苦しい時こそニヤリと笑え
とにかく全ツッパ!
吉岡の麻雀は、麻雀漫画では珍しいくらいに、とにかく高めに配慮しながらの手なりで、決定打をリーチ!というガンガン行こうぜの麻雀。変な工夫はあまりなく、それは最終戦ではなお純化される。麻雀が攻めなら生き方も攻め一辺倒で、斯界の実力者にも師匠にもうわてにも容赦なくぶつかっては、押して押して傷ついて、最後には押し切ってしまう。
逆境でこそ男の真価が問われる!
タネ銭がギリギリ、無謀な差し馬、負けが込んでからの賭け金釣り上げ、負けた相手に再挑戦、とにかく吉岡は逆境を物ともしない。元々孤独な身の上で、勝負に勝つことだけを足がかりに渡世してきた。自分の雀力ととにかく強いメンタルが売りのフルスインガーで、その熱い生き様に男はぐっとくる、というか一体化して勝利者の美酒を味わって読んでいた。
吉岡は言う。「おれは常に勝つ。それはどんな条件でも変わらない」
敵にとって不足なきライバルたち
麻雀は弱いやつを食って稼ぐもの、という暗黙のルールが、僕のような素人にもある。吉岡が好んで挑み、追いつめられるたびに不敵に笑うときに目の前にいるのは、道の達人たちであり個性豊かな強者たちだ。吉岡は強い。だけど敵も何だか強い!追い詰められる。そこからが本領発揮である。特に最後の師匠・青柳戦は、メンタルを削り合う力とプライドのぶつかり合いであり、一度などは吉岡は街なかで膝を落として呆けてしまう。相手にも肩にのしかかっている養子の存在があり、どっちにも負けてほしくないという気持ちで読んだ最後には、一牌の差での決着が待っている。
師匠・青柳という父性
男の子にとって父親とは、朗らかな与える者、というイメージが今ではあるかもしれないが、古くは威厳と厳しさ、自分の将来の姿、そして超えるべき壁、という獅子のような役柄の印象があっただろう。現実はどうあれ。青柳という師匠は路頭に迷っていた吉岡を拾い、生意気にも挑んできたのをぎりぎりで負かし、代打ちとして見込んで居場所を与え、物語の最初で決裂し、以後、RPGで言う魔王のような存在となる。その青柳を敵として否定しながら、青柳の事情も描いて感情移入を誘い、師弟対決をあざといくらいに盛り上げるだけ盛り上げても白けないのは、青柳という男に昔気質の父性という役割と、それだけに収まらない人格があったからだろう。
麻雀漫画に求められるものが詰まっている
リスキーエッジには麻雀漫画に求められる、こういうルールで戦って勝ってみたい、という男のストイックで男性ホルモン的な願望が描かれている。苦しい時こそニヤリと笑え、はたから見てみな男だぜ、という『炎の転校生』の歌があるが、メンタルの強さの発揮というプレイに酔えるシチュエーションとキャラクターが、合理的な麻雀という理解しやすい武器を通して描かれているところに、この作品の鋼鉄の輝きがあると言っていいだろう。僕の中の男らしさを表す、よき出会いの本である。
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