優しい言葉がいっぱいの思春期短編集 - つるつるとザラザラの間の感想

男子校と女子校の奴ら

は虫類を扱うペットショップの息子である環。男子校に通っており、女子との会話には慣れていない奥手な男の子。いつも男同士3人グループで仲良くしてたけど、なぜだか学祭で何とも美少女な女の子に話しかけられて…！そんなところから物語は始まっていきます。全体として、話はつながっているけれど短編集みたいな感じですね。環が主人公なので、主には男子校ならでは・中学生ならではの悩みやドキドキが詰まっています。そこがかわいいし、相手役のさやちゃんもまたただただかわいいという…終始ほんわかしているので、不安要素がなく、癒されるためにのみ読むという用途ですね。

話は環目線で進んでいくので、常に環とさやちゃんの話なんですけど、男子校の仲良し3人組の話も気になりますよね。メガネ野郎とさやちゃんの姉である葵さんとのエピソードとか、なんて残念なんだろうっていう…（笑）お互いが男子しか・女子しか知らないのにプライドだけは果てしなく高くて、残念な気持ちになるのに惹かれあうのはなぜだろうね？それほどまでに異性ってやつは…興味をいだかずにはいられない存在なんだろうなと思います。そして、良き働きをするのが環のお母さん。は虫類ショップを営みながら、息子の成長を陰ながら見守ってくれているのがわかります。みんな通ってきた道は同じなんだなーとか、どんな仕事をしていたってやっぱり親なんだなーとか、しみじみとしますよ。

ヘタレなりのがんばり

環のキャラ、けっこう好きですね。いい奴ですもん。ヘタレですけど、目の前に転がってきたさやちゃんに対して、家の手伝いがあるからと断れるところも、性格の優しさが伝わりました。もちろん、ビビッてそんなことを言ってしまっただけとも言えるのですが、大切なものを傷つけないようにしながらも、きっと自分の意見もきっと伝えることができるんだろうなと想像させてくれました。は虫類が苦手で、母親の仕事の手伝いのために仕方なく取り組んでいた環。だから、さやちゃんには虫類が好きであると言っておかなければ、自分なんて見向きもされないかもしれない。自信がないこととウザいことは紙一重だなと思いますが、この見てくれがね、どうも応援したくなってしまうというか。さやちゃんもそんな一生懸命な姿を好きになったんだろうな…

さすが思春期真っ只中の中学生だなっていう描写もたっぷり。さやちゃんに名前を初めて読んでもらえて、ゾクゾク～…！という表現がされていたけど、少しエロいよね。焦っている感じとか、表情とか、中学生の事情がうかがい知れるというか…さすが免疫のない男子は反応がピュアだね。さやちゃんとお付き合いできるようになってから、夢に出てきた後の夜の生理現象も、妙にリアルな…無表情なのがまた、あーこの年頃ってこういうの普通にあるんかなって想像させたりとか。恥ずかしいような、かわいいような。ふつうに下半身丸裸状態でパンツのみ洗面台で洗っている姿、そして普通にお母さんがそこへやってくるところ、男の子の母親になったらこういうのわかってあげられるだろうかって不安も出てきたよ…。

かわいらしく積極的な女の子

一方のさやちゃんは、本当にいい子で。は虫類が大好きであるということ以外、あまり変わった要素はないという。裏もなく、のっけからいいところしか見えない！そして積極的ですよね。見かけによらず、告白はまさかのストレート、しかもどっかのファストフード店みたいなカフェみたいなところですっと素直に…あぁ…ロマンチックな告白とかじゃないのが逆にいいよ。構えてないところ、そしてすんなりOKする環もまた、かわいい。萌える。地味男でも、さやちゃんにとっては超かっこいいらしい。これぞ恋は盲目というやつだ。

は虫類が好きで、環は大好きなは虫類を扱っているお店の子で、姉妹みんながお世話になっていて、環のどこを好きになってくれたのかっていうのが不安要素でしたが…ちゃんと環がは虫類が苦手であることが分かったうえで好きになっていると分かって、よかったです。しかも序盤にね。最後のほうにわかったらなんかずっと環が罪悪感いっぱいでさやちゃんと付き合わなきゃいけないことになり、それってつらすぎると思うから。「は虫類が苦手なのにがんばってお世話をしているところが優しくて大好き」って…かわいすぎか！もう気兼ねなく全力でさやちゃんを好きになれますよね。

ただ、さやちゃんが好きなものを、環も好きになってくれるように、がんばっては虫類に触らせているのはSなのか優しいのか天然なのか…ふわふわしておきながら積極的なさやちゃん、さすがです。また、料理はやったことがないのにがんばってお弁当を…というのも萌ですね。これだけ女子っぽいなら得意そうだけど、やっぱりは虫類以外には興味薄な子なのかなということ、環のおかげでちゃんと女子的に目覚めていることとかが、環が知ったら超喜ぶだろうなとか、妄想しちゃいます。

案外といい言葉がいっぱい詰まっている

案外とですね、いい話なんですよ。は虫類の生態と人間や学校生活のことをうまく同じくとらえられるように短編集が組まれているんですね。そのあたりはうまいと思います。言葉がね、しみます。なので結局お母さんの手のひらの上だなと毎度学ばされるわけです。がんばれ、中学生。そうやっていつの間にか大人になっていくねん。

目の前に現れると手当たりしだい抱きつくのよ

うん、男子校の男子のことを表現した言葉。そうはなりたくないなと環を決意させた言葉です。また、

寂しいからってすぐ他のトカゲに目が行くなんて…

浮気することなんてあるんだろうか？そんな不安をあおってくる言葉ですね。全然そんなことにはなってませんが。そうはなりたくないと、また環を決意させるね。登場人物少ないし危険人物いないわ…

カメレオン同士は見える位置に置くだけでストレス

仲良しの友だちでも、近くにいて迷惑がかかってしまうことも、かけてしまうこともあるだろうね。それでも同じ仲間なんだね…そんな気持ちになります。

は虫類によって結ばれたこの恋。このペットショップなしには環とさやちゃんの素敵な関係性はなかったわけですよ。だから結局お母さん様さまとなるわけですね。ちょいちょい登場するだけかと思っていたは虫類豆知識も、楽しみになってしまいます。

中学生の素直な情事に不覚にもにやける

イラストはかわいい系、内容も癒し系でいい話系、思春期の男女のかわいい恋を楽しみました。発展しそうでしそうにない、でもちょっと進んでもらいたい気もしてくる。そんな話です。中学生が読めば割と共感するだろうし、ちょっと憧れちゃうかもしれない。とりあえずがんばってたら見てくれてる人がいるかもねって気もしてくる。大人が読めば、ただかわいい。お母さんのメッセージが何となく沁みてほっこりする。4巻という短さで、1話もすごく短いし、さらーっと読めちゃうのもお手軽感がありました。

初恋で初めての彼女、どうやったらもっと親しくなれるんだろうってそればっかりな子たちの様子を見てにやーっとするのは、果たして自分が腐っているからなんだろうか…？いつまでも子どもなんだろうか…いや、いつまでも童心を忘れないことがいつまでも若くいる秘訣よね。…中二病です。

それにしても、この二人はやきもきするとかなくてすんなり付き合えましたよね。さやちゃんのおかげで。やっぱり好きな人が出来たら、女の子もがんばったほうがいいよね。見ているだけなら気づいてもらえないよ。