これが最後の西部劇だ(いろんな意味で) - ミスター・ノーボディの感想

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ミスター・ノーボディ

4.504.50
映像
4.50
脚本
4.50
キャスト
5.00
音楽
4.50
演出
4.50
感想数
1
観た人
1

これが最後の西部劇だ(いろんな意味で)

4.54.5
映像
4.5
脚本
4.5
キャスト
5.0
音楽
4.5
演出
4.5

目次

これが、(マカロニウェスタンとして)最後の西部劇だ

ハワードホークスやジョンフォードなどの一流監督がジョンウェインみたいな一流スターを使ってハリウッドで撮影するのが西部劇なら、イタリアで二流どころの監督がぱっとしない俳優を使って撮影するのがマカロニウェスタンです。(異論は認める)だからどうしても、英雄が復讐鬼だったり、棺桶引きずってみたり、悪党だったり、はては敵役をはでに蜂の巣にしたりという奇をてらった作品が多くなります。(ここらへんは、あまり異論がないんじゃないかな)でも、おかげで世に出られた才能も広がった表現もあるのだから、いいじゃないですか。ところが、それだけ頑張ったアメリカ建国の神話も、あまり続けば見る方が飽きる。人間が始めたことは、どこかでおわらなきゃいけない。そう、これが終わりなのです。これが、最後のマカロニウェスタンなのです。(異論は――どうだろう)いや、ほんとにこれ以降ぱたっと作られなくなったから。

これが、(ヘンリーフォンダの)最後の西部劇だ

ヘンリーフォンダは一流のハリウッド俳優です。(異論はないはずだ)いやもう、「怒りの葡萄」だの「荒野の決闘」だの「十二人の怒れる男」だの「ミスタァロバーツ」だの、もうこれ以上はないんじゃないかと思えるほどの、仕事ぶり。本来、邪道をいくのが王道のマカロニウェスタンに出るお人じゃないのです。それくらい、王道の西部劇も商売的に細くなっていたのかな。だから、これは西部劇スターでもあるヘンリーフォンダへのレクイエムでもあったのではないか、なんて思ったりする。なにせ、劇中の彼も年寄りの役だし。もう、休ませてあげようよ――。いや、ホントに彼にとっての最後の西部劇になっちゃうんですけどね。

これが、(老保安官ジャック・ボーレガード)最後の西部劇だ

これは、年を取って引退する保安官ジャック・ボーレガードが引退するまでのお話。でも、そう簡単じゃない。彼には正体不明の若造ノーボディ(名無しってところ?)がつきまとい、おまえは最後にあの西部最大の大悪党集団ワイルドバンチ(西部劇におけるショッカーみたいなものですね。異論は多分無いだろう)を華々しくかたづけて、最後におれ(ノーボディ)に倒されなきゃならないんだ、なんてほざく。いや、まってくれ。おれは正義なんか興味ないし、ほんとは小汚い手で手に入れた金で余生をのんびり過ごしたいんだ――。なんてジャックの戯言なんかに耳など貸さず、勝手に喧嘩を売ってきて、勝手に舞台を作って、ほらおまえがやれよと突き出す。いやあ、迷惑なやつ。ところが、こいつがまるで冗談みたいに上手くいく。最後にはジャックも、こいつは実は天使なんじゃないかと思いはじめる。ところがこの性悪天使は、さあ決闘をしよう、おまえはおれに倒されて、西部一の名前をおれに譲るんだって、決闘の舞台をつくってしまう。まあ、迷惑で押しつけがましい天使の、老保安官に対してのレクイエムでもあったりするのです。

さて、この映画はなにを葬ったのか?

このあたりから、西部劇もリアリティを求められるようになります。それは、ジョンウェインですら例外じゃありません。そんな七面倒くさい世界に、どうしてマカロニウェスタンが生きていけましょう? だから、です。本家の西部劇よりも先に、かつてあった西部劇というジャンルに幕引きをした。そんな映画じゃないかな、そう思うのです。(さあ、異論をどうぞ)

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