バディ物の痛快さと、最後のどんでん返しに震える
凸凹コンビのバディ物で、主人公の変人ぶりに魅かれる。
典型的なバディ物と言った構想で、主人公の仙石(野村萬斎)がとにかく変人で気味が悪い。手に取った「物」から思念を読み取ってしまうのだが、個人的には友達にしたくないタイプで、この人が後々犯罪の根源を暴こうなどとは到底思えない引きこもりっぷり。体質的に相当苦しいはずの思念の読み取りをコミカルに描いていたので、なんとか静観できるもその特異体質ぶりがフューチャーされていたら、見ている人は相当苦しいはず。だけど興味をひかれる素材だった。
バディのもう一人である丸山(宮迫博之)は、チャランポランな芸人崩れでこちらもやはり友達になりたくないタイプの人間。二人を組合すことになる切っ掛けが、幼気な学生の頼みで本当にスルーしたいはずなのに、過去の繋がりからどうしても放っておけない「人情み」があるところからの展開がスピーディーで軽快だった。
二人の捜査(まがい)は非常にドタバタ。その辺はアメリカ映画のコメディ要素が高い。海に落ちる車とか、背後で爆発する建物とか、バディ物のあるあるが詰め込まれていて痛快だ。
時系列の描写から主観のトラップに陥る。
失踪したピアノ教師雪江(木村文乃)、エリート警部佐々部(安田章大)の過去回想シーンが似ている。演出的に似せているものと思うのだか、時系列が数分飲み込めない感覚に捕らわれた。後にそれが「人間の主観は捻じ曲げることができる」という仙石の言葉につながってきてハッとした。たった今、自分が主観として捉えていたことを指摘された気分になり、苦笑いとなる。
エリート警部佐々部が、仙石の思念を読み取る能力を買っているものの、組織の建前「警察は科学捜査ですから」と言った言葉、後の伏線につながるとは到底思えなかったが、後になってみるとバリバリの伏線だったから怖い。
まさかの「豹変」ぶりが涙を誘う。
ドタバタの末、避暑地の別荘のシーン。途中にすごーく怖い音楽教師・伊藤(すちん)が絶対犯人だろう!と思わせつつ、じりじりと恐怖を近づけてくる展開に背すじが凍る。もう逃げてー!と叫びたくなるような刻々とした時間の推移がたまらない。
しかし、ラストの展開がまさか過ぎてはぁっ?!っとなった。すべてエリート警部佐々部の犯行だと分かった時の感情は「悲しみ」しかない。バディも長谷部の感情を背負いつつも目の前にある命を救出することで必死で、鬼気迫る演技にハラハラしまくった。女装した長谷部が、妹の無念を自らに課せ、最後には銃弾で頭を射抜く。劇場内にはすすり泣く観客が多数いた。怒りよりも悲しみが色濃く、終わった後は妙に疲れた残ったが、フィクションで良かった…と安堵する娯楽映画であった。
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