神様の裏の顔 第34回横溝正史ミステリ大賞受賞作レビュー
目次
神様のような人だったと通夜にて故人をしのぶ参列者たちの気になるワード
葬儀社員:喪服姿だからなおそそられるよなあ。あんな美貌で涙流されたら、思わず抱きしめたくなっちゃうよなあ。
筆者:うーむ、私も葬儀社でバイトがあったらやろうかな。喪服かあ・・・いいかも。
斎木直光:というか根岸の通夜なんていくもんか。百万円積まれたって行くもんか。いや、待てよ。百万円なら行っちゃうな。一万円積まれたって行くもんか。
筆者:逆に参列代行みたいなことをすれば儲かるかもしれませんね。この罰当たり目が!と自分に突っ込む。
成績は学年の上位十人にはいるほどだった。なのにテストの回答を白紙で出したり・・・
筆者:こういうやつ私の高校時代にもいたわ、マジ嫌い。こないだスーパーの酒屋でバイトしているのを見かけた。仮面浪人までして大学に行ってたのに・・・小説の話に戻ります。
根岸義法:俺はロリコンだったのだ。
不幸にも教職についてから自分の性癖に気づいてしまったのだ。
成人向け雑誌を見て毎晩処理していたのだが、それで得られる興奮が、学校で感じるそれと比べて格段に小さいことに、焦りを感じていた。
「女の子たちに蔑んだ目で見られている」という状況に反応して、俺の股間はよりいっそうにパンパンに怒張してしまったのだ。
筆者:金で解決しないことはもう解決しないという島田紳助さんの金言を思い出しました。
一度に十発以上殴ったこともあった。
筆者:うわぁヤバいな。私の近所に保護司をしている人がいますが、その時指導の心得をして言われたのが、「適当でいい」「決して更生させようなどという使命感のようなものを持ってはいけない」だそうです。過干渉はいけませんね。自立心無くなりますわ。小説の話に戻ります。
高村広子:今流れてるのが何の涙なのかわからなくなっちゃったわよ。
筆者:自覚があるなら大丈夫!
鮎川茉希:マスカラもアイシャドーもなしで出かけるのは、侍が刀無しで出かけるのと同じくらい不安だったのではないかと
まあ、あたしンちが異常だってことを知った。
筆者:子どもの頃、私も家が自営でサラリーマンでなかったので、会社員時代空気が読めず、えらい目に遭いました。
シンゴは新聞も読めなかった。「新聞」っていう漢字も読めなかった。
筆者:うわあーイタタタタタタタ・・・・
寺島悠:新築で七畳ユニットバス付き日当たり良好で家賃4万8千円という都内の好物件
筆者:私は実家暮らしだから、家賃など無用だ!がはは!
公務員の副業はできないっていうけど、賃貸住宅の大家は大規模じゃなきゃだいじょうぶらしい。
筆者:役人天国やな日本は、はぁ。
90年代は管理職になってたからパソコンが出来なくても何とか乗り切れちゃった。
筆者:ぐおおお、羨ましい!今の若者は資料作成とかで自分の大切な人生をガシガシ削られております!貯金若者に還元してぇ!
