近未来SFロボットアニメを観て
細かなところまで徹底されたリアルさ
SFアニメは近未来が舞台になることが多いが、このアニメもそうである。しかし、その中でも「イヴの時間」は徹底された「日本の近未来感」が際立っている。例えば、家庭用アンドロイドに依存する「ドリ系」と呼ばれる人々や、費用がかかるのを避けるため古くなったアンドロイドを不法投棄する人々の発生、倫理委員会の設立などこのアニメには同じ近未来でも、「日本」に起こりそうな問題が多い。特にそう感じたのは、劇中のテレビのCMで突然トマトから機械の類が飛び出し、その後に一言、「ロボットが栽培したトマト、あなたは食べますか?」と尋ねられるところだ。ストーリーの他にこのような細かい技が組み込まれ、製作者たちのセンスが光る。これらの将来本当に起こる気がさせられるリアリティには引き込まれる。
「ロボット三原則」
「イヴの時間」に多出し、このアニメのテーマにもなっている「ロボット三原則」はロシアのSF作家アイザック=アシモフが提唱したものであるが、この原則の使い方もうまい。ちなみに劇中に出てくるロボット三原則を要約すると、
第一条 ロボットは人間に危害を加えてはならない。
第二条 第一条に反しない限りロボットは人間の命令に反抗してはならない。
第三条 第一条、第二条に反しない限りロボットは自己を守らなければならない。
であるが、出てくるアンドロイドはこの原則に従って生活をしている。感心させられたのは主人公リクオの友人であるマサキが発した「ロボットは自殺できない」という言葉だ。SFは存在する定義や概念をひっくり返すことが多いが、この原則をそう捉えることもできるのかとこの言葉には凄まじい深みを覚えた。
ストーリーとしての深み、面白さ
SFアニメはしっかりとしたScience Fictionとしての要素、そして単純にストーリーの面白さが求められるが、それも十分に満たしていると思う。確立したキャラクター、「イヴの時間」というアンドロイドと人間の区別をしないカフェの存在。特に、キャラクターの対比がうまい。ロボット法に疎く、いつしかサミィやカフェのアンドロイドたちに心寄せるリクオ。将来ロボット法で身を立てようとしており、アンドロイドから離れたがるマサキ。カフェの「ヒト」を見守るナギ。ロボットに感情移入するのは良いことも悪いことも無いがこのアニメに出てくるアンドロイドたちは少なくとも自我を持った「ヒト」の設定である。あくまでロボットは仕事だけをしていればいいという思想も考えさせられる。しかし最終話でマサキとテックスが誤解を解いて心を通わせるシーンは思わずほろりと来た。
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