母親の暴走・呪縛を振りほどいて、自分の人生を生きるということ
きっかけは、ただ単に当時ファンだった長澤まさみさんの活躍が見たいというだけで、あらすじもよく知らぬまま見始めたGOLD。
自らの暴走やあらゆる呪縛にがんじがらめになってしまっている母親、父親と子供たちがそれぞれに大きく成長するところを見せてくれる、感動的なドラマでした。
主人公悠里さんのように子どもの人生を取り込んでしまう母親や、母親から離れて自分の人生を生きていくということについて、ドラマとも合わせ考察してみました。
子どもの手柄はわたしの手柄、母親の悲しい暴走
悠里さんと3人の子供たちは当然ながら、別の人格をもった人間なのですが、悠里さんは彼らを自分の思い通り、金メダルを取らせることにものすごく執着し人生の命題にしてしまっていますね。
子どもの人生における何らかの成果、勝手に決めたゴールに到達させることを母親が自分の使命にしてしまうって、これが自分の子どもでなければ、とても滑稽な話だと皆思えるのですが、母子もしくは親子関係だけはこういういびつさ滑稽さがなぜか気づかれにくいところだなと思います。
ドラマではわかりやすくするためにかなり極端に描かれていますが、実生活でも母親である自分と子どもの境目がちゃんとつけられていない人ってたくさんいますよね。
例えばわたしは、LINEやFacebookなどのSNSにてプロフィール画像を本人ではなく子どもの写真にしている人に対して、(他人の顔写真を自己紹介に載せていることに)すごく違和感があるのですが、この話をしてもわたしも変だと思っていた!と同意してくれる人にはまだ出会ったことがありません。
これが子どもの写真ではなくて夫や彼氏の写真であれば、すごく変な人だなと皆違和感を持てると思うのですが、それだけ子どもと母親は同一化、にこいちの関係を心地よく思うのでしょう。
子どもとお揃いファッションのお母さん、何人か集まっても子どもの話しかしないお母さんも多いなと思います。
自分の人生に向き合い、苦しくてもしっかり考え抜いて、自分がどうしていきたいのかを見極めていくよりも、幼子の生活を自分の思い通りにコントロールすることのほうが簡単で結果が出やすい、しかもなんだかいいお母さんしているのかも、と優越感を抱くこともできるというメリットもあるのだと思います。
母親というもの、練習なしぶっつけ本番
悠里さんと同様に、自分の子どもの人生を取り込んでしまう母親にも、そこへ至るまでの数々のトラウマや経緯があると思います。
母親として子どもに接していくことって本当にすることがいっぱいで初めてのことだらけなのに、免許や資格と違って、研修とかないですよね。
あと公的な客観的評価やフィードバックもないので、基本的には自分の母親の子育て、たった一人のお手本しか知らないまま、母親業をこなしていかなければならないわけです。
そのたった一人のお手本も、どれくらいの偏りがあって、どういう子どもとして形成されたのかなどという注釈もありません。
核家族化も進み、子どもと接する機会がある大人はどんどん減り、基本的には親2人のみ、悠里さん宅のように主に母親しかいない場合もあります。
もともと均一化を好む完璧主義な日本での子育ては、母親の暴走が外部からは見えにくいし、暴走が珍しくもないので当たり前になってしまっていますよね。
暴走した母親たちが、判を押したようになぜか皆、ビーチャイと言われるビューティフルチャイルドを目指し、そこに近づけられるほどに母として高得点という既成概念が成立しているという滑稽な現実について、フィクションであるドラマで強調しながら見せてもらうと改めて怖くなります。
洸くんの彼女選びに見える、自分にとってのホンモノ選び
ストーリーの中でとても印象的だったのが、親が敷いたレールをまっすぐ進むことから降りた長男洸くんが終盤で、世間的にハイスペックな彼女(姉のほう)から、地味な彼女(妹のほう)に乗り換えて大成功するというエピソードがありました。
これは、前述のビーチャイ目指しの話のように、世間一般的にいいと言われる、美人でモデル体型、雑誌から出てきたようなファッションメイクで、一緒に歩くと鼻高々という女性ではなく、自分の奥底に向き合って、自分が本当にいいと思えた自分にとってのホンモノの女性を選び、彼の人生がいい方向に展開していった、というところがすごくステキでした。
あまり物事を考えず付和雷同だけで生きていってしまうタイプの人々はおそらく、すべてにおいて上記のケースでは姉の方を選びたがり、欲しがり、時に手に入らなくてイライラするのかなと思います。
何事においても、自分の頭で考えて、自分の中から出た答えをもって選んでこそ、人生が拓けていくことを表してくれているようで感動しました。
親のレールから飛び降りる!少年少女たちの爽快成長ドラマ
3人の子どもたちが次々とグレはじめ、母親のレールから離脱していくことにより、母親自身もまたさまざまな呪縛から解き放たれて成長していくという、とても見ごたえのあるおもしろいドラマでした。
天海さんの熱演も素晴らしかったです。
以上、ドラマGOLDの考察でした。
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