人気ホラーゲーム原作もとにかく絵が難
人気ホラーゲームの漫画化
『ひぐらしのなく頃に』『Fate』を始め、昨今同人ゲームは、世間の認知度を大きく上げている。生みの親である原作者が作り出し、コミックマーケットなどでの頒布をキッカケに、大手出版社やアニメ制作会社によってメディアミックスされることも多くなっている。
『コープスパーティー』も、そんな同人ゲームの一つだ。もともと、自作ゲーム制作用ソフト『RPGツクール』で制作された原作が人気を博し、以降続編が作られ、漫画・アニメなどメディアミックスされるに至った。
ジャンルとしてはホラーアドベンチャーである。フリーゲーム市場においてホラーは常に一定の需要があるが、『コープスパーティー』は『ひぐらし』と並んで、同人ホラーアドベンチャーの代表作となっている。
さて、本考察ではその『コープスパーティー』のコミカライズ作品『コープスパーティー BloodCovered』を取り上げる。
出版社はゲームのコミカライズ元として歴史があるスクウェア・エニックス。『ひぐらし』や『うみねこのなく頃に』の漫画化もスクウェア・エニックスが手がけていることから、ホラーのコミカライズはお手の物…なはずであった。
なぜこうなった ダメすぎる作画
もともと、同人ゲームがもとになっているだけあって、キャラクターデザインは作画担当者である篠宮トシミの責任はない。
だが、それにしても全体的な完成度が低すぎる。
まず、ホラーなのにさっぱり怖くない。これが『コープスパーティー』最大の問題なのだ。
随所に出てくる幽霊たちは顔に迫力がなく、目はやや三白眼気味で顔色が悪そうに描かれているだけ。
驚かせようとしているとも、怖がらせるようとも見えず、ホラー的な演出が全く見受けられない。せめて構図やコマ割りを工夫してくれればいいのだが、「ひき」や「めくり」を活用することもなく、幽霊たちは見開きに登場することもなく、ただただ突っ立って、たまに襲いかかってくるだけ(しかも、スピード感がなく緩慢なのがまた困る)。下手をすると、「これは多少怖い顔をした生きている人間なのか?」と思ってしまうほどである。
時折グロテスクな描写もあるが、正直いって全くグロくない。顔上部が吹き飛んだ子供も、不思議なほどに「普通」なのだ。まるで標本、いやそれよりももっと簡素である。子供たちの遺体を拾い集めるくだりがあるが、遺体のかけらがまるで精肉店で売っているようなキレイな固形型の物体ばかりで、あまりにリアリティがなさすぎて失笑レベルである。
作画の問題は、メインキャラにしても同じことがいえる。
主人公はモブ顔。ヒロインは髪型でなんとか判別がつくぐらい。登場人物も一気に出てくるので誰が誰だか人間関係がわからず、死ぬ間際になって「あぁ、そういう関係なのか」とようやく承服できるレベルである。ここに時間がかかるせいで、ホラーどころではない。
10巻も続いたにしては、全く作画の向上が見られないのも残念といえるだろう。スクウェア・エニックスあたりは作画レベルの高い漫画家が多いだけに、この漫画家をチョイスしたことに疑問が残る。
迫力不足は消化不足に 味気ないストーリー
作画の実力不足は、ストーリーにも悪影響を及ぼした。
絵が下手なせいで漫画がつまらなく思えるということは滅多にないことであるが、この『コープスパーティー』はまさにその一例になってしまったといえよう。
まず、幽霊が喋りすぎなのである。悪霊とかした幽霊が主人公の働きによってあっさりと正気に戻ったかと思えば、キレイな顔で助かる方法をつらつらと述べ、手助けしてくれたりする。これが物語の途中で現れる連中だけでなく、まさかの元凶であるサチコもそうなのだから辛い。吹き出しつきでベラベラ喋る悪霊…こんな陳腐な演出を見せつけられると、ただのギャグとしか思えないのだ。
原作もそうだから、と言われてしまえばそれまでだが(筆者は原作をプレイしたことがないのではっきりしたことはいえないが)、それにしても迫力が全く足らない。幽霊のセリフをもう少し上手く演出させるなど、漫画を面白く読ませる工夫はいくらでも出来たはずだ。エンディングまで見ても、感動も余韻もなくただ脱出しただけ、と消化不良になってしまう。
コミカライズは、原作を知らない人に内容を宣伝する格好の機会となるはずだ。筆者は原作に興味を持ち、漫画を読んでみたが、このお粗末な出来では原作をプレイする気もなくしてしまう。
コミカライズとは、原作未プレイのファンも既プレイのファンも楽しませるような作品を作らなければならないはずだ。原作の人気に甘えるだけの作品では、作画担当者も出版社も決して良い印象を与えないだろう。そもそも、原作者に失礼だ。『コープスパーティー』をプレイしたことのない筆者でも憤りを覚えるほどなのだから、原作ファンの怒りはいかばかりか。
『コープスパーティー』の原作はもっと面白いということを期待して、この考察の結びとする。
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