お嬢様マンガのパイオニア - 白鳥麗子でございます!の感想

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白鳥麗子でございます!

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画力
3.00
ストーリー
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キャラクター
4.50
設定
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演出
4.00
感想数
2
読んだ人
3

お嬢様マンガのパイオニア

4.04.0
画力
4.0
ストーリー
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キャラクター
4.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

「大富豪のお嬢様でありながら」という設定の新鮮さ

富豪のお嬢様や御曹司を主人公に据えたマンガはたくさんあるけれど、このマンガほどその「お嬢様」と「本来の性格」のギャップが楽しめるマンガはあまりないと思う。「有閑倶楽部」も「花より団子」もいいのだけれど、やはり私はこちらの作品の方が好みだ。主人公白鳥麗子は大富豪のお嬢様なのに、好きな人には一途で純粋で一生懸命なところが感情移入しやすく(実際彼女の行動の多くがわかるわかるとうなずけるものだった)、プライドは高いのだけれどそのプライドの方向が違うことによって自らが墓穴を掘ったり、後悔しているところがかわいらしくもあり。哲也くんにせっかく告白されたのに振ってしまうところは、程度の違いこそあれ女性なら理解できるところだと思う。純粋すぎるゆえに二人のベッドインも美化しすぎて結局できていないところは、なんともおもしろく可愛らしい(本人は出来ているつもりでいるところも)。そう言いつつも研究は怠らず、変な方向に努力するところは(高田くんにスカート捲ってみせたり)このストーリーにずっとある彼女の面白さだと思う。
誰でも恋愛するときは一生懸命で必死で、本人は真剣でも他人から見たら何してるの?と言うことはよくあることだと思う。そして彼女の行動の原動力は全て哲也くんへの愛な訳で、それを読んでいると自分は愛情をきちんと表現できているかなということを考えさせられる。

哲也くんの存在

白鳥麗子の恋の相手だが、麗子が大富豪のお嬢様だったり超美人(確か水着姿の麗子が「足の小指の爪までちゃんときれいのよ」というセリフが扉絵にあったと思う。それは確かに、個人的にはキレイな足という条件には欠かせないと思うものなので、作者の美意識のツボに触れた思いだった)なのに、哲也くん自体はそれほど美形でもなければスポーツマンでもないし、もちろん御曹司でもない。昔いじめられていた麗子をかばったというだけで(しかも幼稚園のときに)、一途に麗子に想われる幸せ(?)な男性だ。高校のときに麗子に告白したものの手ひどく振られるという過去を持つが、時を経て二人は同棲に至るまでになる。もちろん麗子はスタイル抜群で美人だから一つ屋根の下でなにもしないということはないはずなのだけど、前述した理由で事ここに至ってはいないところが切なくもある。全体的にぱっとしない哲也くんだけども、そのいいところは、最初はもちろん戸惑いながらだけど麗子の性格や変わった言動をそのまま受け入れているところだと思う。個人的にいいのは、それを始めっから理解していたのでなく、破局や様々な事件を経てだんだんとゆっくりわかっていくのが実感として分かるように描かれているところだと思う。このマンガは全体的にはコメディタッチで描かれているけど、哲也くんの心象はところどころのシリアスな表情で描かれており、それがスパイスのような要素を含んでいると思う。だから彼があまりパッとしないという設定はストーリーがうるさくなりすぎず、逆にぴったりなのかもしれない。

