37分間の起承転結 - Yoshi最新作 翼の折れた天使たち 最終夜スロットの感想

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37分間の起承転結

4.04.0
映像
4.0
脚本
3.0
キャスト
4.0
音楽
3.5
演出
3.0

目次

とても流行ったYoshiさんの作品

今から10年前の作品ですが、その頃は私もまだ世間も男もそれほど知らないうぶな女の子でした。携帯小説が盛んになり始め、Yoshiさんの作品は一応なんとなく知っていたのですが、ドラマを観るまでは書籍を手にしたことはありませんでした。はっきり言ってしまいますと、流行りものという言葉が一番的を射ていると思います。私の主観では、お涙頂戴を盛りだくさんに含んで、かつ女子高生くらいの年齢層が嵌まりそうなちょっと危険な設定を盛り込んだ小説が私としてはあまり得意ではなく、なんとなく知っていて周りで流行っていても、無意識に存在を避けていたように思います。そのころ芥川龍之介と太宰治にはまっていた私にとって、目くらましのような内容にしか思えませんでした。しかし、それが可視的になり、他人が手を加えたドラマになったら案外観れてしまって、自分でも驚きました。あんなに毛嫌いしていたのに、女優さんが演じるとそれほど嫌悪するような作品でもないんだなと。Yoshiさんファンの方には申し訳ないのですが、悲しい過去を背負ってそれが影を帯びて大人になってもずるずると過去のせいと成長しない主人公が何かをきっかけにきちんと道を歩き出す。その構成がわたしとしては物足りなくてありきたりで、なぜ流行ったのかさえ理解しがたい、そんな思い出のある作品です。

スロットシーンも少なく、その必要性を感じられない

上野樹里さん演じる涼子は親に捨てられた過去を持ち、大人になってスロットで生計を立てている女性を演じています。男運もはなはだ悪く、負のオーラ全開の不幸な女性です。愛されたいという欲求が強く、それでも誰も私を愛してくれない、という設定に加えてスロットから抜け出せないという女性なんですが、そこまでのめり込んでスロットにはまってるとか、朝から晩まで狂ったようにスロット漬けという感じではないんですよね。そこはきっと定職についていない、という設定を際立たせるためにスロットにしたのだと思うのですが、とても中途半端に感じられました。プロのパチスロとしてじゃんじゃん稼いでいる方がまだ納得がいきました。他の翼の折れた天使シリーズの主人公が水商売や非合法的なお小遣いで生計を立てているので、スロットであればまだマシなのかなあとも思いましたが、それであれば煙草をむせるほど吸ってるとか、見た目が絶望的なくらい派手とか、もう少し視聴者の気持ちが引いてしまうくらい大胆な設定にしてほしかったです。それを望むのはやはりドラマという作品として形を成すのであれば、もっと視覚、聴覚的に刺激があってもいいと私は思うからです。生活のためにしかたなくやる、という姿勢が上野樹里さんの演技から見えるので、それであればスロットじゃなくてもよかったんじゃないか、と。スロットにするならとことん突き詰めてほしかったなあと。

まさかのキャスティング

阿部サダヲさんと濱田マリさんが出演されています。驚きました。このお二方が37分の単発ドラマに出ているなんて、驚きです。阿部サダヲさんは本当にいい演技をされています。今よりも灰汁の弱い演技をされてて、しかし、しっかりと阿部サダヲさんらしい役を務めていらっしゃいました。さすがです。居酒屋を切り盛りしていて、涼子とはスロット仲間のような、飲み仲間のような、彼は父親目線で涼子のことを心配しているように思えました。自分も奥さんと子どもがいたそうですが、出て行ったっきり会っていないとさらっと自分の過去を語ります。そのさりげなさが侘しさと哀愁と、厭らしさのない子どもへの愛情を一緒くたに表現しているようで、聞き逃しそうなシーンでしたが、とても印象に残っています。そして、濱田マリさんは水商売をされている風ですが、時代でしょうか、髪型も服装もだいぶバブルを引きずっている感じがありました。似合っていましたが、派手派手で、より涼子の地味さと言いますか、野暮ったさが浮き彫りになっていました。ふたりとも涼子のことを本当に心配していて、助言もして、遠くから見守っていて、助けてほしい時に力を貸してくれて、涼子はこの二人から愛情を受け取っているということがわかっていないのでしょうか。彼女は存分に甘えられる先があるのに、どうしてしょうもない男ばかりに釣られてしまうのか。

健太君に拍手

このドラマのもう一人の主演は健太君です。上手に泣きますし、上手に愛想笑いをします。男は度胸のシーンは声が大きくて子供らしさを出していましたし、身勝手な大人たちに振り回されて変に良い子になってしまう仕草も表情や仕草から醸し出していたと思います。阿部サダヲさんに可愛がられることによって少しだけ心が解けてきたかなあという無邪気さも、涼子が健太を引き取りにお店にきたときの「おかえりなさい」に込められていたようにも思います。健太君は満点です。この子がいたからこの物語は成り立っているようなものですし、むしろ彼自身のドラマとしても成立するのではないかと思います。涼子に対して抱いた微々たる共感も、健太君へは絶大な共感と持って観ることができました。母親になったという自分自身の環境の変化もあるのだと思いますが、健太君には大きな拍手を送りたいと思います。

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