台湾ではドラマ化までされた、名作のシンデレラストーリー - 薔薇のためにの感想

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薔薇のために

5.005.00
画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
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台湾ではドラマ化までされた、名作のシンデレラストーリー

5.05.0
画力
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
4.0
演出
5.0

目次

人間は外見より、中身が大切。そして、個性的なキャラクター。

主人公はデブでチビでそばかすのある、ブサイクな女の子。それは、主人公自身の大きなコンプレックスでもあります。でも、性格がとても純粋で綺麗です。そして、本人はその事に気が付いていません。そんな彼女に、立て続けに不幸が襲います。彼氏にフラレた。しかも、新しい彼女を連れて来た。唯一の祖母が急死。おまけに住む所が無くなった。そして知らされた、知らなかった家族の元へ。

台はひとつの家庭です。

自分勝手で、奔放な男性関係を続ける、女優の母親。

いつもダラダラ横になり、一日中ビデオを観ている姉。

眼が青いので、家の中でもサングラスをしている兄。

ロングヘアーで、兄に恋する、同性愛者の弟。

みんな美人かハンサムです。そして、父親が全員違います。

だから、最初はみんな彼女の顔を見下して、文句タラタラ言いまくります。コキ使われ、白雪姫の継母と姉たちのようです。そして、主人公は、そこ言葉にいつも傷付いています。

でも、みんな悩みを抱えています。トラウマに近いものです。暗い顔をしています。もう諦めて、殻に閉じ籠ってしまっています。

他の主なキャラクターも紹介します。

主人公のアルバイト先は、超多忙な漫画家先生の炊き出し。その漫画家先生、漫画を描きながら眠る事ができる奇人としか言えない。アシスタントはいつも、グロッキーです。

兄のクラスメイトは、今はとても美人ですが、学生時代は病気のせいで太っていて、別人のようです。

弟のお嫁になりたくてやって来た女性は、闇夜を切り裂く大イビキの持ち主です。

みなさま、アクが強すぎるほど個性的です。

でもみんなが、老家政婦の手伝いをしながら一緒に住む主人公の性格に、心を洗われていきます。まるで美しい薔薇が主人公とふれ合う事で、人をキズ付けるトゲを彼女にひとつひとつ取って貰っているようです。そして、忘れていた純粋さや優しさを取り戻していきます。

ネタバレになりますが、最後の方は「内面の美しさが現れてキレイだと思う」と言う他人の声もあります。そしてダイエットして、ウェディングドレス姿の、本当の美人になって終わります。

こんな純粋さ、内面からの美しさ、忘れていませんか?読み終わったとき、彼女のようになりたいと思うハズです。

景色が美しい。画力に迫力がある。

作者は、札幌の人。だから舞台は札幌。雪などの景色が美しいのは、当然。春夏秋冬、自然の植物などからの季節感があって、それがまた綺麗でリアル。描写も、とても細かいです。所々で主人公が庭掃除のための竹箒を持って眺める景色は、札幌独特の自然の良さを教えてくれます。

でも本当にスゴいのは、この作品は作者がほぼ一人で、全て描いているということです。背景も作者が描いている。そのために、作者は新聞もテレビも見ないらしいです。外出もほとんどしないから「仙人」と呼ばれるほどだそうです。作者はそこまでして、この作品を描いています。だからなのか、人間も表情も豊かです。顔の線が太いせいもあるかも知れません。喜怒哀楽が特に迫力があります。画面いっぱいに表情が描かれています。そのせいでしょうか?とても感情移入しやすい作品になっています。

愛とは何か?

主人公を含め、この作品の人物はみんな愛に飢えています。主人公以外姉、兄、弟は特に、家庭愛に飢えています。母も奔放な男性関係を続けていますが、自分から好きになった人に愛して貰えなかった事が理由です。兄は若くして、最愛の婚約者と死に別れています。

そして、この物語の最大の山場とも言えるのが、主人公の出生の秘密ですが、ここにも愛ゆえに発生した悲劇が絡んでいます。その後の母の人生を左右するほどのものです。

ここにもう一人、キャラクターを紹介します。兄の最愛の婚約者です。若くして死んでしまいますが、彼女の最後の言葉に「愛」が詰まっているような気がします。そして、その言葉は、主人公に引き継がれます。主人公は兄を愛しながらも、婚約者を「尊敬する人」と称えます。彼女のその後の心も、「愛」が詰まっています。

主人公のアルバイト先の漫画家先生は、姉に恋をします。姉は漫画家先生を「変態」と罵りますが、漫画家先生は猛アタックします。これも愛でしょう。

主人公の出生の秘密のキーマン、弟ですが、彼も彼なりの愛の行動をします。若い男性らしい愛情表現だと思います。

兄は、若くして亡くなってしまった婚約者と主人公の間で揺れる大人の男性です。彼が一番愛のある人かもしれません。だからこそ、若くして亡くなってしまった婚約者に捕らわれ動けなくなるほどに愛についての行動があります。そして、主人公のコンプレックスも、彼だからこそ大きな愛で取り除いてあげられたのでしょう。

忘れてはいけません。家庭愛に一番捕らわれていた姉です。彼女の行動も愛ゆえでした。そして、捕らわれていたものを解放したのは、同じ思いをした兄であり、漫画家先生でした。

母も、友情という愛に捕らわれていたのでしょう。最終話で亡くなってしまった友人に話しかける姿は印象的です。捕らわれていたものを解放したのは、主人公の愛です。主人公の愛は、母がもがき苦しむほどの大きな愛です。でも、押し売りではありません。自由になるためでした。

決して報われるだけのものではありませんが、無償の愛がそこかしこに散らばっています。

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