ドラマ『私を離さないで』を見終わって - わたしを離さないでの感想

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ドラマレビュー数 1,147件

わたしを離さないで

4.334.33
映像
4.17
脚本
4.17
キャスト
4.67
音楽
3.83
演出
3.83
感想数
3
観た人
6

ドラマ『私を離さないで』を見終わって

4.54.5
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
4.5
音楽
3.5
演出
3.5

目次

綾瀬はるかさんと三浦春馬さんを見たくて

綾瀬さんと三浦さんが好きなので2人の共演が嬉しくて見始めました。水川あさみさんとの三角関係が中心の恋愛ドラマかな?と軽い気持ちで見始めたドラマでしたが良い意味で完全に裏切られました。ドラマは3人が幼い頃から過ごした陽光学苑という学校と寄宿舎を兼ね備えた場所から始まります。幼い頃からの力関係やお互いへの思いなどが、成長した3人の関係に大きく影響してくるので、上手く表現できていたように思います。そして陽光学苑校長(麻生祐未)から「貴方たちは普通の子供では有りません。特別な使命を持った天使です。」と告げられたときの子供達の表情が、今まで漠然と感じていた不安が誇りに変化したように感じられ、子供からの教育は大きい意味を持つと思いました。

外の世界を見たくて塀の外に出て行った少年達の運命

陽光学苑という世界しか知らない少年達が狭い塀の中だけでは満足せずに外の世界に興味や夢を抱くことは当たり前だったと思います。小さい世界しか知らない少年達は外の世界へ冒険の旅に出て行きました。幸か不幸か土井友彦(三浦春馬の子役が演じる)は塀に立てかけたハシゴが壊れてしまい、仲間と一緒に外の世界に飛び出せませんでした。友彦を残し、出て行った少年達はどうなったのか気になっていましたが、保科恭子(綾瀬はるか)や友彦(三浦春馬)達のように大人にはなれず、同世代の子供達への臓器提供者として短い一生を終えたことを知り、少年達の希望に満ちた顔を思い出し、悲しくて仕方がありませんでした。

年頃に成長した恭子と友彦と美和

子供の頃から恭子(綾瀬はるか)と友彦(三浦春馬)は、互いに好意を抱いていましたが、酒井美和(水川あさみ)が2人の関係が進展するのを妨害します。クローン人間として生まれた3人には生まれたときから親が居ません。唯一幼い頃から一緒に育ったクローン仲間が身内のようなものだったのでしょう。美和は恭子が惹かれている友彦を自分の恋人にすることで、恭子も友彦も自分のものにしたかったんだと思います。美和の屈折した2人への感情が、このドラマを複雑に面白く展開させていきます。テーマが深刻なので重いドラマになりがちですが、恭子の胸がメロン大というシーンは笑いました。綾瀬さんのバストは確かにメロンのように豊かなので台本に入れたのでしょうが、綾瀬さんはオッケーしたんですね。そして恭子が自分のSEX好きは遺伝子を提供した女性(母親になるのかな?)がSEX好きに違いないと予想して、アダルト関係の雑誌から自分にそっくりの女性を探そうとしているシーンに哀れさを感じました。自分のルーツが分からない事は自分の存在に誇りが持てず、不安にもなるのでは?と思いました。

気になった女優さんが居ます

このドラマで印象に残っている女優さんが居ます。陽光学苑で恭子達と一緒に成長した少女・まなみ役の中井ノエミさんです。ハーフの方でクールで賢く清潔そうな役が似合っていて、自分をしっかり持っているまなみ役にピッタリだと思いました。実際の彼女は4カ国語を話せる才女だそうでモデルもされているそうです。今のところ他のドラマなどで見かけていませが、もう一度見たい女優さんの1人です。ドラマではまなみ(中井ノエミ)が一般の人間を前にして、クローン人間として生まれた自分の悲しみや苦しみを訴えた場面が心を打ちました。まなみはケガをしながら「私の血は皆さんと同じように赤く、悲しみや喜びを感じる感情も皆さんと同じように持っている。自分のようなクローン人間を作るなら、せめて感情を一切持たないクローンを作って欲しかった。」と訴えて自ら命を絶ちました。もし私自身が提供だけの為にクローンとして生まれたのなら、そんな制度を作った人間や国に怒りを覚え、自分たちのような悲しい運命を持つ子供を作って欲しくないと願い、まなみのように反対運動をして死んでいきたいと思いました。ドラマの救いはまなみ達の命がけの運動が実ったのか、社会が臓器提供のためにクローン人間を作り出すことに異論を唱え始め、悲しい運命を背負って生まれる新しい子供達は居なくなるだろうと言うことです。

