不人気時代のパリーグにスポットを当てた秀作
プロ野球好きにはたまらない作品
ストッパー毒島は1996年から1997年のプロ野球パシフィックリーグを舞台に、問題児の主人公・毒島大広とお荷物球団と言われた所属する京浜アスレチックスが優勝を目指す物語です。当時のパリーグ6球団の球団名と選手名が実名で出てきます。
野球漫画の王道といえば高校野球であり、プロ野球に焦点をあてた作品というだけでも珍しいのに、セリーグではなく、当時不人気で一般人のほとんどが選手名も知らなかったパリーグを舞台にした作品は本当に稀有です。
しかし、作者のプロ野球というよりパリーグへの愛は尋常ではないものがあり、プロ野球好きならクスっとくるような小ネタやロッテの初芝がヘビメタ好きなどのプロ野球好きでも知らないようなトリビアが作中に散りばめられております。絵が上手いので実在選手もよく特徴を捉えた絵になっててすぐに分かります。シーズン最終盤の戦いぶりはミラクルとも言われた1988年の近鉄の10.19までの戦いぶりをモデルにしていて、当時を知る者としては鳥肌が立ちました。
また、野球漫画で主人公がピッチャーの場合、ほとんどが先発を任されますが、ストッパーというのも斬新でした。先発に比べストッパーは出番が多いので、より多くの試合を描けるのでアリといえばアリかなと思いました。
魅力あふれるオリジナルキャラクターたち
先述した通りにこの作品には実在のプロ野球選手が出てて、その選手をうまくいじったり特徴を描いてるので、プロ野球好きにはたまらないのですが、主人公のまわりのオリジナルキャラクターもかなり味があって面白かったです。
元中日の宇野勝がモデルで頭のネジが一本抜けてるような風貌の火野、遊び人を装って陰で努力をしているメジャー級スーパー守備職人三条、ここぞという場面で結果を残してくれるメガネ君佐世保など味のキャラクターが一杯いますが、中でも一番好きだったのは血の滲むような努力をしながらも打者としては芽が出なかったものの、お遊びでなげたら習得できたナックルボールを磨いて投手転向して成功したウェイク国吉です。ナックルボーラーに転向した後も一度挫折してから立ち上がるのも人間味溢れて好ポイントです。
近鉄にいたオリジナルキャラクター、浪花節あふれる外国人助っ人フィッシュバーンもいい味出してました。当時の監督、佐々木を慕う様が微笑ましいです。
回収されない伏線もあるのがマイナスポイント
西武にシーズン途中から補強された助っ人外国人カイテルは毒島との勝負は描かれずに終わってしまいました。ここだけはマイナスポイントです。
ただ、それを含めても、この作品が素晴らしい作品という評価には変わりありません。
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