1つの曲に込めたメッセージを最後まで
夢を追いかける少年少女
歌を歌うことが大好きで、歌手になりたいと願いながらそれを隠して生きている詞央。屋上でたまたま書いていた詩をクラスメイトの高樹直に見られてしまった!そこから、詞央は自分の夢と向き合ってそれを真剣に追いかける旅を始める…!ラブはおさえめで、詞央が夢を叶えるために高樹くんに背中を押されてがんばるストーリーになっています。親に押さえつけられているからなんだよ、おれたちなんだってできるだろう?そんな若さ光る作品ですね。
高樹くんに触発されて、家出をして東京へ行ってみることにした詞央。一度夢を追いかけることを親から全否定されていた彼女にとっては、またとないチャンスだったことでしょう。高樹くんみたいな、自分から動いて何かを得ようと努力できる人っていうのは、とても貴重なんですよね。大人になると、余計にそういう人間が貴重であると気づきますよね。悪く言うとウザく、良く言うと芯が強くてブレない人間。親から金を盗んだとしても、自分のやりたいことをやりたい…!っていうのはまぁ子どもだなーって思うけど、やりたいことにたどり着く最速の道を行こうとするのは間違っていないというか。詞央も高樹くんも、親から自分が認められていないと感じた者同士でしたから、お互い惹かれあうものがより強くなったんだろうなと思います。詞央は歌で、高樹くんはギターで。東京でデビューしよう。そんな甘い世界じゃなくても、やってみなきゃわかんないじゃん!っていう気持ちは、何歳になっても忘れちゃいけないなーって思います。
まだまだぎこちなさは残る
千葉コズエ先生の初長期連載作品ということで、まだまだぎこちない感じはありましたね。絵はとってもきれいで、女の子も男の子もかわいい系。地味な女の子が派手な男の子の導きによって輝くまでを描いてくれているけれど、時々うーんこの表情って…あってる?ってこともありました。セリフもうーん…という時がちらほらとあり、
おまえら!今日からオレ七原と友達んなったから!やさしくしねーヤツは許さねーぞ
というこのセリフは、何とも恩着せがましく、無理矢理感満載で、他のクラスメイトの反応もよくわからず。そして安易な外出禁止令を出す父親。羽の入った封筒。飛び立とうぜ的な。そして片翼じゃ飛べないだろっていうペンダント…き…きれいすぎてかゆい…若いなーって感じが満載でしたね。小学生か中学生ぐらいだと、すんなり受け入れそうな内容にはなっているかなと思います。
服装をかえれば田舎の地味女でもかわいくなるっていうやつ、千葉先生よく使いますよね。「クレヨン・デイズ」でも田舎から出てきた地味娘のストーリーの中でありました。まぁわかるけどね。新しい自分になって、心躍る夢を追いかけようみたいな。東京で輝くための一歩的な感じもしていいと思います。長期連載だけど展開は結構早く、3巻で仕上げるって決まってたのかな?すんなりいろいろなものに出会ってそのまま行ってしまうのかと思いきや田舎に強制送還という流れもあり…あっちこっち大変でした。それでも高樹くんと離れてしまうことがなかった、ということで、それはよかったなと思います。
詞央、高樹くん置いてけぼりはないよ
1巻でね、いきなりストリートライブやってるやつらと遭遇し、歌う楽しさを知ってしまった詞央。そして、高樹くんというものがありながら、電話して会いに行ってしまうという行動…こいつ、まじかよ。と思いました。自分が歌手になりたいということだけしか考えていないってことなの?!ここまでこれたのは高樹くんのおかげだろうが、この野郎!そして、高樹くんが片翼のペンダントを持ってきてくれて我に返り、
私 高樹くんとじゃなきゃイヤだよ!!
ってあほでしょう…何やってるんですか…もうちょっと迷ったとかさ、それでも話し合うとかさ、あるでしょう…もう東京に出てきたからにはなんでもどうでもいいんですかい。そんな疑問が出まくりでした。で、拗ねた高樹くんとの仲直りもすげー子どもっぽいというか。え、それでおっけー?さすが、まだまだ高校生だと複雑さが足りないよ。詞央を勧誘した男のほうも、デビューしたくて焦ってただけでしょうね、っていう悲しいオチ。今までがんばってきたのに、ぽっと出の女つかまえてどうしようっていうんだよ。女としてもどうだとかこうだとか、めんどくさ!他のバンド仲間の顔よ顔!振り回し、振り回され…忙しいですね、ほんと。のほほんとはしていない。そして親から連れ戻されて、強制送還をくらうわけです。そりゃーいつまでも自由にできるなんてないよね。親ってさ、大事だから閉じ込めようとしたり、羽ばたかせようとしたり、親なりに大なり小なり悩んでいろいろするんだよ。虐待じゃなければね。
親ってやつは
親ってやつは、難しいよね。子どもって、いつまでも子どもだと思ってしつけようとかやってると反抗してくるし、放任しててもおかしい方向へ傾いていくことも十分あるし、じゃーどうしたらいいねん!って。働いてお金稼いでさ、子どもを成人させるまでってがんばってさ。守ってるつもりがそうじゃないとか言われたりして。つまりは、気持ちだけじゃ通じないってことなんですよ。お互いにね。だから、恥ずかしい気持ちとか全部取っ払って、ちゃんと向き合って話し合わないと、気づきも得られないんですよね。
大人になるまで話すとかしてなくて、自分が親になったときにどんな気持ちだったんだろうとかわかったんだよ~とか言ってる人もいます。もっと早く気持ちがわかっていたら、もっと感謝して、もっとお互いのためになることをちゃんとできていたんじゃないだろうか…往々にして気づけません。経験のないこと、考えなくても大丈夫なように、守られて育っていたんだなって、そういうのは後から気づくようにできているんですね。
まぁ詞央のお父さんみたいに、あまたごなしに全部否定するのもどうかと思うし、お母さんみたいに黙ってお父さんの指示に従いながらも、娘の気持ちを案じているとかっていうのも卑怯なんじゃないかとか、悪い見方もできるんですけどね。何が正しかったかっていうのは、その時にはわからないことが多いものというか。だから、家族を大事にするってこと、基本においてほしいなと思うわけです。はい。
3巻くらいでちょうどよし
夢だけ語り、「自由の翼で…」という歌のテーマに沿っていくのだとすれば、やはり3巻くらいでまとまってくれてちょうどよかったんじゃないでしょうか。これ以上はもたない気がする…他の登場人物についてはほとんど描かれていませんから、この二人の世界がこういう形ですすんでいったってことで、良かったと思います。高校生でこれだけ行動力があって、突き進もうと思えばできるんだ!って知ることができたんだから、大人になったって詞央と高樹くんは大丈夫な気がします。そのまま、強い気持ちを持って、どんどん挑戦していってほしいと思いますね。自分は認めてもらえないとか言って、自分が知っているところだけに閉じこもっているよりも、やりたいことから逃げないで飛び出ていって、多少批判をくらおうが、自分らしく生きていけばいいんだと思います。そして、それが正しいかどうか、自分で好きなことをやっているってこと、自らが幸せになることで証明すればいいんだと思います。夢がいっぱい詰まった、優しい物語でした。
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