脇役の個性の強さ

ぱっとしない哲也くんだけどもなぜか女性にはよくもてる。女性の読者にはあまり印象がよくないかもしれない京子ちゃんや、白鳥麗子と肩をならべるくらいの名前をもつ、かきつばたあやめ。友達は、チャラいけれども憎めない高田くんなどが脇を占める。おとなしそうな感じの京子ちゃんも哲也くんを好きだったころは強引にも必死だったし(麗子に感情移入しているからどうしても味方にはなれなかったけども)、かきつばたあやめはお嬢様なのになぜかいつも麗子の世話を焼いてしまう羽目になったりと、主人公がでていなくともストーリーがあり飽きることがなかった。一度哲也くんに振られた麗子が落ち込みすぎて限りなく透明になってしまい(個人的にこの設定は大好きだった)、誰にでも丁寧に下手にでてしまうという風になってしまったときは、あれほど麗子のことを悪し様にいっていたかきつばたあやめでさえ力になろうとしていた。ベタな設定なのかもしれないけど、こういうシーンを読むとベタって大事だなということがよく分かる。(全然関係ないけれども、韓国ドラマが流行ったのも結局はベタな設定だからだと思う。)
あとうずまきというのもいた。麗子専属のメイドなのだけど、その独特の雰囲気でストーリーのスパイスになっていた。地味キャラなのにしっかり婚約者もいたりして、めったと出てこないキャラなだけにそのインパクトはその風貌もあわせ、結構なものだった。
個人的に一番好きなのはやはりかきつばたあやめだ。お嬢様で麗子をライバル視しながらもなぜかごはんを振舞う羽目になったり(三角布と割烹着という姿が意外に似合っていた)、悪態つきながらも麗子を励ましてしまっていたり、もうライバル以上の存在になっていると思う。彼女のトレードマークの太い眉毛はあの当時の流行を思わせる。それでも今読んでも古めかしさはあまり感じない。

残念だったドラマ化

この当時も「同級生」や「東京ラブストーリー」や「南くんの恋人」とか色々マンガが実写ドラマ化されていた。柴門ふみのマンガだと、マンガ自体が現実的な描写だから実写化してもそれほど無理はない。だけどもこの「白鳥麗子でございます」は限りなくコメディマンガであり、また下ネタも多々あり(決して生々しくはないのだけど)それが面白いところなのに、こういうのはドラマでは絶対うまく描写できない。また白鳥麗子も鈴木保奈美ではないし、哲也くんも断じて荻原聖人ではない(両方嫌いというわけではない)。案の定あまりにも椅子の上でお尻が落ち着かないような展開でいたたまれなくなり、最後まで見ることができなかった。好きなマンガだからどうしても気になって、ダメなんだろうなあ…と思いつつもハラハラして見てしまう自分が腹立たしいくらいだった。そしてこのプロセス(気になる→見てしまう→ハラハラ→怒り→もう見ない)は自分の気にいっているマンガが実写化される行われるルーティンのようになっている。
テレビ局はこういう失敗を何回するのかよくわからないが、コメディマンガを実写化して成功するのは本当に難しいと思う。そして前述した「南くんの恋人」もこの範疇に漏れなかったということは追記しておく。

「白鳥麗子」という知名度の高さ

もともと「白鳥麗子でございます」というマンガを知らなくとも、「白鳥麗子」という名前は知っているという人は多いと思う。お嬢様の名前と言えば「白鳥麗子」というような、いわば代名詞のような地位を手に入れるのは並大抵のことではない。マンガ由来でその名前が代名詞のようになっているのは「YAWARA!」の「ヤワラちゃん」もそうだと思う。柔道をする女の子のことを(谷亮子だけでなく)「ヤワラちゃん」と呼んでいるのは、なにも「YAWARA!」全巻を読破したひとばかりではないだろう。社会の出来事とうまくリンクしたのかどうかはわからないが、この名前が世に深く浸透していることは間違いないと思う。
当時気に入っていたマンガで「ツルモク独身寮」というのがあり、そこにでてくるキャラクターで「白鳥沢レイコ」と言うのがいた。もちろん大富豪のお嬢様だけども彼女は超美人でなく、むしろその真逆の容姿をもつキャラクターだけど、その名前は絶対「白鳥麗子」を意識してつけたと思う。

1980年代~1990年代のマンガ黄金期

このあたりの時代は本当にいいマンガがたくさんあった。当時を思い出して大人買いしてしまうのはいつもこの時代のマンガだ。「白鳥麗子でございます」も引越しのときに一度売り飛ばしてしまったものの、何年かたって読みたくてたまらなくなり再度買いなおしたというくらいの作品だ。もちろん当時読んでいたときに流れていた音楽、読みながら食べていたスナックなどの思い出といったノスタルジックな思い出の付加価値を差し引いても、昔は今よりもずっと質の高いマンガがあふれていたように思う。それでもいい作品にめぐり合えることを願って、私はこれからもたくさんマンガを読もう。

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