30年経ってもストーリー展開は最高級 - 3×3EYESの感想

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3×3EYES

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画力
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ストーリー
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キャラクター
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設定
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演出
3.75
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30年経ってもストーリー展開は最高級

4.54.5
画力
3.5
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
4.0
演出
4.0

目次

独特な世界観が魅力的

サザンアイズはもう30年も前に始まった物語なのですが、その人気は不動です。とにかく、ストーリーが凝っていて、八雲とパイが人間になるために世界各地を旅していきます。メインはインド神話や中国の文化になっていて、主にチベットやインドなどを旅しているのですが、イギリスに行ったこともありますし、あっちこっちと飛び回っていました。八雲とパイの出会い方もよかったと思います。学者として世界を歩いていた父親が託した「パイを人間にしてやってほしい」という願い。でもそれがいかに壮大な冒険につながっていたか…もうとんでもないくらいの規模になります。親父、お前のおかげで八雲はとんでもないとばっちりくらいましたよ?ベナレスを倒そうと月にまで飛んでいくという…ぶっとんでいます。やはり冒険は地球以外のところにも目を向けたがるよね。みんなの知らない未知の世界って言ったらやはり宇宙しかありませんから。

物語が進んでいく中で、序盤に登場したキャラクターたちもうまくメインストーリーに乗っかってきているし、八雲がいきなり強くなるわけではなくてちゃんと少しずつ力を自分のものにして成長していっている感じもいいですよね。臨んでウーになったわけじゃない。だけど割とすんなりと受け入れて、パイを人間にする旅を始めた八雲。それはどことなく、パイという女の子とどうにかなりたいと思っている下心ものぞかせつつ、八雲自体が人にやさしい人間であることも表現してくれています。まさかこれだけ地球巻き込んだ壮大な展開になるとは思いもしませんでしたけどね。でも展開はくどくないし、歴史ものかと思いきや難しい感じはそれほどなくて、読みやすいのがサザンアイズのいいところです。

ヒロインの二重人格の在り方が特殊

二重人格だと、どちらかの人格がメインで残りのほうはおまけみたいに扱われることが多いと思うんです。しかし、サザンアイズでは完全に独立。2人の女性と八雲のやり取りになっています。そして、そのどちらの人格からも八雲は好かれているわけで…後半には穏やかでない展開もあります。でもパイがですね、とんでもなくいいこなのです。命を大切にする、人間を大切にする、八雲をただ一人の自分にとってかけがえのない人間として大切にする。邪気のない赤子ような心です。もうね、全部許してくれます。生きていてくれさえすればいいのだと。一方の三只眼のほうも、年齢重ねてる感が出ながらも、結局は八雲という唯一無二の存在を支えにシヴァに立ち向かっていく、健気な奴ですよ。八雲にとってはどっちも大切。どちらの人格もなければならない存在でした。

ちょっと困ったところと言えば、何も言わずに八雲を置いて出ていくっていうの、多すぎだということです。一回目はね、そりゃー出ていってもいいのかもしれないなと思いましたよ。そして今度は俺が君を見つけるんだっていうつながりも納得でしたし。でもね、また後でそんな感じで八雲を置いていくんです。いや、学習しようよ、君ら一心同体なんだから、生かしておきたかったらお互い生きてなきゃだめなんだって!自分死んだらダメだってなんでわからないかな…

モテすぎる八雲

それにしても、八雲はモテすぎです。そんなにかっこよくないですよ、見た目はね。でも、パイを守るため、とにかく自分を犠牲にして戦います。もちろん不死身の体だからどうにでも体を犠牲にできるんだけどさ。第一部では不死身であることを武器に、とにかく捨て身の攻撃でどうにか敵を倒していきました。相手も八雲が不死身であることに驚いてたじろいでいるしね。しかしどうにもならないときは、結局三只眼の力に頼って助けてもらうほかありませんでした。そりゃー不死身であるということ以外に武器も何も使えないのですから仕方ありません。第二部からは、パイとの再会を夢見て訓練を重ねてきた様子がよくわかりました。そこに人間らしいやさしさ、命を顧みずに助けてしまうお人好しなところ、そしてたまに的をついている力強い言葉…そうやって妖怪・人間問わず女性をとりこにしていくのです。罪な奴です八雲は。ハーレムに憧れるヤングマガジン読者にとっても素晴らしき展開だったことでしょう。

