代表作品のパラレルワールドを描いた作品
池野恋氏の代表作のパラレルワールド
池野恋氏と言えば、思い出すのは「ときめきトゥナイト」という人は多いだろう。アニメ化もされ、昭和50年代、少女たちは皆この漫画に夢中になり、この作品のヒーロー真壁君を皆理想としていたものである。間違いなく池野恋氏の代表作品と言える。
ときめきミッドナイトは、このときめきトゥナイトを作者自らがパロディ化、パラレルワールドとして描かれた、大変珍しい作品である。自分の作品で、ましてやかなり有名な作品で、読者のキャラクターのイメージなどがもう固定されてしまっているような作品をパロディ化するというのは、描く側もかなり決断が要ったのではないかと察する。
賛否はありそうだが楽しめる
元作品のときめきトゥナイトのイメージをとても大事にしている人からすると、真壁君であって真壁くんでない真柴シュンや、主人公の江塔蘭世にしろ、どう受け止めていいか、パロディにする必要があったのだろうかと、読みだして疑問に思う人もいるかもしれない。キャラクターに思い入れがある読者には若干こういったパロディ作品というのは、受け入れがたい部分もあると思う。
しかし、ときめきミッドナイトは、元作品のキャラクターのイメージや、やっぱり結ばれるべきは蘭世とシュンなのだという、物語の根幹みたいなものまでは変えていない。また、魔界などファンタジー要素を盛り込んでおり、人の生死にかかわる問題なども内包しているストーリーであるが、池野恋氏の作品特有の温かさとして、悪党とされている人間に垣間見える善意がある。「思想が違うだけで悪い人などいない」という、少年漫画特有の勧善懲悪とは異なった問題解決の仕方が、女性ファンには非常に読みやすく納得できるのではないだろうか。そういう意味ではパロディであっても、ときめきミッドナイトもとても奥深い作品だと言える。
蘭世の発想の転換がすばらしい
本作の蘭世は、元作品の蘭世より、かなりしっかりした印象がある。いざとなったら度胸があるという点では同じなのだが、元作品ではどちらかというと真壁君に導かれている印象が強かった。しかし、本作では蘭世の理論的な考えや、問題点の分析にシュンの方が感化されるシーンが多い。起きている問題に対し、なぜ問題の根本を見ようとしないのか、本当はこういう悪意からではなく善意からではないのかという蘭世のプラス思考の説得には学ぶべきところが多い。読む人も日常の対人トラブルに対し、蘭世の考え方は対応のヒントになりうるだろう。若い世代が読むには、楽しみながら対人スキルを無意識い上げることが出来そうな、素晴らしいストーリーになっている。
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