作品タイトルそのままの内容
作品タイトルを考えてみる
句読点で区切られた作品タイトルというのも珍しいように感じます。そのことから、タイトル案が2つあって、検討を重ねた結果、このようなかたちになったのではないでしょうか。
「雲の向こう」だけであってもタイトルとして成り立ちますし、「約束の場所」のみであっても成り立ってしまいます。しかし、敢えて2つを組み合わせたのは、平行線を辿り絞り込めなかったので、絞り込むことをしない折衷案だったように感じられます。しかし、アニメ本編の内容を考えれば、「海の向こう」でも成り立ちます。「星々の記憶」という作品タイトルであっても成立したと思うのです。
間違いのない事実は、このアニメ作品のタイトルは「雲の向こう、約束の場所」ということです。「雲の向こう」といえば、まず想像させるのは空でしょうか。これは尋常じゃない高さの「ユニオンの塔」を指しています。また、それだけだはなく、空を自由に飛ぶことができる飛行機の存在を指しているものだと考えられます。
そして、「約束の地」とは、「雲の向こう」と重複しますが、「ユニオンの塔」を指したものというのが大きいでしょう。次いで、主人公たちが生活・行動していた青森を指したものであるようにも思います。ヒロインの沢渡 佐由理(さわたり さゆり)は長い眠りが覚めることなく、ひとりぼっちの世界にいます。主人公たちとの約束を果たすためには、青森に帰る必要があります。
そして、楽しい時間を過ごした象徴が青森であり、地元の土地だと考えられるのです。決して、「約束の地」は「ユニオンの塔」を指したものだけではないように受け止めることができます。
少女と連動した塔の存在
「ユニゾンの塔」は、いまひとつ不明確な存在であり、しっかり背景や設定を表現されることのなかった存在なのではないでしょうか。
敵国の存在自体も明確に表現されることはなかったですし、主人公の藤沢 浩紀(ふじさわ ひろき)、そして、白川 拓也(しらかわ たくや)の二人の視点で描かれています。ヒロインの佐由理の存在も大きいです。しかし、アニメ本編の中では、主人公たちの目標として役割が優先されていたように感じられます。そういった視点に立って、物語が進行していきますので戦争やテロリズムを描いたものではありません。
そのことから、「ユニゾンの塔」は誰がどのような目的で建設されたものなのか、明らかにならないまま終わりました。物語の中では、「ユニオンの塔」は重要な位置づけのものであることは間違いないです。そして、アニメ作品の中でも、最も象徴的な存在なのではないでしょうか。
その部分が、ぼやけてしまっている点が残念に感じさせるところです。
ただ、ヒロインの佐由理と連動させ、人類にとって危険な存在であることは強調されていたように思います。また、その為の理由付けが、無理に考えてみましたという印象を強く抱かせるのです。
おそらくですが、ストーリーを前提にして制作された作品なのではないか、と推測できないでしょうか。特に主人公の浩紀、ヒロインの佐由理のラブストーリーが前提となり、色んな肉付けがされて形成された作品なのだと思います。
謎に包まれたユニオンの塔
「ユニオンの塔」は最後の最後まで、謎に包まれたまま、破壊されてしまいました。誰が、という点においては少し明らかにされています。しかし、建設された意図が明確にされておらず、明らかに世界感の文明レベルに見合った存在ではないことから違和感を覚えてしまいます。
地球そのものを破壊しかねない存在なので、原子力発電所より危険度は遥かに高い建造物であることは間違いないでしょう。それが周囲に対して、どんな目的で建設されたものなのか、明らかにされていないことに不自然さを感じてしまいます。
国家が兵器として建設したものなのであれば、国家間の交渉の材料にもなると思うのです。また、研究や観測することが目的だったのであれば、研究が凍結しているので、「ユニオンの塔」は稼動していないように思えます。
また、簡単に爆破してしまって良いものなのか、という疑問も残ります。もし仮に、原子力発電所を爆破しようものなら、その被害は尋常ではないものになるでしょう。しかし、アニメ本編では、そこをあまり考えられずに爆破されており、恐ろしいことのように感じられました。
そして、建設された意図が明らかにされていないことから、どのように機能しているのか、そして、どのような影響がでるのか飲み込みづらいです。近未来的な方向ではなく、ファンタジーの方向に振った方が、観る側にとって飲み込みやすい表現だったのかもしれません。
「ユニオンの塔」が建設された目的、そして、どんな機能を有しているのか、最低限それぐらいは明らかにするべきだったように感じられます。アニメ作品を象徴する存在にも関わらず、その部分がボケてしまうと、アニメ本編全体もボケた印象のものになってしまうのではないでしょうか。
きっと制作スタッフからすると、敢えて明確にせず、観た人によって色んな受け取り方ができるようにしている、というのでしょうね(笑
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