心に置くバイブル
誰しも過去や現在において、戒めとなる物語がある筈だ。疲弊した自分自身を見つめ直す源泉となるもの。まるで鏡に映し出された自我を見ているか、登場人物が語り掛けてくるような。
淀みを抱えた現代人は何か漠然とした不安感に覆われている、そんな感覚が逃げ道を求める。決して正しい道だけでは無い。逸れてしまった人が遭遇するのは逃れようの無い巨大な穴だ。
穴には幾つもの心 を支配下に置こうとする魔物が存在している。それが依存症だ。ギャンブルや薬、インターネットなどが例に揚げられる。
アルコール依存症による支配は身体と精神を縛り付けてしまう。この作品の圧倒的な臨場感は原案が手記を元にしている点にあるだろう。酒が抜けると感情を爆発させる患者達の確執はそこらにある会社の人間関係と何ら変わりが無い。施設の中はまさに小劇場で、ライブ感覚で観る者を捉えて離さないのだ。
登場人物を上司や同僚、後輩に置き換えて鑑賞すれば、日頃の自分を投影して客観視出来るので 、身に染みて思わず苦笑いする人も少なく無い筈だ。ホロリと泣けて笑ってしまう。いや、笑ってしまえば依存症は最早過去の異物となって、苦悩する事も無いのだろう。
ただ、繰り返さないよう心にしっかりと置いておけばいい。逃げ道がこの映画にはきっとある。
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