激しいカーアクションがすべての映画 - ゲッタウェイ スーパースネークの感想

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激しいカーアクションがすべての映画

3.03.0
映像
3.5
脚本
3.0
キャスト
3.5
音楽
3.5
演出
3.0

目次

初めから娯楽として楽しめる映画であること

冒頭すぐから怒涛のカーアクションで始まるこの映画は、色々突っ込みたいところはあるけれど、最後まで楽しめた映画だった。タイトルにもなっている「スーパースネーク」は車の名前だということは車に疎い私は知らなかったので、スーパースネークってタイトルにしたらちょっとダサいなくらいに思っていた(そのくせ主人公のイーサン・ホーク演じるマグナという名前はホンダのバイクだなと思ったりはした)。
車にそれほど興味を持たない私は、そもそもカーチェイスを含むカーアクションがメインの映画は好みでなく、普通の映画でさえカーチェイスが続くと集中力が切れるくらいなのにどうしてこれを観たかというと、イーサン・ホークが主演だからということに他ならない。彼が出ていなかったらこの映画は観ていないと思う。
車に興味がない以上それほどの知識を持たないので、車の性能がどうとか運転技術がどうとかいう見方はできないのだけど、この映画は思いがけなく楽しめた。こういったカーアクションものが面白いと思ったのはリュック・ベッソンの「TAXi」以来で、それだけでもこの映画を観た価値はあったと思う。
とはいえ全てが最高というわけでなく言いたいことはたくさんあるので、それをまとめていきたいと思う。

悪役の隠し切れない安さ

マグナの妻を人質として彼を意のままに操ろうとする悪役(名前は出てこなかった。もう一人スーパースネークの持ち主の少女も名前が出なかった。これは結構特徴的かもしれない)をジョン・ヴォイトが演じているのだけど、この悪役としての隠し切れない安さというか、そういったものが見え隠れして少し笑ってしまいそうになった。「コニャックのグラスを揺らしながら猫を撫でている」的な悪役というか、そういったものが典型的すぎてかなり気になった(マティーニ飲みながらオリーブ食べる口元ガだけが写るとか)。そういった演技は監督の好みであって、ジョン・ヴォイトに非はない。彼のあの憎たらしい演技は、悪役が多いのもうなずけるし個人的には好みだったりもする。「アナコンダ」の時なんて本当に憎たらしかった。今回も大富豪の悪役なのでいいのだけれど、その安さがどうしても悪目立ちしてしまったような気がする。

車とパソコンが好きな少女

今回初めて見たセレーナ・ゴメス(ティーンエイジャー人気の歌手らしいけど、全く知らなかった)演じる、スーパースネークの持ち主。父親は銀行のCEOでお嬢様ながら、趣味は車とパソコンという役者的にはちょっと演じるのが面白そうな役だけど、あまりこの設定が生きていなかったように思う。車に対しての知識もあまり披露しなかったし(運転するシーンも一度もなかった)、パソコンの技術も最近のちょっと詳しい子ならこれくらい誰でもできるのではないか、とう域を超えないものだった。言うなら「24」のクロエとか、あれくらいの技術が欲しいところではあった。せっかくいい設定なのにそれが生かされていないのは、少し残念に思ったところでもある。
またこの少女何度もマグナに「子供だぞ!」とか言われていたけど(実際にイーサンと比べると小さいし、子供のようではあった)1992年生まれなので立派な20才を超えたレディだった。イーサン・ホークが179cmだからそれほど大きいというわけでもないので、きっと小柄なのだろう。役者が演技する年の幅は広いほうが役者冥利につきるのかもしれないが、これはすこし意外なことだった。

