妖精の国での冒険のはじまり
おじいさんが描いていた妖精の世界は本当だった
大好きなおじいさんが描いていた妖精の世界は、本当に存在していました。おじいさんが妖精の国を描いていたのは、自分のために人間の世界で暮らすことになったおばあさんに対して、寂しくならないようにとの心遣いだったのかもしれません。それらの絵にはおばあさんに対する愛情と、おばあさんの妖精の国に対する愛情がたくさん込められていたので、まるで生きているかのような輝きを映し出していたのでしょう。おじいさんはおばあさんの誕生日に「転ばぬ先の杖」になればと、妖精の国の絵を贈っています。この絵は亡くなってから先もおばあさんのことを心配し、50年に1度魔法をかけなおすために「妖精の国に行くことのできる扉」としての役割を持っていました。おじいさんはとっても心配性で用心に用心を重ねるような人でしたが、おばあさんのために残したものは「愛情」という名の一生に一度の魔法だったのかもしれません。
妖精の世界だけでなく魔法の世界は誰もが一度は憧れを持った世界ではないでしょうか。魔法が使えたら、自分の先祖のなかに特別な力を持っている人がいたら、そしてその力が自分にもあったら、なんてそんな夢のような物語が現実になったジェシーに、共感を覚え自然と物語のなかに引き込まれてしまうのでしょう。
女王の座につきたいと一番ねがっていたベラ
女王の座に一番つきたいとねがっていたのは、ジェシカとヘレナのいとこであるベラですが、現時点で女王の代わりをつとめているヘレナに娘がいるため、ベラに王位がまわってくることはないでしょう。どの物語でも共通しているのが、王位を一番狙っているのが王位に届きそうで届かない位置にいる者ではないでしょうか?確実に届くものは王位にあまり興味を示さず、全く手に届かない者にとっては他人事としてこちらも王位には興味がありません。手に届かないものにとっては自分が王になれるかなれないかではなく、興味の対象は誰が王になるかということでしょう。王の政治の采配によって、自分たちの暮らしがよくなるか悪くなるかがかかっているのですから。
しかしベラの王位に対する執着は、権力に対する執着とはまた少しことなり、自分を追放した妖精の国に対する復讐心からくるもののようです。もちろん扉の外の世界の魔物を使って、妖精の国の住人たちを自分の思い通り支配したいという思いもあるのでしょうが、それも復讐の一貫であることにはまちがいないでしょう。王位継承から外れてしまっているとはいえ、継承できる血筋だけあって力を持っていたり、統率する力を持っていたりします。しかもなにもしなくても王位が手にはいるものに対し、この立場の者は少なからず何らかの努力をしなければ王位は手に入りません。そういったことを考えると、正しく力を発揮できれば優秀な王となりうる力が一番あるといっても過言ではないのかもしれません。
妖精の国との交流の始まり
おばあさんがいつも歌っていた歌が、妖精の国に魔法をかけなおす言葉となっていました。そのためおばあさんが魔法の言葉を忘れてしまっていたところを、ジェシーが手助けして歌い無事魔法をかけなおすことができました。魔法の言葉をジェシーはおばあさんから受け継いでいたことになるため、次の妖精の女王はジェシーでは?という思いはありますが、そこはやはり人間の子どもというためか次の女王はヘレナの娘でした。ジェシーにはこれまでの人間としての生活があり、ジェシーのお母さんはおばあさんと自分たちが住んでいる町で暮らそうと言っていたことからも、妖精だったことは知らないでしょう。そんなジェシーが突然妖精の女王になると言って妖精の国に行ってしまっては大変です。それらのことを考慮し、おばあさんたちと同じように人間の世界で生活することを優先したのかもしれません。
妖精の女王から金のブレスレットをもらったジェシーは、望み通りおばあさんの家で暮らすこととなり、行きたいときに妖精の国へも行くことができるようになります。ジェシーのお母さんはおばあさんと一緒に町で暮らすことを望んでいたようですが、おばあさんの家がなくなり、「ひみつの庭」に行くことができなくなることを一番心配していたジェシーにとってはとっても喜ばしい出来事となったでしょう。まるでそうなることが当然かのように、お母さんが一番心配していた仕事先まですぐに決まってしまいます。
ここまで順調だと、おばあさんが自分と同じジェシカという名前をもったジェシーに、妖精の国との交流を伝えたくて魔法で仕組んだのではないかと思ってしまいます。それとも、ジェシーにたくさん遊びに来てほしいと願っている妖精たちの仕業なのかもしれません。どちらにしても、おばあさんの妖精の血を濃く引き継いでいるのはジェシーで、妖精の国に行きたいという思いと来てほしいという妖精の思いが引き起こした魔法かもしれません。
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