ニールサイモンものでは万人向けでおもしろい
ありがちな展開と静かな余韻
シナリオを追っていくとですね、同棲していた俳優の男に逃げられた母娘が、その男からアパートを売られたという友人の男と同居することになるという奇妙な設定で始まりますね。ありそうな、なさそうな。ただ、おだやかなやさしい雰囲気で無理のなさを醸し出しているのはリチャード・ドレイファスのも持つ雰囲気そのものです(悪い人じゃない、と安心感が持てる役者)。
それで、この男もまた俳優で、奇妙な共同生活が始まって、俳優が興業に失敗し、女もダンサーとしての職を失うと言ったなかで、(お約束通り)二人は結ばれます。落ち込んだりすると、人と人とが結びつくのは容易になるという典型のパターンを利用します。考えてみれば非常に安易ですが。(同様の安易なくっつきパターンとしては、二人で(いやいやでも)試練を乗り越えて、愛が芽生えるというものがありますね。アクションとかサスペンスにありがちです)
ストーリーは、男に映画出演依頼の話があり、男はこのアパートを去ることになるという展開へ。この作品の根底にある女性の「捨てられる」という感覚が、また女性に訪れます。かわいそうなことですが。そして、女のもとには、男が大事にしてあるギターが残されるという余韻で映画は幕を閉じます。
大笑いするシーンも随所にある
実は、大笑いするシーンが何カ所もあり(ドイレファスがおかまの役をするシーンや衣服掛けをずり落とししまうシーンなど)、適度にほのぼのともできました。実は、ニール・サイモンの脚本物はあまり好きではなかった。どこか、小さくまとまりすぎていて、まあ、舞台を意識しているからでしょうが、台詞回しも人工的で、「俳優に酔わせる」ことが主眼にあって、それに酔うことができる観客向けの映画が多いというのが個人的な見解です。
エンターテイメント映画に仕上がってる
それでも今回はエンターテイメント感が十分にあったと思います。個人的にはニール・サイモンの映画で最もできがいいと思います。映像は今見ると、さすがに古いのですが、特にリチャード・ドレイファスの演技が光ります。(この人はいわゆる、演技派で、コメディが似合い、ともするとやりすぎる、と言われるタイプなのだろうかなあとは思いますが)
ストーリーの内容的には上述のように創造的でもなく大したことないのですが、展開は結構スピーディで、退屈せずにすんだ要因でしょうか。マーシャ・メイスンとその娘も適役でした。
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