キャラクター紹介といった位置付けなのか!?
飛躍した展開!?
色々と斬新な部分が多いアニメ作品で、率直な感想、とても驚きました。とくに驚かされるのが、展開が飛躍する部分です。おかしい方向に思いっきり舵を切る展開が、この作品の醍醐味といえるのだと思います。「極論」という言葉がありますが、意図的に、明らかにおかしい方向で「極論」しているので面白いのでしょう。
特に、主人公が事あることに絶望して、自殺願望を持っているキャラクター性に驚かされましたが、これが「極論」であることの象徴的な部分なのだと思います。また、「極論」であることを象徴する項目として、ヒロイン風浦可符香の存在も挙げられるのではないでしょうか。主人公の対極として、風浦可符香の極端なプラス思考も一般的な感覚からはズレています。間違った肯定と間違った否定、それを行ったり来たりしている様子が話の本筋を支えている柱になっています。
また、不登校や引きこもりという社会現象を面白おかしい笑いにしている点にも驚かされます。飛躍した発想の独自視点により、面白く演出していますが、この内容で地上波放送されていたことに戸惑います。また、面白おかしいはずなのに、妙に的を射ていることも多いように思います。変な方向に舵を切っておいて、狙いを定めて、ピンポイントで狙うべきところを狙っていることも伺えます。話の飛躍のさせ方に緩急がついていることも、振り返ってみて、改めて感じることです。
また、話を飛躍させているということは、色んな要素を詰め込んでいることの裏付けにもなっていると考えられます。他アニメネタのパクリ、時事ネタ、社会問題ネタ、突拍子のないパンチラなど、多くの要素を盛り込んでアニメ作品として仕上げられています。
まとまっていない感じが印象的ですが、それすらも自嘲ネタとして扱っている点は、類をみないアニメ作品になっていると思います。
話を追うごとに登場する新キャラクター
シリーズが多く、長く続いているアニメ作品といえます。この作品における位置づけとしては、人物紹介という意味合いを強く感じます。また影の薄いキャラクターから、徐々に姿を消している点も面白いです。これも良い意味で笑ってしまう要素になっており、自由奔放に制作されていることが伺えます。
それぞれ登場するキャラクターの個性も強烈です。ストーカーにSM、引きこもり、腐女子、粘着性女子、違法入国者、DV疑惑、薄毛、パンチラ担当、毒舌、コミュ障、冤罪などなど、それぞれの個性においても多くの要素を盛り込んでいることが伺えます。また、主要メンバーたちが揃ってくると、主人公の家族・兄弟にも言及されています。そして、それぞれ新しい登場人物が現れると、その人物の個性を象徴した話の展開になっていきます。そこの部分は、ブレずに話は進んでいきますので、全体を俯瞰すると、人物紹介という意味合いを強く感じさせる結果になっています。
発想として面白いと感じたのは、周囲の個性が強いと、「普通」であることも立派な個性と考えることができることです。また、「普通」は誉め言葉ではありませんが、作品の中では貶める表現になっています。この部分においては、真を捉えたもので、素晴らしい着眼点だと感じました。
全体的な傾向として感じられるのは、男性キャラクターの存在が薄いことです。登場するキャラクターに個性の強い女性が多いことが挙げられます。男性キャラクターでいえば、主人公の糸色先生の身内しかいないのではないでしょうか。ほとんどが女性キャラクターで構成されている点は特徴的です。
そして、意味のないパンチラを差し込んできますが、エロさ勝負をしていない部分も印象が良いです。変にエロい表現をしておらず、前に脈絡がなく、突発的にパンチラ場面を入れることによる笑いを狙ったものだと考えられます。下品には感じられないので、狙いが明確なことが良い方向に作用しているのではないでしょうか。
糸色先生の魅力
「さよなら絶望先生」という作品の特徴として、主人公の糸色先生を好きになってしまうことが多く、モテモテのハーレム系アニメである印象も拭えません。
そして、「糸色(いとしき)」と「愛しき」を暗に掛けているのであろう、と考えられます。常に愛されている存在として、主人公に据えられていることも、物語の中でブレていない要素です。
ただ、首を吊っている主人公の絵はインパクトが大きいです。そして、話を自殺の方向に持っていくのは危険度が高いように思います。笑いを狙っていても、事が重大なだけに、返って笑えなくなってしまいます。それを躊躇いもなく、表現している勇気は凄いことのように思えます。
「糸色」という発想は素晴らしいです。下の名前に「望」と入れれば、「絶望」になるという着眼点が面白いですし、兄弟・姉妹で面白さを増すことができます。下の名前が「命」であれば「絶命」、また、「倫」であれば「絶倫」など、親の悪意を感じて楽しいです。日本中で探せば、「糸色」という苗字の方はいると思います。そう考えると、漢字一文字の名前を付けるのは、とても危険なことです。原作者の豊かな発想力と着眼点が、この作品の面白さを形成しているのだと思います。その裏側にある、発想を生み出す努力、着眼点を支える努力によって成り立っているのだと感心させられます。
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