直球すぎる愛も突き抜けたらいい
画が全然うまくないのにいつの間にかうまいと感じていた
新装版から手に取ったので、表紙と中身の画のクオリティにすごいギャップを感じましたね。表紙は銀河鉄道みたいな雰囲気なのに、中身は図太い線で描かれる、高校生っぽくない登場人物たち。これは失敗か?と思ったけれど、1巻読み終わったらいつの間にか中毒に。内容がとにかくほっこりするんですよね~。こりゃー和む作品見つけたわ!と思いました。
いろいろな人がこの作品を読んだ感想を語っていますが、どの人も、「懐かしい感じがする」と言ってますね。個人的には、懐かしい感じがするとは言えないのですが、その意味はすごくわかる気がする。恋愛ならではの気持ちって年を経てもあまり変わらないもので、どの年代の人が読んでもなんかしっくりくる。昭和な雰囲気が出ているのに、ダサくもなく、「好き」であることに正直で、見た目より中身を好きになっていることにとても良い印象が持てます。周囲の人たちも、妬むより大事に見守っている様子で、助けすぎるわけでもなく、干渉しすぎるわけでもなく、茶化すことはあっても傷つけることがない。その温かさが嬉しいし、安心して読めます。
そしていつの間にか、絵のクオリティは気にならなくなり、むしろ芸術的な気がしてくるこのうまさ。何なんでしょうね。すっかり騙されている気分。特に新装版の表紙はとにかく素敵だし、カラーページや普通の白黒ページもよくよく見てみるとかなり細かく書き込まれていることに気づくんです。ちょっとこれは…と思うところももちろんありましたけどね。特にネギシさんがマラソン大会で走っているときの姿!両腕が前にあってファイティングポーズのまま走ってますけど…?
周りが助けずとも進んでいく強い2人
初っ端から、まずはホシノくんがネギシさんに告白します。学校の教室・真昼間の休み時間に・堂々とデカい声で。これくらいはまぁ他作品でもあるとして、その言葉選びがまたド直球で、びっくりさせてくれる。ホシノくんは、話し方がどこか古風で、真面目そうな見た目と裏腹に、勉強はできないし、男子学生のエロさも真顔で隠さない。やっぱり一番いいところは、ネギシさんをどうしようもなく好きであるということ、それを正直に本人に伝えるということ、そして周りの評価ではなく自分自身で決めているところ。いっそ潔いのです。
次第にそのペースにのまれ、好かれていることが嬉しくなり、正面からホシノくんと向き合って付き合ってみようと決めるネギシさん。ネギシさんもまた、正直に今の嬉しい気持ちや、ホシノくんに興味を持ち始めているということを伝え、今度は逆告白。…なんて男前。むしろ男女を逆転させ、“ホシノちゃん”と“ネギシくん”と設定を入れ替えてみるとなんか自然なラブストーリーにすら見えてきます。
ネギシさんには陽子ちゃんという友だち、ホシノくんには塚原という友だちがおり、どちらもかなりの策士。おもしろおかしく2人を茶化してはいますが、重要なところではちゃんと2人きりにさせてくれて、毒舌吐きながらも否定はしないのが素敵でした。結局、友だちのフォローなどなくても、ネギシさんとホシノくんは、自分たちでちゃんと道を選べるしっかり者なんですよ。お互いに、モヤモヤしたことを黙ってるなんてことをしない。だからちゃんと気持ちが伝わるんですよね。ホシノくんも言ってるけど、
俺たち最強
なんですよ。めんどくさくない。
余計なことは語らない潔さ
「…なんであの子と一緒に遊びに行かなくちゃならないの…!」「なんでそんなことみんなの前で言っちゃうの…!」
そういう女のめんどくさいところがないんですよ、ネギシさん。そしてクラスメイトも。横恋慕早速勃発か!と思っても、ホシノくんがあまりにも揺らがないので全然進展しない。そしてネギシさんも、嫉妬とかする暇もなく、ホシノくんのことを理解していくし、好きになって、分かり合っていく。
少女漫画お決まりの、オリエンテーションでどうのこうの、崖から落ちてどうのこうの、学園祭でどうのこうの、クリスマスでどうのこうの、バレンタインデーでどうのこうの、三角関係or四角関係のもつれが…などなど。よくある少年少女のイベントでも、2人が溝にはまることがない。だって、お互いを好きな気持ちに変わりがなく、信用もしているのに、すれ違いも何もないでしょう。あー本当に楽ですね。あざとくないし、正面から正直に気持ちを伝え合うことだけで精一杯で素敵。まずホシノくんの真骨頂がKYだからね。周りのことなんてまるで気にしない。だからこそ、堂々とネギシさんを好きでいられるし、ネギシさんも自信が持てるんだなーって思います。
2人のファーストキスも清々しかった。キスしたいとホシノくんは思ってて、でもそれはほっぺたにだった。拍子抜けしたネギシさんがホシノくんの頭つかんで唇を奪うという…案外と大胆なのはネギシさんかもしれない。逆告白だって、そのほうがむしろ目立つし。
まさか体を重ねるところまでいくとは
序盤から、
いつでも挿入したいと思ってます
って言いきっているホシノくんがいました。そして、友だちの塚原のプレゼントもまた直球。あまりにも直球ですが、ここで引かないのがネギシさん。だってみんなが考えていることだって言えて、そうだねって理解できるあたり、理性的だよね。冗談だろうと思ってましたよ。この「ラブロマ」の雰囲気で、どうやってラブな空間を作り出すんだろうって。最終的にはギャグに終わるんだろうって。でも付き合いだしたら、むしろそこは通らないほうが不思議なことになってしまう。ネギシさんとホシノくん、2人が愛をしっかりと深めて、自然とその時間はやってきました…
そこで大きく変化しないのがすごい。より一層好きになるね、というより、当たり前にその時間が考えられていたこと、その行為は通過点であって何かを大きく変化させるほどのものではないということがかっこよかった。怖いとか、うまい下手とかを気にしてる場合じゃなくて、そこに信頼関係があればうまくいくものなんですね。いろいろな指南書がありますが、小学生のバイブルにしてもらいたいくらいです。難しい事じゃない。急ぐことでもない。信じあえる限り、それは自然とやってくることを教えてくれていると思います。
自分たちが何をすべきかまで丁寧に見据えて
そして卒業へ向けて。高校生の考えることは進路の話。今までは自分たちのことだけでいっぱいだったけれど、仕事にしたいことを探し、進むべき道を考え始める。そこで少しの間離れる時間を持たなければならないという…でもここで壊れないのがこの2人のいいところ。2人が歩いていこうとする道を見据えて、確実に歩いていく。本当に最後までかっこいい作品でしたよ。画が下手だとかいってごめんなさい。もう完結なんですかと名残惜しさすら感じました。
結局、高校生の間、しかも進路を決めるまでの間の時間って、長い人生の中のほんの一部の期間でしかないんです。大人になったらそれがわかるけれど、高校生の時は気づけない。時間軸・時間の流れの感じ方が全然違うんですよね。社会人には社会人の、学生には学生の感情、考え方があって当然で、時代に応じたいろんな気持ちがあって当たり前。「変わらないモノ」が何かをわかっているこのリア充、本当に最強でした。
ギャグもシュールなものが多かったりして、幅広い年齢層の人が楽しめちゃうこのラブストーリー。しつこく長引きもせず、後味も最強です。
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