不死の苦痛
不老不死というのは果たして人類が追い求める永遠の望みなのだろうか。永遠に生き続けることに意義はあるのだろうか。人が生きている上で味わう全ての苦しみを永遠に味わうなど私には到底無理な考えである。
この作品で描かれているのは「不死」の悲しみとそれを求めるあさましい人間の醜悪な部分も鮮明に描かれている。八百比丘尼の血を引き、瞬時に傷が治るためその能力を強欲な人間たちから狙われ続ける姉を助けるため、ルパンに弟子入りを懇願する少女・真紀。血は繋がってはいないが作中では彼女たちの絆が描かれているのがよくわかる。
今回のお宝は「八百比丘尼」自身。ミイラ化もせず、800年前から変わらない姿で眠り続ける彼女を巡って様々な謀略や虐殺が繰り広げられてきた。ルパンも結構な大けがを負うほどの出来事であった。
中でも敵である氷室は相当な極悪人で強欲な人物であった。石田彰氏の怪演と相まって、相当な不気味さと卑劣さを現していた。人魚の血を集めて実験をし、「八百比丘尼」を自身の手元に置くために数々の事件や要人の暗殺にかかわってきたのだ。
欲望のために人の命すら顧みない、まさに化け物同然の悪役であった。
そんな彼も文字通りの化け物へと変貌すると。八百比丘尼の血を自身に投入し、いったんは力を得るものの、その代償で異形の存在へとなり、最後は崩れゆく洞窟と共に死んでいった。
化け物として永遠に生き続けるよりはマシな結末だったかもしれない。真紀の姉も事件後は傷が治らないようになり、ようやく人間のように生きることができた。
人は与えられた寿命を全うするのが一番であろう。友も、師も、家族もが死んだ世界で永遠に生き続けることは、ある意味死ぬことよりも苦痛ではないのだろうかと私は思った
- あなたも感想を書いてみませんか?
- レビューンは、作品についての理解を深めることをコンセプトとしたレビューサイトです。
コンテンツをもっと楽しむための考察レビューを書けるレビュアーを大歓迎しています。 - 会員登録して感想を書く(無料)