変わったマンガです - 僕といっしょの感想

ストーリー

２～３話ぐらいの完結制ですが、本筋は通されています。
展開を楽しむというタイプではありませんが、展開が無いわけでなく、
飽きのくることは無いと思います。
全体的には気だるい雰囲気で進みます。ギャグ漫画なのですが、ギャグ部分
を除くと、とても絶望的で社会派的なニオイもあります。いきあたりばったり
なストーリのようで、主人公兄弟の成長をしっかり描いていたりします。
ギャグを前面にすると、破天荒な兄とまじめな弟のハチャメチャ家出物語なの
ですが、根幹にあるテーマとしては、複雑な家庭事情を持つ兄弟がたくましく
生きていく物語といったところでしょうか。

ギャグ

とはいえ、しっかりギャグ漫画です。3コマに1コマぐらいはギャグが出てきます。
シュールな表現のギャグが多いのですが、奇をてらった感じが無く、
単純に笑えます。ギャグというよりパロディといった方が近いのかもしれません。
この作者特有の表現で、大笑いというよりもクスッとくるギャグが多いです。

キャラクター

主人公兄弟を含めて、とても個性的なキャラクターが登場しますし、
たびたび極端にデフォルメされたキャラクターも登場します。
その対照的に平凡なキャラクターが登場し、メリハリを付けています。
デフォルメキャラクタはいわゆる人間のクズのようなタイプです。
このメリハリがとても面白い反面、落差みたいなものが少し世の中の不条理
みたいなものを表現しているように見えます。言い過ぎかもしれませんが・・・
後半はこの極端にデフォルメされたキャラクターがテーマーの話が多いです。
デフォルメされたキャラのデフォルメされた話なので、もうハチャメチャです。

絵

とても読みやすいですし、キレイです。線の多い重い感じでは無くて、
必要最低限の線で軽い絵に属するタイプだと思います。
不細工なものは不細工に、キレイなものはキレイに描いています。
それでも、この作者特有のタッチで、インパクトがあります。
漫画の技術に明るく無いのですが、誤魔化しが無い絵で上手なのでは
無いでしょうか。ただ、少々表現のバリエーションに欠けているようにも
思いますので、発展途上といったところもあるように思います。

好きなところ

主人公がプロ野球選手を目指しているというお話です。
実際は野球部にすら所属していませんので、目指しているというより妄想している
だけなのですが、本人はどこか本気です。野球少女に野球を教えてもらったり、
草野球チームに交じって試合に出てホームランを打ったり、例のごとくハチャメチャ
な話ではあるのですが、プロ野球選手が彼を見て才能を羨む場面は、本作全編通して
救いが無いストーリーなのに対して、唯一の救いどころのような気がして好きな場面
です。

感想

前作の極端に下品な表現が好きになれずに敬遠しておりましたが、気にはなっていたので、
意を決して読んでみました。極端に下品な表現は抑えられていましたし、ストーリーや
ギャグも十分に楽しめるものでした。
※十分に下品なところも残っていますが・・・
単純なギャグ漫画では無く、もの悲しかったりするところもあります。
また、ギャグやストーリーがどこか見てはいけないものを見ているような背徳感みたいな
ところがあり、ここも好みの分かれるところだと思います。
話の展開としては、真面目に考えるとツッコミどころは満載なのですが、納得性があり、
受け入れることができます。個人的にはファンタジックな映画や漫画はこのバランスが
一番大事だと思っています。説明的なところが皆無なのにこのバランスが取れているのは
この作者のすごいところと思います。
家に戻り亡くなった母の再婚相手と対決し、返り討ちに合う場面はとても衝撃的で
、心を打たれるところです。ラストはその出来事を通しても、どこか冷めた中学生
という表現で、何とも不完全燃焼な終わり方ですが、その不完全燃焼感は作者の狙った
もので、嫌悪感はありませんでした。
好きな漫画というよりも、心に残る漫画という印象です。

その他

少々差別的でコンプレックスや社会的弱者を笑いにしているようなところがあります。
引きこもりのニートであったり、変わりものが多く登場し、惜しげもなくその変わった
ところを披露して、失敗するというパターンが多いです。
また、下品なギャグや表現も多々あるので、読む人によっては嫌悪感があるかも
しれないので、注意が必要です。

まとめ

何ともとらえどころのない漫画です。ジャンルもどこに属するのか・・・
前作の卓球漫画とはまた違ったテイストです。
少々好き嫌いがあるようには思います。
おススメの漫画というのも違いますが、私はとても好きです。
どうも作者さんは社会派な作品を描きたいようで、この後の作品はギャグが
減っていき、そういった作品に力を入れているように思います。
本作はその走り出しのように見受けられ、それがまたとらえどころの無さを醸し出して
いるのかもしれません。他に似た漫画が見当たりません。