漫画はこうであってほしい、という願い - バクマン。の感想

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バクマン。

4.104.10
画力
4.10
ストーリー
4.20
キャラクター
4.00
設定
4.10
演出
4.20
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漫画はこうであってほしい、という願い

4.04.0
画力
3.5
ストーリー
4.0
キャラクター
4.0
設定
3.5
演出
4.0

目次

こんなに業界の裏を描いたマンガがあるか?

もう20年も前だが、私は漫画家になろうとしていたことがある。一生懸命原稿を書き、少年誌編集部に持ち込みしていた。講談社、小学館、徳間書店、そしてもちろん集英社にも行った。

対応する編集者はどの人も親切で、マンガを愛しており、マンガを愛する我々を愛してくれた。「俺たちは面白いモノを世に送り出したいんだ!」という熱意をひしひしと感じた。

だがしかし、結局デビューはかなわず、月例賞の『入選』と呼ばれる奨励枠で現金2万円と特性原稿用紙ゲットが限界だった。今にして思えば、あの熱い編集者の方々の思いをもう少し汲み取れていればより上に行けたのではなかろうか、とも思う。むろん才能もなかったのだろうが、ぼんやりと「好き」という感情のみがあり、「なんとしても漫画家になってやる!」という意思が絶対的に不足していたのだ、と今にして思う。

この漫画はそのような意思を強く持ったキャラクター達が数多く出る。彼らは成功に向けての道を必死に探す。絵がうまい、話が面白い、は当たり前だが、どう見せるか、何が世に受け入れられるのか、自分たちには何が足りないのか、を常に問い続ける。

その中で主人公2人がたどり着く一つの道が、ダラダラ連載を続けるのではなく、無駄な話や無駄な回が無い、一直線に結末にたどり着く漫画。

人気があれば薄いネタを無理にでも続けて、連載を伸ばそうとする傾向が強い時代があった。「商業誌なので利益を出すのは当たり前」なのだが、果たしてそうなのか?

話が長くなれば多くの弊害が出る。

まず端的に言って話が面白くなくなる。当然書いているのは人間なので、長く引き伸ばして書いていればそのマンガに飽きるのだ。

本作のキャラクターたちもそのような状況にもがき苦しむ場面もある。

更に長く続けすぎることでサラリーマン化しイメージも定着しすぎるので次の作品を生み出すことが難しくなる。無理な連載延長はその作品自体と作家のやる気と才能をつぶすと私は断言する。

一時期その悪しき流れの本流であった少年ジャンプが、「無駄な部分をなくし、きっちり終わる名作を書きたい」と語る主人公を生み出す事の勇気。原作の大場つぐみもすごいが、この時の少年ジャンプ編集部に敬意を送りたい。 

こんなにテーマを貫いたマンガって他にあるか?

漫画家を目指す者たちに、多くの編集者が「テーマの一貫性」を語る。テーマとはそのマンガの背骨だ。ところが実際に連載しているマンガはどうだろう。ファンタジー、あるいはギャグマンガとして始まったのにいつの間にかバトル漫画になっている、というのはよく見る光景だ。

ただ「強いってなんだ?」というシンプルな疑問を語るのに何十年もかけているボクシングマンガがある。読んでいる方はお願いだからそろそろきっちりケリをつけて終わってくれ、と思う。しかし終わらない。まだ金になるからだ。主人公の明朗快活さがウリのマンガで無理に連載を伸ばし、主人公の心の闇などを書いたばかりに名作になり切れなかった妖怪バトル漫画もある。読者も馬鹿ではないので、失速が見えた途端、おお売れしていたその作品は古本屋の店頭を賑わすことになる。

何故、デビュー前には「テーマの一貫性」があれほど求められるのに、連載開始するとそれがぶれるのか?簡単な話だ。テーマより利益が優先されるためだ。メインテーマが「金儲け」になる、と言い換えてもいいだろう。「大人の事情」とも言うだろう。

それは作品を捨てることである。それなのにその愚行は商業誌のあらゆるところで行われている。誰もが知る超メジャー作品「ドラゴンボール」もその一つである。今や神とあがめられる手塚治虫などですら、「どろろ」で妖怪+時代劇ものとして始めたが、人気が出ず宝探しもの変更、その後再度妖怪バトルものに戻るという2度の方向転換をしている。それが故にキャラクターの知名度が高いわりに「どろろ」が名作と言われることはあまりない。

最初から「金のために漫画を描く」と言う人間にとってはそれもありなのだろうが、「面白い漫画を描きたい」と望む者にとって、それは妥協であり堕落である。

連載期間を通してテーマを貫く、と言うことは、ある意味連載第一回と最終回がどのようにつながっているか、と置き換えてもいいと思う。本作の一貫性はすごい。初回で漫画家を目指し、それが叶ったら結婚しようとヒロインに約束する主人公。その約束に数年にわたってこだわり続け、最終回までにジャンプ誌上で最高の人気作家となり結婚の夢も叶える。途中にいろいろなエピソードはあるが、全てはそこにたどり着くための伏線である。 

こんなに「マンガのあるべき姿」を説いたマンガが他にあるか?

原作者大場つぐみはこの作品の前に書いた「デスノート」を悔いているのだと思う。「デスノート」はアイデアの秀逸さとスリリングでスピーディな展開が高評価を得て、たちまち人気作品となるが、明らかにLの死後を描いた第二部では失速している。第一部では2、3話単位で惜しげもなく連発されたトリックや心理戦は第二部では影を潜め、少年ジャンプお約束の少ないネタをたたいて伸ばす金箔職人のごとき展開に陥る。

いまだに人気が高い作品だが、最高に盛り上がったところで終われなかった不遇な作品でもある。本作で大場つぐみは自分自身がその過ちをを繰り返さなかっただけでなく、後に続く漫画家たちに「商業性の奴隷になるな」という金言を残したのだ。これはマンガのみでなくあらゆる仕事、あらゆる人生に言えることだ。「金」「名誉」に負けてやりたいことを見失ってはならない。必要以上に空気を読むな。正しいと思う道を行け。それこそが本作を通して作者が伝えたかったことかもしれない。

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他のレビュアーの感想・評価

バクマン。

小畑健さんの作画がなんといっても素晴らしい。ヒロインの亜豆はもちろん見吉、岩瀬、青木さんなども可愛い。男のキャラはサイコー、シュージンは中の上くらいの顔立ちをしてるし、ライバルの新妻エイジやマンガ家仲間の平丸さん、福田さんなどは特徴的なキャラになっているが顔じゃなく性格で個性が出ていていい!個人的に一番かっこいいと思う七峰透は逆に過ちを犯す方向になってしまうのも、面白い。ストーリーの節々で出てくるものが実際にあるものだったり、編集部の中のことを細かく描いたり、アンケートの細かい分析などの裏側の事情も描かれていることが、リアルに感じることが出来るマンガになっている大きな要因だと思う。同じ名前のキャラは作品では編集部の服部だけのようになってますが実は、サイコーシュージンのアシスタントをすることになる折原くんと同じ名字の折原というタンクトップを連載したことのあるマンガ家が連載ネームを提出する...この感想を読む

4.54.5
  • seagseag
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