怖すぎるその設定にちょっと引いてしまうが読んでしまう - アイアンナイトの感想

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アイアンナイト

3.003.00
画力
4.00
ストーリー
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キャラクター
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設定
4.00
演出
3.00
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怖すぎるその設定にちょっと引いてしまうが読んでしまう

3.03.0
画力
4.0
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
4.0
演出
3.0

目次

完全に孤立状態から始まる衝撃の始まり

数々グロいマンガがあるわけですが、このアイアンナイトはとにかく始まりが怖すぎましたね。いきなりどことなく現実でも起きてしまいそうな孤独感から始まって…辛かったです。正義のちからー!とか、奇跡の能力ー!!とかはよくあるけど、ゴブリン化っていうのがちょっとなー…悲しすぎるんですよ。いやいや、小学生でしょ?と思いながらも、それがなんか”武器を手にする戦時下の子ども”みたいでリアルな悲しさがありました。

人間がすごくすごく醜いこと、その醜さを乗り越えて、希望ある世界はつくられるということ、そういうことを教えてくれます。当の本人って自分が醜いってわからないですからね。かくいう私も、自分がこんなにわがままでどうしようもない人間だって気づけませんでしたから…

鉄平の前向きな気持ちは嬉しい

黒板に光ったみんなが書いた言葉たちで正気を保ち、自分のちからをプラスに変えて住民を守るために活動を開始する…このシーンはぐっときましたね。自分の中でこんな焼き付いて離れない記憶があるのかなーそうだったらいいなー自分だったら意思を持っていられるのかなーーと感情移入してしまいました。

毎日毎日、ゴブリンと戦って進んでいく、食べ物はその街のコンビニなどのお店から食べれそうなものを漁って手に入れる、目指すべき目的地を明確に決めて進んでいく…窮地に追い込まれたとき、楽な方向に逃げずに、自分の極限まで集中して考えて道を決めていくのはすごく好感が持てました。よくそれだけ考えて行動できますよね。こういう人間が生き残るんですよね。考えなしは淘汰されてしまう、そんな世の中を投影している気すらします。

警察官の息子っていうのは何となく嫌でした。警察官だからどうこうっていうか、警察官=正義感ではちょっとありきたりな感もありますし、正義感1つでまとめるならなんか違くないかなー?って思ってしまうんです。正義感というよりは、生きることへの欲というか、人として生きるために誰かの力になりたいという気持ちなんじゃないかなっていう考えもできる気がします。鉄平自身の前向きで強い気持ちは、もちろん正義感あふれる父親・家族の影響でしょうけどね。個人的には鉄平の頭の良さのほうが感服です。知恵絞って、理論的に。最終的には困難に前向きに取り組む・むしろ楽しんじゃっている。それくらいの勢いがあったほうが、いろいろうまくいくのかな??

ユキと言葉に考えさせられる

連載のほうでは、ユキという存在の意味とかが全然書かれてないまま、いきなり出てきてそのままいたわけです。これは残念。ウサギなんだか人間なんだか…そりゃ人間じゃないからゴブリンなんだろうなとは思いましたけど、とても愛らしい見た目だったので違う種別だったら話ごちゃごちゃだなと勝手に妄想を膨らませていました。単行本のほうでは、ユキは防衛省が作った人工のゴブリンであることがわかります。先祖返りして人間ではなくなってしまったゴブリンを殺すための兵器…古代の生物を作り出す力がある防衛省っていったい何なんでしょう…国って何やってるかわかったもんじゃないですからね。怖すぎる…

ただ、ユキの存在は、このマンガではせめてもの救いでしたね。最初から最後まで鉄平一人では無理があるし、それこそ背負った宿命が辛すぎてどうしようもないです。兵器として鉄平を殺す役割を無理矢理背負わされたけれど、結果的にはユキも鉄平を支える唯一の協力者となってくれたわけですから、その点は本当によかった。現実にもそういう人が1人くらいはいるよね…?って思いました。どんだけ現実逃避したいんでしょう…(笑)

そのユキの言葉は、人間が勝手に作り出して押し付けた宿命に対する自分の気持ちなんですよね。心にずっしりきちゃいます。

「…じゃあもう人のために戦うのやめようか。意味ないし何にもいいことないし」

「あの人たち最悪だよね。命をかけて救ってやったのにお礼もなしにあの態度。君の力でぶっ飛ばしたら?」

私なんか毎日葛藤してますよ、この言葉。ただ生きてたいという欲望が…私は強すぎます…(笑)それで、結局逃げだしたことがすごくすごーーーくいっぱいあるんですけど、そしてそのツケがいつか返ってくるんです。だから毎日毎日、自分に課せられたこと、やりたいと思うこと、やれば絶対正しいことなのに感情とか欲が邪魔してできないこととか…そういうことから逃げたくない。逃げたくないんです。でもどこかで自分に楽な方向を選んでしまいたくなる。でも、やらなきゃ、誰が状況を変えられるんだよって。それを鉄平が言ってくれてます。最後の最後まで、自分にできることをやりきったんだろうか、甘えて、がんばってできなかったんだからそれでいいって、結果をあきらめて結局何も得られない…それじゃダメなんです。鉄平ありがとう。できないことから逃げるな!できるように努力すること!そして手に入れること!

そして人からの感謝が当たり前ではないこと、それを受け入れることも、小学生にはきっとわからない部分なのに、鉄平は乗り越えちゃうんですよね…大人が読んだほうがいいんじゃないですかね?人に尽くす、でも感謝はもらって当たり前じゃない、それでも自分が何のためにあるか?って考えられる大人がこの世にいくらいるんでしょう…最近この大事さが身に染みてます。自分もちょっとでも正しいほうを選びたいわけですよ。

終わり方が残念

打ち切りになってしまったからこの終わり方なんでしょうけれど、ちょっと短すぎますね。3巻って…(泣)ラスト近づくにつれ展開早すぎて、「え?」の連続だし。いや、しかも最後の敵、人間怖すぎるから。意味わからないから!人様の迷惑にならないように…って教育を受けるけど、その押さえつけられた欲望の末路みたいなね。そして終わってからも、まだこの子たちの戦いは続いていくの…??!!悲しすぎる…明るい希望が少なすぎる…終わり方美しくても困る…未来は明るいって言ってほしかったですけど、終始人間の醜いところ描いてますから、これは戦いは終わりがないんですよね。ずっと続いていくんです。このグローバルなご時世でも宗教は戦ってるわけです。でもどこかで進化して、新しくなっていく。そう信じたいですね。ただの打ち切りだとか考えないようにしてます。

単行本で書き足されたストーリーでようやく納得というのは困る

連載中はどうにも謎だらけで、いきなりハッピーとも言えない状態で終了してしまったわけですが、単行本の中ではユキの正体だったり、翼ちゃんがなんであんな状況だったのかとかわかるんですけど、週刊連載を最初に見ていた身としては、翼ちゃんっていったい何だったんだ…?という感じでしたし、もう1巻くらい続いてせめていい感じに希望見せてくれたら嬉しかったです。その裏切りも含め、ちょっと評価は辛口な感じで。

マンガってメルヘン~♪よりリアルなのがぐっと心が揺れますよね。私もあまりにもグロいやつとか、悲しすぎる作品は、読み終わってからその日はずーーんと浸ってしまって頭が痛いときがあります。時間が経てば慣れてきますけど、たまに仕事にも支障が…(笑えない)。

とにかく。アイアンナイトはちょっと怖くて逃げたくなる内容。でも健気な生き方に共感が持てる、そんなマンガかなーと感じました。早く終わって残念だけど、次回作も期待したいところです。

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