ファンタジーな科学
造りこまれた世界観
この作品は全3巻という短い作品でありながら、世界観が緻密に作りこまれています。
部品を一つ一つ書き込まれた精密機械の数々やアクロバティックな闘争シーンなど、ファンタジーというには科学的過ぎ、ジブリの「ラピュタ」を少し思い起こさせる世界観です。
作品中には独特の空気が流れていて読み進めるごとに物語に引き込まれていきます。
腕利き機械工の少女ミロ
主人公のミロは上空から滝が流れ落ちる深い岸壁に周囲を囲まれた小さい村で暮らしていました。
この村には機械じかけのものが沢山あり、その機械に支えられながら村人は暮らしています。ミロは若い女の子にも関わらずその修理やメンテナンスを請け負っており腕も確かです。村では重宝がられて、皆に慕われているようでした。
この村は非常に閉鎖的で村から出て外の世界へ行くことは禁忌とされています。元気はつらつな明るい女の子であるミロにはこの村は窮屈なようだったので、ストーリー序盤で自ら機械を操り村を飛び出すミロの姿はとても伸び伸びしていて気持ちのいいシーンでした。
ミロは常識に囚われない発想力があり機転がきく少女なので、持ち前の実力を発揮し次々と襲いかかる困難を乗り越えていきます。私には絶対思いつかないような方法で危険から脱出する様子がとても面白いかったです。
ミロの頭の中はどうなっているんだろうか?何度もこの疑問が浮かんできます。
突風のような物語
この作品はとても展開が早くて飽きることなく一気に読めるところが私は気に入っています。
ミロ以外の登場人物も魅力的なキャラクターが沢山いて、特にホーキン博士は悪賢いのにどこか抜けている憎めない人物です。
ミロとホーキン博士と助手のガリレーの逃走シーンは特に面白くて、漫画という静止画を見ているはずなのにアニメのワンシーンを見ているかのような錯覚を起こす程にスピーディーで動きがある描写です。私はディズニー映画「ピーターパン」のフック船長がワニから必死に逃げるシーンを思い出しました。
この作品にはこういうシーンがよく出てきて、突風のようにどんどん進んでいくミロの冒険をよく表現できていると思います。
もっと読みたい!と思わせてくれる作品だからこそ残念に思うのは、登場人物が育ってきてこれから物語がもっと深くなっていくであろうところで打ち切りのため終わってしまっている点です。とはいえ全3巻という短さでありながら、よく纏められた物語だと思います。
これからのミロの人生はどうなっていくのだろう?この世界はどういう方向へいくのだろう?気になる点はたくさんあります。続編を読むことは叶わなさそうなので、今後のミロの活躍は脳内妄想で楽しみます。
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