また、ベナレスにとっても八雲は特別な存在であったと言えると思います。もちろん殺しあう関係なのですけれど、なんだかんだ、ベナレスは八雲のことを助けていた面もあると思います。ただ殺そうとしていたわけではない。八雲には素直で純粋、汚れのないところがありますよね。いろいろな人を惹きつける魅力を持った人間として描かれているのだと思います。この旅の目的は全部パイのためなんだけどね。

長編になるとやはりアクションだらけ

長編の冒険漫画といえば、アクションでしょう。サザンアイズは序盤から八雲が不死身になるので、過激なシーンもどんどん出てきます。内臓も飛び出るし、腕やら頭やら、飛ばされるのは普通に起きます。後半になってきて痛々しいなと思うのは、精神攻撃も組み合わさっていることですかね。ただ殺すというのではなくて陰険な雰囲気が漂います…様々な種族が三只眼の存在に気づき、不老不死を得ようと画策する。自分一人が勝とうとして裏切りをする。八雲の仲間の中でも、たぶらかされて八雲を裏切るような行動をとったあほな奴がいました…そのたびピンチになるけれど、やっぱり仲間は捨てられない。序盤から「ダチンコ」という言葉で友情を表現してきたように、仲間同士・あるいは敵対していた者どうしの精神的なつながりも描かれているのがサザンアイズの特徴ですね。そこもまた毎回おもしろいなと思うところです。

描写的にも、後半は痛々しさが半端ないです…不死身の八雲が弱っているときでも平気で殺しにかかってくるし、回復の遅さもまた妙に生々しく、ちょっと辛かったですね。それでも、それが人間になるということだと表現されている感じもしますね。一度ついた傷はなかなか癒えないしもしかしたら一生癒えないかもしれない。だけど、それでも生きている限りはあたたかい。人間でいていいところは、痛みがわかるからこそできる思いやりなんでしょうね。

いろいろあったけど終わり方は感動的だった

記憶喪失やら、力の喪失やら、度重なる紆余曲折を経て、やっと最後にシヴァを葬り去るところまできたパイと八雲。一番おもしろい、というか感心してしまったことといえば、最後のシヴァが倒れるときですよ。人間の心に光があると思ってそれを利用しようとしていたシヴァが、実はそこには闇しかなかったとわかったときの絶望…シュール…それだけシヴァが人間を清いものとして考えてくれていたともいえますよね。幼いときの優しい心で心には光があると信じていたのかもしれません。だけど残念ながら、人間なんて闇が8割やねん。それと闘いながら、わずかな光を見出しているのが人間で、闇を光にかえる力を持っているのが人間なんですよ。わずかな光をたくさん集めて大きくしているだけ。なんでしょうね、このリアリティ。妙に納得してしまいました。

本当に大変だった八雲とパイの旅。三只眼をめぐっての熾烈で醜い争いの数々…やっとハッピーエンドを迎えられたことは、感慨深いものがありました。そして時のたった今でも、全然古臭い感じがしないのもいいです。文明の利器をあまり盛り込んではいないので、ファンタジーがすんなり入ってくるんでしょうね。いつでも読み返したくなる名作と言えると思います。

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有名漫画家のお一人高田裕三先生の代表作の一つ「3X3アイズ」はエキゾチックな雰囲気のする作品でキャラクターの服装などから東か南アジア系の香りがする感じがいつもしています。モンスター名が異国のレジェンドなどを使用しているせいかと思われますがこの辺りは作品の独特の役作りに貢献していて絵柄としても設定としても魅力的かなと思います。サンスクリット語にからんだ名前なども出て来ているし原作者は日本以外のアジアを結構旅行されたりしたのかな、それとも全て想像で描き込んだんでしょうか。あのモンスターや服装などはかなりの参考物を見ながら研究されていた感じがするのですが。アニメ版やゲーム版も、歴代人気作品、でも近年新作でも復活最近のコミックキャラクターなどは本当にいつまでたっても何らかの形で復活してしまう、この作品もまさかの復活を遂げた1つですが今回はその事より旧作全40巻について考察した方がいいかなと思い...この感想を読む

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