作者は元お笑い芸人という経歴
藤崎翔さんはこの作品を夏場に書いたのですが、熱くて適わないという理由で自宅アパートの風呂場でなんと浴槽に水を浸してそれにつかりながら執筆したそうです。矛盾点はないかと最初から何度も何度も読み直し、書き上げた根性、やはり芸人さんというのはちょっとやそっとの根性ではできないのかなと思いました。大賞受賞後、藤崎さんは10年でこんなにも変わるものか、人生ってわからないものだと後書きで仰っておりますが、まさにその通りだと思います。つい先日、生命が存在する可能性のある惑星が一気に7個も見つかって本当に何が起こるかわからないのがこの世ですね。何が起こるのかがわからないって言っておきながら分かった気になっているのがまたちょっと引っかかりますが。
初版の日
この作品の初版は2014年9月30日ということですが、ちょっとググってみますと、ラーメン店、座席を巡って暴行死。「白い巨塔」の山崎豊子死去。
私が思い出せるニュースはこの二つだけでした。
相方について
作品の後書きを読む限り、現在ピン芸人としてくすぶり中の三島ゆういちという相方がいらっしゃるようですが、もう本格的に藤崎さんは作家の道に進むようですね。あんまり話題には上りませんが、これってピースの又吉と綾部とほぼ同じケースなんじゃ・・・ 10年後くらいに藤崎さんも山崎豊子くらいになって、ついでに相方の三島さんも一緒にテレビに引きづりだしてやるくらいの勢いで、次回作に取り組んでいってほしいと思います!ええ、私はこの神様の裏の顔、素直に面白かったです!
藤子不二雄Aの『魔太郎がくる!!』の「よい子の会」会長はホントによい子か?との関連性
まず最初に神様の裏の顔というタイトルと帯の宣伝文句から、この『魔太郎がくる!!』のよい子の会の会長はホントによい子か?というストーリーをふと思い出しました。
登場人物の会長は一日一善をモットーに、カツアゲされそうになった魔太郎の代わりに殴られるから許してあげてもらうようチンピラを説得して、実際に身代わりになったりします。そして助けてあげたいじめられっ子の魔太郎をよい子の会に勧誘し、会員を増やしていくのですが、魔太郎は夜中に会長の友人であり一悪一滅と叫びながらチンピラを殴りつけ暴力で解決する怒り仮面という人物に公園に呼び出され、いいことをしないやつは悪と同じという理由で殴られてしまいます。
実は会長と怒り仮面は同一人物であり、会長はいじめられっ子をいい子に教育するという目的で昼間はよいこの会長という善人、夜は怒り仮面という暴力で解決するという裏の顔を持った人物でした。
さて、神様の裏の顔に戻って、人は自らの身を守るために、色々しますがこの作品の登場人物は人に見せても大丈夫な面、見せてはやばい面、即ち裏の顔が赤裸々に描写されております。そして読者はラスト30ページ、終盤ですが読者は叙述トリックに見事にはまってしまっていたことに気づかされます。
知らないものは存在しない、などと言いますが、この作品の犯人かなり質悪いです。私はマジで嫌いです。登場人物はみんな他人に嘘つきながら必死で社会、あるいは他人と合わせて適合しようとしているのに、犯人は自分で自分を騙しながら罪を重ねていきます。そして最終的にはまあきっと、私の想像ですが、将来は気がくるって孤独死だろうなと思いました。あるいは保険金詐欺でも犯すのか。怒り仮面もまあ自らの周囲の環境を整えるという意味では同じかもしれませんが、40過ぎて結婚もしないで親の陰に隠れて・・・うわあ、なんだか怖くなってきますた。この犯人、通夜が終わってからどうなるのだろう。怒りを面に出さない人物というのは、本当は恐ろしい人なのかもしれませんね。
さて魔太郎の場合は怒り仮面の正体を見破ることに成功し、会長と対峙するのですが結局何もせず、静かにその場を立ち去ります。あの魔太郎が・・・復讐に関してはエキスパートである魔太郎が・・・空き巣に入った男を下痢にして体力を奪ったうえで警察に突き出すあの魔太郎が・・・時計を取り上げた不良少年を時計台に呼び出し、歯車に突き落としてしまうあの魔太郎が・・・インチキ分譲地を購入させた不動産屋を土砂崩れで生き埋めにしてしまうあの魔太郎が・・・やろうと思えば何でもできる、うらみはらさでおくべきか!の魔太郎が距離を置く、という選択をしたのです。
即ち作者の藤子A氏も、こういう輩には打つ手がないと判断したのでしょう。いや恐ろしい。
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