ベッキーさんシリーズの魅力
昭和初期のお嬢様
北村薫先生の「三部作」の一冊目に当たるこの作品。士族出身の花村家の長女・花村英子とその運転手"ベッキーさん"が出会う謎を描いています。北村薫先生といえば、「日常の謎」ものの先駆者ともいえる存在ですが、「街の灯」では舞台は昭和初期。シリーズ第二作「玻璃の天」から推察するに昭和7年前後を舞台としているのでしょう。また、英子の通う学校は女子学習院と推測されます。当時のお嬢様を題材にしているということから、読んでいる私もなんとなく心が優雅になったような心持ちがしました(笑)。友人との会話や着物など、どことなく品を感じますし、感情の描写も素敵です。ベッキーさんシリーズを片手に、現代でも残る場所や有名な地名などを、昭和初期を感じながら東京を巡るのも素敵です。
キャラ萌え!
聡明で美しく、強く、運転手としてそして英子を見守る存在としてやさしい視線を向けるベッキーさんは女子の憧れと言ってもいいでしょう。「ベッキーさんとは何者なのか」もシリーズを通して次第に明らかになっていきます。格好良い女性が好きなのでベッキーさんが登場するたびにときめきます。
また、英子の家族も魅力的です。私が特に好きなのは英子と兄の雅吉の会話シーンです。べたべた甘えるわけではなく、かといって冷たいのでもなく、読んでいて微笑ましくなるような兄妹関係です。一般的に兄妹が出てくる小説作品だと、異様に妹が兄に甘えたり執着するものや、逆に全く会話がないような関係が描かれることが多いですが、ベッキーさんシリーズでは自然に仲の良い兄妹が登場するため心地が良いです。現代では当たり前のことも、当時は男女で違うのだということも、2人の会話を通すと身に迫って感じられます。
北村薫先生の一ファンとして
ここまでこの小説作品・シリーズについてだけ述べてきましたが、北村薫先生は私の敬愛する作家の一人です。その私が読んで1番嬉しかったのは「虚栄の市」で早稲田、そして江戸川乱歩(の作品)が登場したことです。北村薫先生といえば早稲田大学のご出身で、デビュー作の「空飛ぶ馬」の「私」も早稲田大学に通っていることがところどころで示唆されています。そんな先生に縁の深い場所である早稲田を、昭和初期の物語でも登場させているところに先生の思い入れを感じて嬉しくなりました。また、江戸川乱歩の作品も「この時代のものか!」という驚きと、ミステリ好きとして興奮するポイントです。
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