作者の理想を具現化した厨二作品 - 学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEADの感想

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学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD

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感想数
1
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1

作者の理想を具現化した厨二作品

3.03.0
画力
3.5
ストーリー
3.0
キャラクター
3.0
設定
2.5
演出
3.0

目次

パニックホラーというよりは、サバイバルアクション漫画といえるか

『学園黙示録 HIGHSCHOOL OF THE DEAD(以下HOTD)』』は、ゾンビパニックを扱った漫画作品である。現在(2016年3月時点)では休載中であり、いまだに連載再開のメドはたっていないが、アニメ化もされパチスロの題材にもなっている。

年端もいかない少年少女たちが、刀や銃器を扱いゾンビたちを倒していくいわゆる「無双」漫画であるため、いささか荒唐無稽な設定が多い。強すぎる高校生たち、何人斬っても使える刀など、ややツッコミたくなることも多々ある。

故に正統派のゾンビパニックものというよりは、アクションを楽しむ漫画と位置付けた方が良いだろう(これは原作側も「学生の頃に考えた漫画」として、無茶苦茶な設定であることをコミックスあとがきでことわっている)。ちなみにタイトルに「学園」とつくが、学園要素は序盤のみで、あとはあまり関係がない。せいぜい主要キャラが高校生である、ということぐらいか。

だが、『HOTD』は単なるご都合主義なアクションのみの厨二作品には留まらない。確かに展開は荒唐無稽ではあるが、軍事・銃器関係のミリタリー知識が豊富であるため、設定に厚みが増して説得力をつけている。いわば「作者の空想にのめりこませるだけの力」が、この作品にはあるといえる。

また、もう一つの『HOTD』の大きな魅力が、女性キャラたちのエロティックな描写だ。グラマラスな体格の女性(少女)たちが刀や銃を扱い勇猛果敢にゾンビたちに立ち向かっていく姿は、一部のファンにとってはたまらない光景といえるだろう。

漫画もさることながら、アニメだともっとすごいことになるので、漫画だけ読んだ人はアニメにも目を通してはいかがだろうか。胸の揺れ具合や悩ましい身体のカットはとてもとても刺激が強い。アニメスタッフさんgj!!

ゾンビものとしては正直、いまいち

前項で筆者は『HOTD』をアクション漫画と位置付けたが、ゾンビが登場し、人を襲う以上はやはりパニックホラーとしての考察もしなくてはならないだろう。

近年、ゾンビの登場するパニックホラー作品、通称「ゾンビもの」の活況には目を見張るものがある。

アメリカではジョージ・A・ロメロの作品『ゾンビ』を筆頭に、『ゾンビ』リメイク作『ドーンオブザデッド』や『死霊のはらわた』『ゾンゲリア』、ドラマでは『ウォーキングデッド』が人気だ。

『バイオハザード』シリーズの母国である日本でも「ゾンビもの」人気は健在で、2016年4月には『アイアムアヒーロー』も映画公開予定だ。

ゾンビはそもそもブードゥー教の儀式によるもの、というのが定説だが、「蘇る死者」「広がっていく感染」「一度噛まれたら終わり」という精神にも肉体にも恐怖をもたらす数々のキーワードが人気を呼び、「ゾンビもの」は世界各地で愛されている。

『HOTD』はその「ゾンビもの」の一つに数えられる作品なのだろうが……出来としては、飛びぬけた魅力はない。

というのも、やはり「無双」が足を引っ張っているのだ。

高校生の主人公たちが武装をして強いせいで、危機的状況に陥らない。「いつ、誰が欠けるか」のホラー的な怖さはなく、ただゾンビたちは口を開けたクリーチャーとして主人公たちに倒されていくだけ。もちろん、そこに爽快感もあるのだが、「ゾンビもの」としてこの作品を手に取った人間には、少々物足りない展開といえるだろう。「絶対安全圏」のあるホラーは面白味にかける、という定説の反面教師となってしまった。

ただし、「ショッピングモール」や「エロ」など、「ゾンビもの」の定番やオマージュはきっちりと踏まえられているので、原作者が「ゾンビもの」を愛好しているのは窺える。

そもそも制作サイドが「ゾンビもの」「ホラー」ものとして作った訳ではないと言われればそれまでだが、両雄並び立たずというか、「無双もの」と「ゾンビもの」の両立は難しいのかなぁ……と痛切に思う次第だ。

『バイオハザード』もアクション性を重視した『4』から急激にホラー要素がなくなってホラーゲームファンが離れていったし、難しいところであるのだろうが……。

再開のメドはいまだにたたず。結末はいかに

悲しいかな、『HOTD』の連載再開のメドはたっていない。原因は原作者・佐藤大輔の体調不良と3・11の震災ショックにあるというが、詳細はわかっていないという。

「ゾンビもの」は世界規模で感染拡大ーーパンデミック状態に陥ることが多く、作品の収拾がつかなくなることが多い。そのうえで各作品がどういった顛末を辿るのか、非常に興味深いところではあるのだが……『HOTD』の終局は、いまだにその片鱗すら見えてこないのが現状だ。

やはり物語というのは、きちんと完結してこそ一つの作品として完成し、語られるものである。

様々な事情があり、続けられない作品があることは重々承知しているが、筆者としては『HOTD』のいち早い連載再開を望み、「ゾンビもの」としてどういった完結になるか楽しみにしている次第である。

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