動物の通して人を救うお話
鉄生のキャラがとてもよかった
不良だけれど情に熱く、大切な人を守ろうという気持ちが備わっていることが主人公のいいところです。頭が悪くたって、目の前にある命を大切にしようとできるなら、誰にだって医者とか獣医師という仕事はできるのかもしれないなと思わせてくれました。現に、大学でもAO入試とか、コミュニケーションスキルをみたり特技をみたり…勉強ができるから医師に適しているのではなく、人と関わるちからが仕事を続けていくうえで大事だと考えている大学もありますよね。もちろん、人手不足を補おうとする苦肉の策ともいえるかもしれないけれど、頭でっかちに考えるのではなくて、人の感情に寄り添う気持ちや助けようとする熱意など、根本的な部分を持つことが大切だなと教えてくれます。一番わかりやすいのが序盤の鞍智とのエピソードですね。勉強ができて、研究ができて、動物を救えないなら何の価値もない。それを痛感したあとの彼は目覚ましいものがありました。熱意と勉強力が組み合わさって、獣医師として覚醒していきましたね。どの職業においても、そうであってほしいものです。
鉄生が恋にうといのも嬉しいところでした。両刀つかいがいましたが…ギャグ要素ということで。本当に動物が好きなんだなーということと、そのために改革を起こすこともいとわない姿勢は尊敬ものです。しっかりと動物の生態や、命の重さについてフォーカスしていて、漫画大賞受賞もうなづけるなと思いました。合間に出てくるゴルゴ、マリックさん、ネーミングのおもしろさ…これもクスッと笑わせてくれるポイントになってました。
第1話の感動そのままに最後まで
はじめてこの本を手に取ったときに、やっぱり第1話が感動的で、そのまま最後まで読めてしまった感じでした。自分の特技「絶対音感」が何に使えるんだろうって悩んでいた心だけは優しい不良少年が、明確な目標が見えたときに、あとは突っ走っていくだけだった。音楽でもない、獣医師という道に。すごく夢がありますよね。どんなにダメだと言われていた人間でも、目標・希望をもらっただけでここまで強くなって一生懸命な人間になれるんですから。だから少年は大志を抱けって言われるんだなーって思うし、どんな人でも、いつでも、道は開けてほしいなと感じました。
27巻も続いているので、はじめはR.E.Dでの動物たちを救う仕事が、のちに大学改革へといくわけですが、どこにいても鉄生は鉄生でいてくれたので、今回はどんな動物のお話かなー?と楽しみにしながら読めるのが魅力ですよね。ふつうに生活しているだけじゃわからない動物たちの知られざる生態も教えてくれて、へぇーと思いながら興味深く読めますしね。動物園に行ったら注目してみようかなということから、獣医師でなければ絶対わからないような言葉まで盛りだくさんですが、なんかかっこいいんです。医師もの、刑事もの、ホストものって幾度となくドラマの主題とされてきていますよね。全部命に関わる、お金に関わる、人に関わる…黒いようで明るい・明るくあってほしい世界みたいな希望も含まれているような気がしますね。個人的な感想です。そして、長編なだけあって、絵のテイストもちょっとずつ変わっていますね。
救う側はそれが当たり前になるときがある
医療業界にいる人って、必ずしも熱意のある人とは限らないと思うんです。毎日毎日…忙しく人を治し、動物を治し、治せないこともあり、治せないことを患者・患畜のせいにしたり、自分のせいにしたくなかったり、モノに見えてきたり…だって毎日集中して続けていくってすごいストレスだと思うんです。しかも、一人一人同じ人はいないのに、“症例”としてみてしまえば同じように考えてしまう。
そんなマンネリ化しやすい環境の中で、鉄生という人物が一人いたら、全然世界が違ってくるのでしょう。R.E.Dの獣医師たちも、盟央大のメンバーも、鉄生1人がいることで、今までのしがらみにしばられずに、ただ動物を救うためにだけあればいいということに気づかされていくその爽快さ。いずれも動物を救っていくお話であるにも関わらず、そのことによって自分自身やその動物に関わる人間のほうを救っているの…そういうのがこのワイルドライフという物語で印象的なところです。知識、傾向、症例、経験的にこうなるはず、固定観念で診てしまいがちになる…日本の診療スタイルだと本当に時間がないので、いかに正確にいかに速く多くの診察ができるかというのが求められてしまいます。どんなに名医でも、名医だからこそ時間がないというか…だから冷たい人間のようにおもわれてしまったりね。常に人・動物のためにあり続ける、人間らしいものを持っている人に命を預けたいと思うものなので、そのあたりをこの漫画を読んで学んでくれないかな…と思ったりもします。
年齢が関係ないところがうれしい
鉄生は大学を卒業したばかりの研修医みたいなものなのに、その能力を認められてどんどん仕事を与えられていく。年功序列のないところがいいなーとうらやましく思います。人と自分の地位の確立のために争っていることよりも、目の前に生きている動物の命が続いていくことを誰よりも願い、そのために必要な行動をとる。迷いがなくて、かっこいいなと思うし、誰かの能力を妬ましく思うよりもそうやって役立つことだけを考えて仕事をしていきたいよなーって思いました。R.E.Dや盟央大でも、妬ましく思う人よりも人間に触れて人間味を取り戻す人が多かったので、登場人物たちも結局はいい人だなーって思います。ちょっとひねくれていただけで、目指したいものはみんな同じだったんだよなーって思いました。
年齢が関係ない…というので一番気にかかるのが、陵刀家っていったい…というところです。なんで年を全然とらないみたいな描写があるんですかね?一家ともども。整形手術?おばあさんだって100歳設定なのに女子高生なみの美しさをお持ちだし…強烈なキャラを作っておきたかったのでしょうか。他は割とまともだと思うんですよね。変わり者がいたとしても。鉄生とタッグを組むもう一人の主人公として、あらゆる変人要素をぶちこまれている気がしますね。怠け者、サディスト、男オッケー、腹黒…鉄生がすごくまともに見えてしまいます。
いつまでも続いていきそうなお話
動物を救っていくことに終わりはきっとない…だから、いつまでも続いていきそうな物語でした。どんな難題に対しても、結局は熱意ややる気、根性論でどうにかしている感もありますけど、そこにちゃんと共感して協力してくれる知識人もいたし、救うためにもっと力を付けていかなきゃいけないんだなっていうこともちゃんと伝わってくるし、いい内容だったと思います。最後までそういうところにブレがなかったので、あまりダレた感じもなかったなという印象ですね。動物が、自分を救ってくれた人…!なんてわかってくれるのやらわかりませんけど、そう想って接することのほうがいいなって。
1巻では、昔の旧友たちがいきなりスチュワーデスやら警察官やら、すごい憧れの仕事にばかりついていましたが、その辺も夢があって努力するなら何でも叶うよ!って言ってくれているような気がしますね。実際そうとは限らない場合もあるんだけど…いつまでも希望を持ち続けて仕事を誇りとして働いていけるような人が多くなるといいなーと思いました。
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