曲がり、なかったことにもできる。この「あやしや」では、かたきを討ってはい終わり!とならず、もっと余韻の残る終わり方をしてほしいものです。

鬼と人が完全に分かり合える時はなさそう?

鬼は人を食べないと生きていけない…というものでもなさそうですよね。鬼は突如現れる門から「生まれる」もの。鬼は陰の力が集められて完成する、人が創り出してしまったようなものと言えるでしょう。人の多いところに鬼の門は多く開く。このセリフからもわかるように、たぶん間違いない気がする。その鬼を食べるだまりの存在は、もしかしたら空気清浄機的役割かもしれない…分かり合えずとも、お互いは存在し続けてほしいものです。

鬼神族は人に近い、意志も記憶も確かな鬼。だからこそ人間と相容れないと分かっていて姿を隠し、人と関わることを絶つことで長く生きてきた。最後は花と戦わねばならない気がしてしまう。それだけはどうか起こらないでほしいものです。そして、楽の命の恩人である鬼は、十中八九、鬼神族なんだと思います。そしておそらく、お互いの助かる道につながっている気がする。「絢糸屋」が「妖し屋」としても働くような、新たな段階を見せる終わりをむかえてほしいものです。

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他のレビュアーの感想・評価

おもしろいのに全然表沙汰にならない

カラーで見たい繊細なイラスト一見雑なのかな?と思いながらよく見ると、本当に細部までよく描かれていて、闇の描き方もだまりと別の鬼とでは違いがよく出ている。単行本の表紙とか、ゲッサンのカラー部分はかなり美しい。雑魚キャラ、メインキャラ問わず、楽しめるイラストだ。バトルでは血しぶきも炸裂するが、グロさは強くなくて読みやすい。鬼と人が共存する世界を舞台に、絶対に相容れないはずの鬼と人が協力して鬼を喰らっていくストーリー。そうならざるをえなかった背景は深く、少し読んだくらいでは全然わからない。途中仁・だまり・楽・花たちの微笑ましいエピソードも続くので、こんな毎日が続いてくれたらな…と読んでいるこちらも本気で考えたくらいだ。仁とだまりはお互いの利害が一致しているからこそ、共闘している関係性。鬼を倒すべく動いているはずの鬼導隊の中での怪しい動きはミステリアスで、なかなか真相は明らかにならない。それで...この感想を読む

4.54.5
  • kiokutokiokuto
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