恭子の気持ち

恭子は一緒に反対運動をしようという、まなみの誘いを断り、少しでも長く生きたい気持ちを選びました。その心中には愛する友彦と少しでも長く一緒に過ごしたい気持ちが有ったのだと思います。臓器提供の運命が決まっている以上、共白髪まで添い遂げる事は出来ないのですから。自国の人たちはクローン人間の存在をうっすらとは知っていますが、自分たちとは異なる人間、もしくは外見は人間に似ているが感情を持たない生き物だと思っているのかもしれません。それは臓器提供だけが目的なので、大半のクローン人間は教育など全く受けずに、ただ成長を待っているだけだからです。字も読めない会話も難しい人間に生きていく価値はない、臓器を提供することで何とか役に立って死んでいけるから良いのではないかと考えているのかもしれません。一般の人達にクローン人間として生まれた子供達の悲しい真実を知らせない教育の恐ろしさを感じました。

三浦春馬さんと綾瀬はるかさん

三浦さんが出演した色々なドラマや『私を離さないで』を見ていて感じました。三浦さんは病気などで弱っていく演技が最高に上手いです。今回も臓器を1つずつ提供し、弱っていく自分の惨めな姿を愛する恭子に見せたくないために介護人を変えようとします。その心の葛藤や弱っていく体の演技が本当にリアルで心が締め付けられます。そして綾瀬はるかさんは、自分の運命を受け入れ、限られた命を全うしようとする決意、気付いたときには幼い頃から一緒に育った友や仲間は全てこの世から居なくなり、皆の分まで生き続けなければならない悲しい覚悟をした恭子を静かに激しく好演していました。

ドラマを見終わって

陽光学苑校長のおかげで恭子達はある程度の教育を受けることが出来、優秀なクローン人間として社会に出ることが出来ました。そしてまなみのように反対運動を起こす若者が現れ、クローン人間による臓器提供への批判が高まっていきます。世の中の不条理を正して行くには勇気と犠牲が必要なのかと考えさせられました。そして自分が助かるために他の命を犠牲にすることは有ってはいけないのでは?等と日常には考えないようなことを考えさせられたドラマです。ドラマではクローン人間はSEXしても妊娠しない、繁殖能力が無いとの設定でしたが、実際には繁殖能力があるクローン動物が居るそうです。好きな俳優さんを見たいと気軽に見始めたドラマでしたが美和(水川あさみ)が臓器提供のために手術室に連れて行かれるときに『私を離さないで』と叫んだシーンが心に残ります。『離さないで』という言葉が私には『忘れないで』と言っているように聞こえました。抵抗できない巨大な力で自分の運命を翻弄された恭子達の姿は戦争や天災で大切な人生を壊され命を失っていった人たちの叫びにも感じました。

最後に

『私を離さないで』はイギリスで100万部を突破した日系英国人、カズオ・イシグロが2005年に発表した小説です。イギリスで映画化され綾瀬さんの役を演じたキャリーマガジンさんが好評で、自分が生まれた来た使命・運命を受け入れながらも、悲しさや寂しさを淡々と表現し観客の心を掴んだそうです。ドラマ『私を離さないで』は私にとって忘れられない思い出のドラマになりました。ただ内容の重さから視聴率が振るわなかったのが残念です。これからもお腹の底にドスンと響くテーマやメッセージを持つドラマを沢山作って欲しいと思います。

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他のレビュアーの感想・評価

自分の中ではドラマ史上最優良作。芯の部分を根こそぎ揺さぶられた。

大好きなこの作品について、レビューできる機会を持てたことに、心から喜んでおります。自分の中では、今まで見てきたドラマ史上、1・2を争う名作、影響を受けた作品です。このドラマを見て感じたこと、考えたこと、自分が変わったことなど、お伝えさせていただきます。 決して他人事ではない、命の有限さこのドラマの感想で、よく「重い、見てて面白くない、不快、暗い」などという感想を多く見かけましたが、それは恭子たちのような、提供の義務があるクローン人間たちと、自分たちとが全く違うところ、存在であると思っているから出る言葉なのかと思います。あと、他者の役に立つために命を捧げる生き方と、たくさんの捧げられた命(犠牲)を足元に置きながら生きていくことと、どちらのほうが幸せか、というような意見もお見掛けしました。わたしたちの多くが、理論的には当然知っているけど、理解していない、実感していない大きなことのひとつが「自...この感想を読む

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閉鎖的な幼少時代誰かの命の為に、臓器提供という使命を生れながらにして持っているが、本人達はまだそれに気づいていない。切なくなる幼少期の描写。外界との関わりを遮断された施設で暮らしているシーンは、映画「エコール」「ミネハハ」を思い出させた。広樹と聖人が施設から抜け出そうとして失踪するシーンも、エコールでのローラが脱走を試みるシーンと似ていた。作中での目的は違うが、社会の、大人の需要の為に人権を無視され、命を操作される点がとても似ていると感じた。救いようのない絶望感コテージに移り、更に人間関係に悩む「提供者」たち。それぞれが親や社会から与えられなかった愛に飢えているように見えた。短い人生の中で、自分を必要としてくれる人にすがり、臓器提供以外の価値を自身に見出そうとしていた。そもそもが臓器提供を目的に生み出され、健康な臓器を提供する為に大切に育てられてきた彼らには、まともに生きる術がない。夢...この感想を読む

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  • 1037文字

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