学校教育の教材に適したアニメ作品 - ないしょのつぼみの感想

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ないしょのつぼみ

4.754.75
映像
4.50
ストーリー
5.00
キャラクター
4.75
声優
5.00
音楽
4.75
感想数
2
観た人
2

学校教育の教材に適したアニメ作品

5.05.0
映像
5.0
ストーリー
5.0
キャラクター
5.0
声優
5.0
音楽
5.0

目次

アニメ制作された意図が明確

ここまで制作された意図が明確に感じることができるアニメ作品はない気がします。原作マンガからアニメ化されたOVAですが、制作意図が、一般的なマンガやアニメとは大きく異なるのが特徴的といえます。

特に感じたのが、6WHに当てはめられ、教材として意識されています。

 

WHAT(テーマ:何が)

性教育

 

WHO(誰が)

原作者及び制作スタッフ

 

WHOM(誰に)

小学校高学年の女子向け

 

WHY(なぜ)

心と身体の成長・知識を伝えるため

 

WHERE(どこで)

マンガ・アニメ媒体を通じて

 

WHEN(いつ)

マンガは平成16年連載開始、アニメは平成20年OVA発売

 

HOW(どのように)

主人公の成長を通して女性の発育や恋愛感情を描く

 

HOW MUCH(いくら・どれくらい)

予算は不明

 

ここまで目的が明確に打ち出されたアニメ作品は珍しいように思います。また小学生向けの題材ということで、アニメ・マンガという媒体は適しているのではないでしょうか。画風など作品全体のイメージも、少女マンガそのものといった印象であり、女子向けというターゲットに合致しています。

マンガ版はファンタジー要素が強いようですが、OVAアニメ版のファンタジー要素は強くありません。マンガ版の第1期と呼ばれる部分をアニメ化されたようで、ファンタジー要素が強いと教材としての意味合いも曖昧になってしまうように思います。OVAアニメ版は、その部分を抽出したことが素晴らしいことだと思います。

立派に小学校高学年、女子の性教育教材としての役割を果たせるものに仕上がっていると感じました。

お母さん、お父さんが揃った円満な家族というのも年々減少傾向のようです。離婚率の増加、シングルマザーと呼ばれる方の増加、家族形態の多種多様化ということが社会問題として取り上げられることも多くなってきました。また、父親一人で娘を育てるといったケースも少なからず存在しているでしょう。父親では、なかなか娘の性教育という部分に触れられないと思うのです。

そういった場合に、「ないしょのつぼみ」というアニメ作品のようなツールは非常に有効になるのではないでしょうか。存在意義はとても高い作品で、よくアニメ・マンガという媒体で制作してくれた、と着眼点や発想に凄みを感じます。

 

沙耶ちゃん可愛い~

個性的な登場人物で、それぞれキャラクターが全然違いますよね。観た人によって、好みが違うので、お気に入りキャラクターも違うと思うのです。

私の好みでいえば、ダントツで遠藤沙耶ちゃんです。自分の中でしっかりとした軸があり、落ち着いた印象は大人をイメージさせます。しかし病弱で、どこか謎めいている部分があり、不思議な存在感を放っているのが好印象です。物語の中では、主人公つぼみと同級生でありながら、お姉さん的な役割を果たしています。あの大人の雰囲気の落ち着いた感じが、彼女の最も大きな魅力だと思います。

明確には表現されていませんが、沙耶ちゃんは、きっと主人公つぼみの妹が具現化されて、つぼみを助ける為に現れた存在だと思うのです。急に姿が見えなくなったり、不思議な存在として扱われていたことが物語の中では布石となっています。そして、つぼみの妹が産まれたとき、目や髪の色、そして名前で、遠藤沙耶ちゃんのイメージと結びつく仕掛けになっています。ウィキペディアでは、あくまで別人と表記されていますが、これは制作スタッフから観る側への投げかけになっていると思うのです。どのように解釈、受け取るかは、観る側の自由で、好きな受け取り方をして下さい、という観る側任せになっていると感じます。

私は遠藤沙耶ちゃんと、つぼみの妹、沙耶は同一人物だろう、と受け取ることにします。その方が、物語として素敵だし、ドラマチックだと思うからです。このOVAアニメ作品を観終えた皆さんはどのように受け取りますか?

 

登場人物についての考察

八重ちゃんの人気も高いでしょうね。ショートカットで黄色の髪、長身、細見でボーイッシュな印象の八重ちゃんは、一般的には人気が高そうな気がします。アニメ作品の中でも、唯一、男の子と付き合うという経験をしている早熟な存在です。

なぜ、この手のキャラクターは人気が高いのでしょうね(笑

機動戦士ガンダム、シャア・アズナブルの影響なのでしょうか、それとも少女マンガ系の伝統というものなのでしょうか。しかし、八重ちゃんとクラスNo.1の人気を誇る葉くんとの進展を、つぼみが偶然見てしまうことで物語が進行していきます。そういった意味では、八重ちゃんの存在もこのアニメ作品の中では重要なポストだと考えることができます。

 

麗愛ちゃんについては、現実にクラスに一人はいそうな、口数多いタイプですね。そして、「麗愛」という名前が、今でいうキラキラネームと呼ばれるものになっています。他の登場人物の中でも、キラキラネームなのは彼女だけなので、名前だけでも十分に存在感があります。その上、唯一、愛称があるキャラクターでもあります。「れあぴぃ」という愛称は少しイタイ気がしますが、そのイタイ部分も含めてキャラクターとして成立しています。

 

そして、主人公つぼみの好きな男子、大樹くんですが、葉くんとクラスの女子人気を二分する存在なのではないでしょうか。それほどにイケメンに描かれていますし、実際にイケメンだと思います。しかし、少女マンガにおける王道パターンそのものの男の子キャラクターといえるでしょう。普段はそんな素振りないのに、ピンポイントで見せる優しさに女子は胸キュンなのでしょうか。

 

最後に、主人公つぼみですが、「つぼみ」という名前が少々可愛そうに思いました。彼女はいつまで「つぼみ」なんでしょうか。もちろん名前は一生なので、「つぼみ」なんですよね。大人になっても、「つぼみ」という名前を背負って生きなければなりません。「つぼみ」という名前は可愛い響きですし、彼女のキャラクターを形容した名前になっています。しかし、大人になっても「つぼみ」なんだよな、と気付いてしまうと笑えてしまいますね。

このアニメ・マンガ作品の中で、一番のツッコミどころなのかもしれません(笑

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性教育を目的として作られた作品

原作者・やぶうち先生、および原作についてやぶうち先生の代表作「水色時代」をはじめとして、思春期の少年少女の心情、心の成長を細やかに描く作風である。1996年に「水色時代」がアニメ化したことで、その関連の作品を学年誌「小学六年生」に連載したことがきっかけとなって、以降小学館の学年誌に性教育を絡めた作品を連載する運びとなった。それが本作の原作「ないしょのつぼみ」である。やぶうち先生の実体験が基となっている話も多いとのことである。この「ないしょのつぼみ」は学年誌が休刊になる2011年度末まで8年続いた。ただし、主人公や周囲の設定などは毎年変わっている。2008年に第54回小学館漫画賞児童向け部門を受賞した。アニメ化されたのは8年続いた連載の最初の1年の連載の話である。 性教育の視点からの考察本作品を性教育の視点から見てみたい。原作が掲載された学年誌は男女問わずに見ることができる雑誌であった。...この感想を読む

4.54.5
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