少女漫画という枠にハマらない男性でも読めるストーリー
少女漫画という枠にハマらない壮大なストーリー
「電撃デイジー」を初めて読んだ時はただの少女漫画だと思っていました。私と同じ様に思っていた方は多いと思います。まさかヤンキー校務員の黒崎(デイジー)にあんな(国家を脅かすハッカーやジャックフロスト事件)過去があったなんて思いもしませんでしたし、正直4巻まで読んだだけではあの後あんなに壮大なストーリーに発展していくとは想像もつきませんでした。4巻までだとただのヤンキー校務員黒崎に、窓ガラスを割った弁償に下僕とか言われてこき使われ、それでも何かトラブルがある度に何故か黒崎は優しく照を守ってくれたり、支えてくれて、そうしている間に照はだんだんと黒崎に惹かれていき、そして更に何かの拍子に黒崎が実は死んだ兄が照に残した携帯を使って陰から支えていてくれていたデイジーだと分かり、そこから色々あって2人はラブラブになっていって、はい終わり~てな感じだったと思います。ただそこから4巻の終わりに校舎の上からテーブルとイスが降ってきたことによってこの漫画のストーリーが一気に進んだ様に感じます。
ストーリーを動かす個性豊かなキャラクター
この漫画は各キャラクターの個性や立場がものすごく丁寧に描かれている漫画だと思います。例えば主人公の照はまだ高校生という若さやその性格故、何も考えずに行動してしまい、周りの大人達や友人達に迷惑をかけ、周りからその行動を厳しく注意されたり、見放されるようなことを言われるなんてことも多々ありました。あまり少女漫画でそういうのは描かれませんよね。各キャラクターがそれぞれの立場(大人・子供・職業等)を意識しながらストーリーが進むので、読み手がキャラクターと同じ立場に立ちやすく、感情移入しながら読み進めることが出来る漫画でした。この漫画で1番の要になるのが「黒崎の罪」。初めはただ黒崎が反抗期的な感じでハッカーをやらかしていて、更に国家を脅かすジャックフロストというソフトを作り、国家相手にどエライことをした。それを臭いが妹や仲間思いでエンジニアとしては天才的な能力を持っていた照の兄奏一郎が、癌におかされ自身に残された時間はもう少ないというのに国の組織に自身の家庭環境等を理由に黒崎のジャックフロスト解読を依頼され、解読に全力を尽くし、力尽きて死んでしまった、ということが「黒崎の罪」なのだと思っていました。しかしこれは全て「Mの遺言にまつわる組織」に仕組まれたものだったのです。「Mの遺言」とは『超演算能力』を持ち、世界をも脅かす存在になりうる『MAD MACHINE』と呼ばれていた「アキラ」を抹殺する為に仕組まれた計画。黒崎は「アントラ」という謎の人物によってそれに巻き込まれただけ。「アキラ」も出生は謎、自身の病気の事も何も知らず、研究についても何も知らされず、ただ怯え、何も知らされず、その存在を恐れた組織に消されそうになり、そんな中その「アキラ」を助けた謎の組織に「Mの遺言」の存在を知らされ、それはアキラを大事にしていた「緑川教授からのアキラへの遺言かもしれない」等と騙され、アキラは「Mの遺言」を狙う照や黒崎達を攻撃してきます。「アキラ」は初めただの悪役にしか見えませんでしたが、実は被害者だったのです。アキラと行動を共にしていた「チハル」彼女も謎の存在でした。本誌ではチハルはアキラを助けようとしていた研究者の恋人だったと描かれていたそうですが、単行本ではチハルの正体は一切不明でした。(「アキラ抹殺計画」に使われた無人島の中の建物の中にあった血まみれの写真にチハルとその研究者(恋人?)と思われる写真があっただけ)彼女はアキラに対して一体どのような感情を持っていたのでしょうか。チハルが無人島から脱出する際に照にそのことを問われますが、何も言わずに行ってしまいました。チハルはアキラに酷い態度をとることもありましたが、やはり恋人が大事にしていたアキラを見放すことは出来なかったのではないでしょうか?恋人が大事に思っていたということもあり、守ってあげたい気持ちもあるけど、恋人を死に追いやった原因でもある。また、死を選ぶか・生きるかはアキラが選択すること、といった感じだったのでしょうか?無人島にはアキラ抹殺計画の開発責任者が残した「チハル」と「アキラ」宛てと思われる日記がありました。この日記を読んでいるのはチハルであることを望むという様な表記もありましたし、その開発責任者はアキラとチハルが幸せに暮らせていることを望む、というような表記もありました。組織に自分が狙われていることに気づきながら、その日記にチハルやアキラへの想いを託し死んでいったのでしょう。
謎の人物と「Mの遺言」その後
アキラ暗殺計画(Mの遺言)阻止に向けて大人達が動く中、照と黒崎は初めて自分達の意見の食い違いに悩みます。そこから一気に事が進みますが、そんな中2人は仲直りも話し合いも出来ずに悶々とした日々を過ごします。やっと帰って来た黒崎との恋に関しての関係は進展しますが、その後、仲間だと思っていた総務省の人間に騙され、照は「アキラ暗殺計画」の舞台である無人島に誘拐されてしまいます。最終的にこいつなんだったんだ(イラッ)って感じでしたが。無人島にいた「アントラ」彼もまた謎の存在でした。「アントラ」は実名を持たず、気に入った組織の依頼しか受けない殺し屋?電撃デイジー番外編で病院にいる奏一郎をアントラが殺害しにくるシーンがありましたが、奏一郎に出会ったことによって彼の人生も狂いだします。奏一郎は殺害されずに済みましたが「アントラ」は一体何故あの場で奏一郎を殺害しなかったのか?「アントラ」は元々「アキラ殺害計画」には興味はなかったのでしょう。興味があったのは「アキラ殺害計画」を目論む人間の様?世の中には2種類の人間が存在すると言っていたアントラ。操られる側と操る側。奏一郎と出会ったことによってそれ以外の人間が「アキラ殺害」という決められた運命をどう阻止するのかを見届けたくなったのでしょうか。結局「アキラ殺害計画」はアキラを助ける為に命をかけた照や黒崎、また2人を信じて超演算能力を使い、脱出システムのパスワードを解読したアキラのお陰で阻止することが出来ました。そして脱出ルートが開き、ボートに乗り込んだ瞬間、照が振り返るとそこにはアントラが。アントラは本当の緑川教授の遺言を照に託し、無人島に残ります。そして数分後無人島は爆発。「Mの遺言計画」は無事果たされました。その後アキラには、緑川教授が残した情報により、脳に腫瘍があり、その腫瘍の位置が関係したことによって超演算能力を発揮していたことが判明。即手術を受け、無事退院しました。その後アキラは緑川秋良と名乗り、マスターの所で修行?をしつつ、照や黒崎達の仲間になりました。そしてそして少女漫画としてはやっと最後の最後で照と黒崎の2人が落ち着いてくれてほっとしました。ロリコン黒崎がいきなり照にプロポーズ的な発言をしてびっくりでしたが。とにかく色々壮大なストーリーでしたが照の女を捨てたギャグも忘れず、男性にも受け入れられやすい漫画だと思います。
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