若者ウケするネットの理想恋愛 - レインツリーの国の感想

理解が深まる映画レビューサイト

映画レビュー数 5,784件

レインツリーの国

4.004.00
映像
3.50
脚本
4.00
キャスト
5.00
音楽
3.50
演出
4.00
感想数
1
観た人
1

若者ウケするネットの理想恋愛

4.04.0
映像
3.5
脚本
4.0
キャスト
5.0
音楽
3.5
演出
4.0

目次

設定に無駄が多い作品

この作品は、難聴の障害者と健聴者との恋愛というデリケートなテーマを扱っている。物語の軸は、健聴者がいかに難聴者の求める配慮を理解するかと、難聴者が健聴者の自分に対する行動を、いいにつけ悪いにつけどう受け止めるかという点にある。そこをクローズアップするのに、このシーンや設定は必要だったのか?と思う無駄な設定が多く、せっかく演技力のある俳優を起用しているのに、もどかしいシーンが多い。

主人公伸が関西人である必要は全くないし、ひとみが会社で暴行を受けそうになるシーンや、伸が同僚女性と腕を組んで退社するシーンなどは、その後の進展に何の影響も与えず、蛇足感しかなかった。また、デート中に男性につきとばされてひとみが転ぶシーンなどは、健常者であっても人を突き飛ばすのは非常識であり、ひとみが難聴であることと突き飛ばされたことに因果関係がないのに伸が無駄に怒っているのもいまいちすっきりしない。

難聴者への配慮をケンカしながら学んでいくシーンはとてもよかったが、それ以外ではやや無理やりエピソードづくりをしている感があり、空回りしている感じを受ける。

モバイルツールを駆使した現代の恋愛

伸やひとみがパソコン、スマホ、タブレットでLINEを使用して常に連絡を取り合い、メッセージの既読未読にこだわるあたりは、現代の若者の新たな恋愛の仕方が表現されている。ネットでの恋愛はとかく非難されがちであるが、共通の趣味からこういう出会いも可能性としてはありうると、好感を持つことすらできる。歩きスマホや食べながらスマホなどの「ながらスマホ」は見る人によってはみっともないと思うかもしれないが、映画の中ではLINEを常に気にしている若者の日常が等身大で描かれている。

ただ、世代でない年配者が見ると、あまりのモバイル依存に違和感を感じるかもしれない。

電話でのすれ違いの恋を経験している世代には、どこにいても相手とやり取りできてしまう現代の恋愛は、相手のリアクションに神経質になりすぎるような、やや息苦しさを感じると思われる。

もし相手がブス(ブサイク)だったらどうなっていたのか

障害の有無にかかわらず、ネットで出会った人と会ってみたら思った感じと違ったということの方が、実際には多いのではないだろうか。この物語では出会った相手が美男美女だったので、少々の誤解も許せたろうし、見た目の印象がよかったため意気投合も早かったのではという点が否めない。相手がとんでもない見た目の印象の悪い人であったら、障害に関係なく一見で終わっていたのではないかと感じる。そういう意味では、あくまで「ネットでの出会いの理想」を追求した作品と言えよう。

あなたも感想を書いてみませんか?
レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。
会員登録して感想を書く(無料)

関連するタグ

レインツリーの国を観た人はこんな映画も観ています

レインツリーの国が好きな人におすすめの映画

ページの先頭へ