緻密な麻雀、爆牌という問題集 - ノーマーク爆牌党の感想

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ノーマーク爆牌党

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緻密な麻雀、爆牌という問題集

5.05.0
画力
3.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
設定
4.5
演出
4.0

目次

緻密な麻雀という芸術品

この作品ほど闘牌がよく練られているものはない、というのは麻雀漫画ファンの多くの人の思うところだと思う。片山まさゆきの雀力と、協力のバビィの後ろ添えあって、4人の打牌が噛み合って影響し合って一つのパズルになるという、初心者には理解できない厚さがそこにはあった。

多面張のお勉強

この漫画にはメンチンもよく出てくるし、変則も含めて多面張が多く出てくる。爆岡を始め強者たちは難しい複合系を物ともせず、正確な一打を繰り広げる。これは2-5-8・3・4待ちか、と漫画で表された牌姿を読み取ってみせる快感は、楽しんで麻雀が強くなれる格好の教材だと言える。

爆牌という択一問題

僕は、麻雀には正着というものがあると信じている側の人間だが、この漫画においては爆岡は人の手牌構成まである程度読んでしまうので、見えるものだけで判断するのではありえないような選択をして、結果相手の余り牌を狙い撃ちする。まずこの「選択」を理解するのに、テンパイ取りが何パターンあるか、漫画内での解説を読みながらついていけないと、この作品を読んだとはいえないことになる。爆岡ならではの一打。作内で芸術品と呼ばれる打ち筋。

爆牌への対処、という一巡

余り牌を狙い撃つ、という正体のバレる前、バレた後の爆牌への対応は様々だ。自分が狙われたんじゃないかもしれない。そういう可能性も考える必要がある。かく言う僕も、片山まさゆきオールスターゲーム「麻雀やろうぜ1,2」で爆牌を打たれて、打たれる側を疑似体験したことがある。あれは楽しい体験だった。結果として僕は狙われていなかったのだが、狙われてしまうと余剰牌が打てなくなってしまう。爆牌を打つ。爆牌を打たれる。この対立関係が何度も繰り返し登場し、飽きずに色んなパターンが出て来て楽しめる。

主役も脇役も個性派揃い

爆牌の餌食になるのは鉄壁、茶柱、八崎、大介、といった「いつメン」であり、それプラスアルファだが、5人で対戦する達人戦に5者5様の個性が揃ったことは、プロ作家のキャラメイキングの賜物である。もちろん性格だけでなく、打ち筋も個性を出させ、なおかつ4人の打牌が同時に進行しないといけない。この打牌の書き分けというやつにおいて、片ちんは非常に高レベルである。「いつメン」以外のキャラも、大学生の頃、絵柄にも関わらず萌えた記憶のある宝燈美や、稲瀬、鬼押出など、個性では一歩及ばずとも、脇役として十分なキャラが揃っている。

勝ったら天狗、負けたらイライラ

麻雀を繰り広げている間の面々は、打牌に集中していて静かである。もちろん熱い闘志を秘めながら。だけど、感情的な振る舞いをするきらいもあり、増長する爆岡、負けて消える爆岡、うまくいったら自信過剰になる鉄壁、試合中に思考停止になる鉄壁、役満直撃でトイレに籠る鉄壁、ふてくされる茶柱や八崎、そして極上の独りよがりと呼ばれる、天狗の権化大介、と、彼らの感情表現によってこの漫画は実にバラエティ豊かになっている。

成長する鉄壁、ライバルの消失という終わらせ方

鉄壁ははじめ、自分の打ち方に哲学を持ち自信を持っていた。爆守備と名付けられるその打ち方は、要は守りの麻雀だが、なかなかどうして味わい深い。そこへ道場破りのように訪れた爆岡との出会いで、二人の運命は変わった。爆岡がタイトルを取り、取り続け、爆岡は鉄壁の最大最強のライバルとなって立ちはだかった。そこで直接対決と度重なる敗北の中、トライアンドエラーを繰り返し、色の支配という妙なものも身につけ、一度見失いかけた爆守備の哲学に立ち返りながら、ついに爆牌のバイオリズムを解き明かしてライバル爆岡を破る。爆岡は何も言わない。麻雀界から消え、その先が描かれることもない。ライバルという漫画キャラの有り様は色々だが、爆岡弾十郎は敗れて去り、物語の主役のように漫画を支え続けた、名ライバルだった。

読むと麻雀が強くなれる!

僕の実体験である。大学の頃、キャンパスからいくらか離れた古本屋で並んでいるのを手に取り、雀力の低い僕はその熱い勝負に酔いしれた。当然のように片ちんにハマり、ゲームで覚えて実戦がほぼなかった僕は、漫画を通して牌の理を学んだのだった。今では天鳳やDORA麻雀で打ち、平均くらいの打ち手になっている。もっと強くなろうと思うと、雀荘に入り浸るか、指南書を読むか、プロになるか、というところか。僕のような中級者にとって、師匠は片山まさゆきだった。麻雀という競技の世界で、大きなウェイトを占める漫画というものの存在を、向上心と愉楽の意味で、本当にありがたいと思っている。

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