命について考えさせられる
閉鎖的な幼少時代
誰かの命の為に、臓器提供という使命を生れながらにして持っているが、本人達はまだそれに気づいていない。切なくなる幼少期の描写。外界との関わりを遮断された施設で暮らしているシーンは、映画「エコール」「ミネハハ」を思い出させた。広樹と聖人が施設から抜け出そうとして失踪するシーンも、エコールでのローラが脱走を試みるシーンと似ていた。作中での目的は違うが、社会の、大人の需要の為に人権を無視され、命を操作される点がとても似ていると感じた。
救いようのない絶望感
コテージに移り、更に人間関係に悩む「提供者」たち。それぞれが親や社会から与えられなかった愛に飢えているように見えた。短い人生の中で、自分を必要としてくれる人にすがり、臓器提供以外の価値を自身に見出そうとしていた。そもそもが臓器提供を目的に生み出され、健康な臓器を提供する為に大切に育てられてきた彼らには、まともに生きる術がない。夢を見つけても、愛する人ができても、人生に希望を持ってもどうすることも出来ない様子が心に重くのしかかった。真実が命を絶つシーンでは、この命は自分のものだという強い意思を感じたし、クローンからの臓器提供が当たり前になっている世の中に対して、どんな人間にも感情があるという訴えを感じた。
彼らの命はなんなのか
臓器提供の為にクローンを生み出すということ。この世の中では、きっと非現実的なものだと思う。
そもそもクローンとは言え、心を持って生れてきた人間を、他の人間の命の為に殺せるのか?相当無慈悲にならないとできないだろう。
かと言って、心を持たないクローンを生み出せたとしても、道徳的にそれはどうか?
私たちが普段、自らの命の為に他の動物を殺生して栄養をもらってるのと変わらないと言えばそうかもしれない。対象が同じ人間になっただけのことかもしれない。
昨今の世の中、命を軽んじてる人が多いように感じる。自身のももちろん、周りの人や、普段の食事(他の動物の命)への姿勢。
ひとは自分のことに置き換えてみないと、理解したり共感したりできないことがある。
大げさかもしれないが、そういう意味でこのドラマは命の大切さを訴えているのだろうと私は受け取った。
ドラマとして観ることで、登場人物に感情移入して命の大切さを今一度考えさせられた。
結構グロテスクなシーンがあったりヘビーな内容のドラマだけど、キャストもとても良く、それぞれの感情や登場人物の人となりがとてもよく伝わる。
かなり印象に残る素敵な作品だと思う。
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