駆け抜けろ!女海賊『黄金のサーラ』
誇り高き女海賊,サラディナーサ
麦わら帽子もかぶっていなけりゃ,腕も伸びない。しかし,潮風にたなびく長い黄金の髪を見ただけで,どんな海賊も『回れ右』をする美しき姫提督・サラディナーサ・デ・フロンテーラ。彼女を得たものは『7つの海の支配者』になれるという。この設定に,まず惹かれます。彼女は剣の腕も確かながら『誰も発想できない海戦術』を持つ,天才なのだから。しかもスペイン国王フェリペ2世一番のお気に入りで、フロンテーラ公爵家の嫡子!。彼女を得たものは海ばかり大スペインまで手に入ってしまうと言う『お得物件』だ。
手に入れたいけど,それは無理!
騎士道花開く中世なのに,女一人口説き落とせないのはなぜか?。とにかくサーラの出自がすごすぎて、普通の騎士には高嶺の花。ましてや,自分より強い女を 妻にしたいか?。サーラの父親は1000年続く海賊公爵レオン・デ・フロンテーラ。母親は神聖ローマ帝国の名を継げる名門ハプスブルグ家のドイツ王家の姫君。そのフロンテーラ一族の嫡子にして名将たるサーラを口説ける男は数少ない。唯一できたのは,王弟アウストリア公ドン・ファンのみ。しかし彼の初恋の人は,サーラの母親。母親の面影を自分に求める男と婚約したサーラは『大物』だ。
彼女に釣り合うために,男を磨く男達
サラディナーサを愛した男達は,彼女に見合う自分になる為に『男』を磨きます。その姿が可愛くて,切なくて。ドン・ファンは命をも捨てます。男達がサーラに求めたものは,『自分のもの』になることよりも『自由に,さらに自由に』だったから。その気持ちに答えるべく,サーラは大作戦を敢行します。女性がサラディナーサに憧れたのは、男達に憧れる美少女だっただけではなく,有言実行の命知らずの海賊だったからかもしれません。たった9巻でここまで華やかな海賊を描ききったのは,見事の一言です。
夢とロマンを
海賊行為は今なら犯罪行為です。ですが,父を殺され婚約者まで殺されたサラディナーサの怒りは,察してあまりあります。スペイン船を襲い,金銀財宝や香辛料を略奪し,スペイン国庫に財政負担を掛けて威圧する。サーラの行為は当時最高の刑罰だったでしょう。もしかしたらフェリペ2世の子供かもしれないと噂されていたサーラはきっぱりとその噂を切り捨て,父親レオンの復讐に燃えました。一族も一糸乱れぬ団結力で,サーラの力となりました。サラディナーサの素晴らしさは,こうした『影の主人公達』にもあると思います。
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