現代のリアルな恋愛模様。し
有り得ないようで有り得る設定
教師と生徒。非現実のような設定だけど、幼馴染だったり、家庭教師の先生だったり、身近に有り得るリアルな設定がより感情移入しやすくしていると思います。手の届かない恋愛をしてしまう、出来てしまうのが高校生らしくもあり、ここにもリアリティーが。憧れと恋の間で揺れている描写も見事。その上、同性を好きになってしまう、という現代だからこそリアリティを生み出す設定にまた惹かれてしまいます。
クズ達のクズたる所以。
リアルなのは設定だけじゃなく感情の動きも。漫画に描かれる恋愛って純粋で一途で甘酸っぱくなるようなものばかり。だけど現実ってそう甘くないですよね。私自身もそうでした。苦い思いのほうが遥かに多い。その苦味を満遍なく細かく描写されている所がとても魅力的です。茜のアバズレ感、花火のクズ感が現実的すぎて。特に自分から誘っておきながら相手から誘われたようなあの振る舞いは世の女性誰でも経験したことあると思います。花火の気持ちの揺れ、お兄ちゃんを惹きつけるために他の男をたぶらかしたりしてしまうところなんて、女の子なら誰だって共感してしまうはず。その後、何やってんだろう私は、なんて気持ちが空っぽになってしまう所なんて本当にリアル。こんな自分に嫌気が差していてこの気持ちが叶わないことも、気持ちを伝えたって真に受けてもらえないことだっていて本当は分かっていて、だけどやっぱり手に入れたくて。揺れて揺れて手段を選ばず他人を利用してみてもやっぱり虚しいだけで。麦を好きになれたらどれだけ幸せなのかなって考える気持ちすごく分かりました。それでもきっと、麦を好きになったって解消されなかったお兄ちゃんへの気持ちは胸に残ったままで体全部で麦のことを好きになれないと分かっているから踏み込めないんでしょうね、お互い。麦はその分少し大人だと思います。諦めたくない気持ちがありながらもどこかで自分の物にならない事を理解している当たり、男の子だなぁと思います。きっと女の子は頭で理解していても心が理解しないと思うので。身体だけでもいい、と思えてしまうぶん、悲しいのは麦の方、なのかもなと感じたりもします。一夜なら手に入る人、と知ってしまいながら最後までその一夜を自分の中で拒否し続けてるあたりは純粋なのでしょうか。先輩との関係の中で身体だけの寂しさを知っているからこそ、なのかもしれないですね。
負けたくない自分と負けてしまえた自分。
この物語のクズの伝染は凄まじいと思います。でも正直現実ってそういうものですよね。クズの友達の話聞いていたらいつの間にか自分も同じ考えに浸ってしまうと言うか。そこまでリアルにする?と思えるくらいリアルです。同性を好きなってしまう、なんて少し前なら非現実と捉えられがちだった設定もLGBTが世界で受け入れられつつある現代ではとてもリアリティを持ったものになっていると思います。誰よりも好きなのに、という気持ち、おそらく同性だからこそ見える良さって異性から見える所よりも計り知れないと思います。えっちゃんの場合憧れも混じってるんじゃないかなーとも思いますけど。救ってくれた人、笑いかけてくれた人。つり橋効果的なやつもあいまってるんじゃないかなぁ、なんて。花火もだいぶクズですからね。それを知ってまで好きでいられるなんて相当です。女の子だから出来る、許されてる接触がこんなにエロティックに描かれていて、今後友人達との距離感を少し考えてしまうくらいです。この作品で最大可哀想なのはモカだと思います。満場一致でもいいんじゃない?と思うくらい可哀想だと思います。私だけ?この物語で唯一可愛い私でいようとした子ですし、その理性との葛藤も共感できてしまう。好きな人が今手の届くところにいて触れれば触れる距離にいて、それでも自分と戦い続けた所なんて涙出ました。そんなんで触れてしまいたくないし、そういう目で見て欲しい訳じゃない、だけどそうしないと見てもらえないなら自分はどうすればいいんだろうって。胸が締め付けられましたね。誰だってこんな気持ち経験したことあると思います。麦なにやってんだよ、って思っちゃいますよね。この回で麦のこと少し嫌いになりました。友達だったら殴りに行ってます。でも男の子ってそういうところありますよねー。許せないですけど。モカもえっちゃんも花火たちを見て自分はそうなるまいと必死に闘っていたのに、きっと負けてしまった時、負けてしまえた時自分に落胆して少し相手にも落胆してしまったんだろうなと思います。
大人達の世界
この物語のクズの元(言い方悪いですが)の大人達の世界が上手いと思いました。先生という設定が踏みこめない、叶わないという気持ちを後押ししているというか。距離感を感じさせるというか。でも設定が先生という誰でも知っている、接してきた人で、しかも幼馴染とか元家庭教師とか身近なので感情移入は出来てしまう。上手いですね。どうなんでしょうね。大人でお兄ちゃんほどウブな人いるんでしょうか?いないと思うけどなー。茜みたいな女性のほうがリアルだと思いますね。大抵みんなそんなもんだと思います。人の思い人を寝とって恍惚とする程のクズばかり、というわけではないですけど、寂しい夜があって誰でもいいから一緒にいたいな、とか興味本位、とか大人ですしそのくらいのほうがリアルだと思います。その点で言うとこの物語においてお兄ちゃんの存在は異質な感じがします。きっとそれがお兄ちゃんという存在の特別感を演出しているんでしょうね。1番まともな人が異質に見えてしまうってどういう漫画だよと思いますが、でも世の中人の心の中も見えてしまったらこの物語みたいなもんだと思いますけどね。そうなるとやはりお兄ちゃんは物語においても現実世界においても異質な存在だと思います。まともで、真っ直ぐで、優しくて真面目。その綺麗さが茜には眩しくて羨ましくて汚してやりたくなったのかもしれないですね。案外花火への当てつけなんて付加価値でしか過ぎず、自分の中で消化できない思いがあったのかもな、なんて。そう思うと茜の背景ももっと細かく知りたくなります。大人達の世界と子どもと大人の間の子達の世界。複雑で綺麗事ではうまく行かなくて。なんだ、結局、大人になっても諦めることが少しうまくなっただけで、好きな人を手に入れるためにやってしまうことなんてあんまり変わってないんですね。
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