幻と言われている遊☆戯☆王アニメの第一作
カードゲームをほとんどしない東映版遊戯王
遊戯王といえばカードゲーム漫画・アニメの印象が強い。遊戯王のアニメは現在までにDM、GXほか劇場版とシリーズが続いているが、そのどれもがカ-ドゲームが中心のストーリーである。しかし、漫画原作の序盤はカードゲーム要素はほとんど無く、学校内で起こる問題を遊戯ともう一人のボク(闇遊戯)で解決したり、当時流行した遊びをもじったコンテンツで勝負をする、といった内容が多かった。ハイパーヨーヨーで不良中学生をこらしめたり、た◯ごっちをもじったデジタルペットで敵と戦ったり、懐かしい遊びが多いので今読み返しても面白い。このような原作の序盤の流れをアニメ化したのが、東映アニメーション版の遊戯王である。DMが始まるよりも前、1998年4月~10月までのわずか半年ほどしか放送していない上に、DVD化にもならず、当時のVHSでしか販売されていない。(全27話構成)主人公・武藤遊戯の声はエヴァの碇シンジや、ダンガンロンパの苗木誠でもおなじみの緒方恵美さん。気弱だが心優しい普段の遊戯と、もう一人のボクと呼ばれる闇の遊戯の声を使い分けて演じている。特に闇遊戯のクールで少し怖い雰囲気の演技は、女声声優とは思えないほどかっこいい。ほかにも、緑川光さん、森川智之さん、ゆかなさん、塩沢兼人さん等、有名人気声優が数多く登場していることもあり、そこも魅力の一つだ。
クールに悪を粛清していく悪の主人公
漫画原作の主な流れは、ある問題が発生し、問題を起こした人物と遊戯が対決をし(ここで大体遊戯の人格が入れ替わり闇遊戯になる)、最後に粛清として闇遊戯が罰ゲームを与えるというストーリーになっている。このある問題と、それにともなう罰ゲームが子供向け漫画にしては結構重いもので、ハイパーヨーヨー回(第9話)では遊戯の友人である城之内が、不良グループに町外れの倉庫で拘束され、身動き取れない状態でボコボコにされているし、罰ゲームでは闇遊戯がトタン屋根に穴を開けて、結果不良を下に突き落としている。インチキ占いの回(13話)ではクロロホルムで生徒を眠らせる描写があるし、罰ゲームもクロロホルムで仕返し。人形の館でカードバトル回(第8話)では、人形の館に置いてる人形がかなり不気味に描かれている。罰ゲームは無かったが、敵の老紳士は始終女の子の人形を抱えてその子に話しかけているし、バトルに負けた後は傘もささずに雨の中去っていくシーンがあり、ゲームには勝ったけどどこか苦々しい感じが残る。遊戯(闇遊戯)は熱血な主人公と言うよりは、クールに敵を叩きのめすダークヒーローのような印象が強い。実際、闇遊戯はいつも不敵な笑顔で冷静沈着に敵を葬っているので、一見ラスボスのような禍々しさがある。しかも、罰ゲームを与えるときに額に浮かぶ第三の目(?)が光るのでますます黒魔法の使えるラスボスのようである。ちなみに、罰ゲームを与える時の闇遊戯のキメ台詞は「闇の扉が開かれた」。緒方さんの闇遊戯のかっこよさが存分に発揮される一言だ。
劇場版でようやく王道カードバトルアニメの形へ
アニメの中盤までは1話完結ものが多かったが、アニメ後半からは原作に沿ったストーリー重視のものになっていく。最終章は転校生・獏良編。個人的にはとても好きだったカプモンバトル編で、卓上ゲーム(TRPG)形式だった。駒となるモンスターのイメージ同士が頭上でバトルする描写は、今のカードバトルにおけるソリットビジョンに近いものがある。しかし、カード販促として(?)途中からカードゲームの要素が多くなったとはいえ、アニメではそこまでカードに深く触れることはなかった。アニメが終了してから数ヶ月後の1999年3月、劇場版「遊☆戯☆王」が制作されたが、ここでようやく王道カードバトルが見られることになる。ブラック・マジシャンを使う遊戯とブルーアイズホワイトドラゴンを使う海馬のバトルは、後々のテレビ東京系列のアニメ版遊戯王へつながるものがある。キャラデザインも、東映版は丸みがあったり、海馬の髪の毛の色が原作と違ったり(まさかの緑色)していたが、劇場版ではシャープにキリっとした線で描かれて、より原作に近い絵柄になっている。(ちなみに海馬の髪の毛の色も原作通りの茶色になっている)30分とかなり短い映画だが、ストーリーの破綻もなく、バトルシーンの迫力も展開も納得のいく30分に仕上がっている。映画も無論VHSの販売しかされていないので、入手も困難な上、見るのにもビデオデッキを用意しないといけない大変さがあるが、アニメ・映画共に見て損はない作品である。(わざわざ遊戯王を見るためにビデオデッキを買い揃えた友人もいる)テレビ東京系列の遊戯王シリーズもいくつか見てきたが、それとはまた違った面白さがある、まさに幻の作品と言えるものだ。
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