どうしても「イーサン・ホークの無駄遣い」と思ってしまう

イーサン・ホークが出ているからこそこの映画は観たし、そしてカーアクションも悪くないなというおまけを得ることはできたのだけど、どうしても不満は溜まってしまう。カーアクションとしての映像は面白いし派手でそれだけで十分楽しめるものだったので、主演がイーサン・ホークである必要性が見えてこないからだ。ファンとしてはどうしても彼の演技が観たい。だけどカーアクションがすべてだから、演技するというほどの演技を見ることのできない残念さがどうしてもある。そりゃ警察に追い詰められての運転の表情とか、死んでもかまわないくらいのところに突っ込む表情とか観る価値のものもあるのだけど、どうしてもそこに欲求がたまってしまい、イーサン・ホークの演技が観たいあまりに、昔のイーサン・ホークの映画を観たくなってしまう。そして「今を生きる」とか「ガタカ」とかを観てしまったファンは少なくないと思う。
こういう意味で、これほどのカーアクションの映像がこれでもかと続くこの映画では、別に主演がイーサン・ホークでなくとも売出し中の若手俳優でもいいのはと思ってしまう。同じ意味で悪役もジョン・ヴォイトでなくてもいいのではと思ってしまった。
個人的にはイーサン・ホークはミニシアター系の俳優だと思うので、この映画だったらイーサン・ホーク以外は一切出ず、悪役も人質の妻も声だけの出演でやるとまた違った映画になって面白くなったのではと思う。

ストーリーのわかりにくさ

ストーリーのわかりにくさというべきかどうかわからないけど、スーパースネークの持ち主の女の子が命令されるまま発電所にいくのだけど(マグナの代わりに行ったのかもしれないが)、指令を受けたわけでもなく何をするかわかってるの?という疑問はあった。挙句キーボードを慣れた手つきで操ったのはいいけど、結局通報しただけというのはお粗末ではないかと感じた。
そして停電を起こし、彼女の父親の投資銀行で盗み出したものは、恐らく現在のお金の動きを自在に操ることのできるデバイスだということはうっすらわかるのだけど、現金1億ドルといった分かりやすいものでない分、どういう働きをするものなのかちゃんとわからなかった。
もうひとつ、その少女を解放したかどで妻が暴行を働かれた映像が一瞬写るのだけど、後々になっても結局何をされたのかわからない。謎の男は最後マグナのファンであり、彼の自信を取り戻させるための自作自演だったと匂わせるラストを考えると彼女もまたその計画の一部だったのかと思わせるような感じだった(誰も見ていない時のあのおびえ方さえ演技だったのかもしれない)。
結局何をされたかわからない以上、最後まであれはどうだったのかという疑問が最後まで気になり、すっきりしない終わり方になってしまった。

カーアクションの見所

この映画は初めから激しいカーアクションが見所だと思う。特に、ジョン・ヴォイト演ずる悪役に言われるがままクリスマスの公園を突っ切る様とかは手に汗を握った。そういった暴走の事故が相次いだ時期だったら自主規制の対象になっていたかもしれないと思わせるくらいの激しさだった。
あとスーパースネークの持ち主である少女を拉致した敵の車とのカーチェイスの部分は、恐らくドライブレコーダーのみで撮影しているのだろうと思われる場面がノーカットで2分近くあり、その間赤信号は無視するし相当のスピードで走ってるしで、かなりの距離を通行止めして撮影しているんだろうと思わせるすごさだった。そしてもちろんそれ以外の車もバンバン走っている。その激しさは、カーアクションといえど昔からどんどん進化しているんだなあと思わせるに十分だった。
カーチェイスだから追いかけていくうちに障害物をよけ損ねて横転してしまったりするパトカーもたくさんある。そのパトカーの中にカメラが仕込まれていてその横転する様を車内から撮影しているというすごさにも(最近そういうのはよく観るけど)舌を巻いた。

ラストの謎

最後ジョン・ヴォイド演じる悪役が、マグナの熱心なファンだと告げ、これで自信を取り戻したろうという。今まで悪役だと思っていた彼が一転、闇の世界に落ちてしまっていたマグナを救うためにこういった自作自演のような舞台を作り上げて奔走させ、恐らく最後の「送金完了」はマグナが盗み出したデバイスを使って彼に大金を送金したのではないかと思わせたラストだった。もちろんジョン・ヴォイト(役の名前がない以上俳優自身の名前で書くしかない)自身にもメリットはあったのだろうけど、ストーリーがよくわからないままなんとなく大どんでん返しを狙っている感じも何か中途半端で、この映画のイメージを損ねているような気がする。
とはいえ、最後まで楽しく観れたことは間違いない。最近観るのを途中で止めてしまうような映画が多く、映画自体にあきらめを感じてしまっていたけれど、映画ってやっぱり面白いなと熱をよみがえらせてくれた映画でもあった。

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