医者である前に、人でもあらなければならない - Dr.コトー診療所2006の感想

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Dr.コトー診療所2006

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医者である前に、人でもあらなければならない

4.54.5
映像
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脚本
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キャスト
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音楽
5.0
演出
4.0

目次

島に根をはれるか

これまでのDr.コトーシリーズでは、さまざまな出来事を通して、五島健助は島の人々の信頼を勝ち得てきました。五島健助は、東京の病院で失敗をした医師ですが、ある意味スーパーマンのように有能な医師でした。実際の医師であれだけのすばらしい手術を成し遂げることができる人は、当然少ない訳です。しかし、それにも関わらず、あくまでも謙虚な主人公に、魅力を感じた方も多いことでしょう。

そして「Dr.コトー診療所2006」では、よそ者としての五島ではなく、島の住人としてさまざまな出来事に直面しています。「Dr.コトー診療所2006」の五島は、もうよそ者ではありません。島に溶け込み、島のさまざまな住民の人生に関わっていく内容に変化しています。

しかし、五島は心底から島を大切に思いながらも、どうしても距離を置いているようなところがあります。この「Dr.コトー診療所2006」では、五島が島の住人として根をはれるかどうかが試されているようにも思えます。

医師ではなく人としても問われている

これまでのシリーズでは、五島は島の人々から医師としての腕や能力、存在価値を問われてきました。島にとっては、島の医師は村民すべての命を預かる存在だからです。そして五島はその信頼を勝ち得ることができました。

そして次に問われているのは、人としての五島です。

これまでは医師として村民にかかわりましたが、親しくなるにつれて、村民の人生にどうかかわっていくのか、という問題に直面します。隣人として、友人として、村民仲間として、島の人々との距離感が近くなりました。

しかし、人はそれぞれ人生の問題を抱えています。お金の問題、家族の問題、そして健康の問題。さまざまな問題を抱える島民たちに、五島はどのように関わるのか。

人と人とは距離感が大切ですが、その距離感は人によって異なります。親しく付き合うことで、喜びを感じる人もいれば、プライバシーの侵害だと捉える人もいます。

そのなかで、どのように他人との関わりを持つかが、人としての個性にもなります。

いつもどこかで一歩引いたようなところがある五島。五島は、どのような島人になろうとしているのか、見えないところがあります。

そんな五島に、引いたままでよいのか、と問いかけるような出来事がおこります。「Dr.コトー診療所2006」では、有能な医師の姿だけではなく、一人の人として思い悩む五島が描かれているのだと思います。

答えのない問い

五島は、ではどうすればよいのでしょうか。「Dr.コトー診療所2006」での五島は、相変わらずすこし引いたところのある五島のままです。

五島に好意をいだいているようにも見える彩佳に対しても、一歩ひいたままです。恋人関係になろうというアプローチをかけることもしません。彩佳の病を知った五島は動揺しますが、友人としての動揺なのか、見分けることはできません。

東京の中学への進学中に、お金の問題で赤信号が点滅しだした剛洋に対しても、お金の調達に深く関わることはせず、励ましの言葉を贈ります。

どちらも、見ていると少しイライラするような態度では、ありますがこの2つの出来事には、決定的な違いがあるように思えます。

彩佳に対しての五島の態度には、大きな迷いが存在します。どうすればよいのか、五島自身でも分かってはいないのです。

しかし、一方で剛洋に対しての五島の態度には、迷いがありません。五島自身でもっと出来ることがあるようにも思えるのに、あえて何もしない。それが剛洋のためになると、知っているようでもあります。

子どものためなら何でもしようという親の態度ではなく、教師として愛弟子を大きく育てようとするような意思が感じられます。

五島自身も同じような困難さを乗り切って医師になったのではないか、というバックボーンもおぼろげに見えてきます。困難を乗り切り、それでこそ身につくものがあるのだということを、剛洋に教えようとしているのでしょうか。

一見冷たいように見える五島の態度ですが、剛洋に贈る言葉は限りない愛情を秘めている言葉であると思います。

一方で、彩佳に対しての五島の態度は、そのような悟りきったような態度ではありません。迷いや悩みを秘めて、どう対処すればいいのか思い悩む五島になっています。

答えのない問いに、どう答えようか思い悩んでいるのです。

日常こそドラマチック

今の時代の多くの人は、東京や都会こそがドラマチックであり、刺激的だと考えるものです。しかし、どこにでもある日常こそが、ドラマチックなのです。島には島の、都会には都会の日常がありますが、どこにでもドラマが存在します。

「Dr.コトー診療所2006」は、あらためてそんなことを感じさせてくれるドラマでした。

そして生きる場所がどこであるのかが大切なのではなく、その場所で何をするかが大切なのだと教えてくれるドラマでもあります。大病院でも離島でも、どんな医師であり、どんな人であるかが大切なのだと思い起こさせてくれるのです。

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