リアリティのなさが欠陥
リアリティが足りない
ストーリーはルワンダでのフツ族とツチ族の民族紛争にあります。安全エリアであるはずのホテル・ルワンダの支配人と家族、そして運び込まれる難民たちの悲喜こもごもが描かれています。迫り来る虐殺の恐怖に怯えながら、支配人はあらゆる手段をつくして、家族を含めた人々を守るというのが作品の基本コンセプトになっています。
が、リアリティが足りません。なぜか、比較対象として浮かんだ傑作映画「ミュンヘン」。これと比べると圧倒的にリアリティが足りない。なぜだろう、といろいろと考えてみたあげく、俳優のチョイスがまちがっていることでしょう。これは本当に致命的です。
俳優陣の選択ミス
こんな映画で、見ているだけで安心させてくれるような俳優を選んではだめです。見てるだけで、不安になるような俳優を選ばねばなりません。なさけない、切れ味がない、もどかしい、弱い、いかにもへたれで、すぐにでも死にそうで、抵抗できなさそうで、言いたいことも言い返せなさそうで、世間に平気で甘んじる道を生きる選択をしそうな俳優陣で埋め尽くすべきなのです。
それから、描かれるシーンがあまりにも想定内です。もっと、私たち、遠く離れた人々が、安全にこうした恐怖と無縁に暮らす人々が知らないような情報提供が必要です。「うそ!」と思うようなシーンがいっさいなく、逆に予定調和で終わるような安心感さえ、見受けられます。ホテル・ルワンダの中と外で、天国と地獄のような絵巻を描くべきなのです。
「コメディ?」と思わせる俳優に(ニック・ノルティのへたうまな演技(わざとだと思う)は笑えるぞ)、臨場感のないシーンの背景がただよい、全編、スタジオで作った映画のような気さえします。ということは、小・中学生でも簡単に作れるレベルの映画なのですよ。
想定の範囲内の内容
感動シーンさえない。それこそ、素人でも、もっとちょっとした感動シーンが作れるはずですよ。例えば、支配人はホテル・ルワンダの客人を守るために、ホテル外の人との接触を完全に、厳格に禁ずるなど(たとえ家族でも)のストーリー設定も可能ですし、ホテルのスタッフが、自分以上に客を守るなら、どれほど、お客以外の人に冷たく接し、排除しなければいけないかという描き方もあったと思うのです。この映画でみられる俳優たちの行動はみんな、いわば生ぬるい気がします。
というわけで、感動もなく、驚きもなく、新しい発見もないし、意義のない映画でした。
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