ハサミ女の犯罪時の複雑な気持ち。
実は二重人格者による殺人であったということ。
二重人格の人を実際に目にしたことはありません。どのような状況で何が理由で人格が重なり合ってしまうのか、実際のところ詳しくはありません。この作品の中に出てきた二重人格の女性は、個人的にどこか悲しげな印象を受けたのか最初でした。話が進むにつれて、やはりこの女性はなにかあると確信したのが、何度も自殺を試みるシーンをみた時でした。そこにいたもう1人の男性は彼女が自殺をしようとするのをただ見ているだけです。優しい言葉をかける訳もなくただただソファーに座り、そんなやり方では死ねないよ、と言います。普通なら助けたりもっと違う言葉をかけるのが普通です。私はこの時、違和感を感じて見ていました。なんだか男性は自分に言っているかのように見えました。この男性ももしかしたら自殺したいのか、その自殺方法を既に試したことがあるのじゃないかと思いました。二重人格でも、周りから見たら普通の女性で、私達の目に映るのは、もちろん1人の姿です。しかし、二重人格の彼女はもう1人の男性と会話することが出来ます。そして2人で一緒に犯罪を犯していきます。記者がハサミ男としたせいで犯人は男性であると警察は勝手に勘違いし、なかなか犯人が特定出来ずにいました。二重人格の中の男性が犯罪を犯していたのだけれど、体は女性で、周りからみればごく普通の女性に見えます。二重人格の恐ろしさを感じます。殺害現場にあったのは、女性用のスニーカーの跡で男性のように大きな靴跡ではなかったのです。その場面を見た時に、私は確信しました。この犯人は二重人格であるということを。確かに作品の中には男性がいつも一緒にいましたが、その男性は女性の、二重人格の1人で実際にハサミを持ち殺害をしたのは女性なのです。
二重人格の辛い現実、もう1人の自分が今は亡き大切な人だったら。
女性は、二重人格のもう1人の男性と殺人を犯しますが、本当にそれで良かったのでさしょうか。本当は殺害したくないと思っていたかもしれません。しかし、もう1人の自分は殺害したがっていて、実際に殺人を犯します。この女性がもしきちんと精神科に通って合って治療を受けていれば、このような悲しい殺人は起きなかったかもしれないのです。自分が二重人格であると認め理解し、病院に行って治す努力をしていれば人が死なずに済んだし、女性も殺人犯にならなくてすみます。もう1人の自分がいたら何を犯すかわかりませんし、危険がいっぱいです。この女性のもう1人の自分は、実の父親であったことが後半で分かります。父親は既に自殺していて、この世にはいません。自分が愛していた亡くなったひとが自分の中に現れたら、誰も消したいとは思わないのかもしれません。全くの他人がもう1人の自分だったら医者に早く自分の中から追い出すように頼むでしょう。しかし、、実の父親だったら、一緒にいたい、消えないで、もういなくならないでと思うでしょう。そのため、この女性は今は亡き父親のことを思いながら、自分は苦しく悲しい日々を過ごしていたのではないでしょうか。どっちにしろ難しい選択ではありますが、この女性の二重人格で悩む気持ちが少しでもわかったような気がしました。
罪に問われるのは、ハサミ男それともハサミ女か、誰なのか、、。
ハサミ男の殺害をしたいという気持ちで、ハサミ女は、ハサミを手にして男に言われたとおりに殺害していきます。それも1人ではありませんでした。2人目を殺害する時は実際、1人だけと言ったじゃないと拒否反応を示しています。しかし、犯行は続けられるのです。誰が殺害をしたことになるのでしょう。ハサミ女は拒否しましたが、ハサミ男の意思によって犯罪を犯してしまいます。
このような場合、ハサミ女の犯罪となるのでしょう。他人にはハサミ男の存在が見えないわけです。そんな二重人格だからこその悩みや苦悩がこの作品から見ることも出来ると思います。二重人格、、この言葉だけ聞くと、怖いイメージがあります。どのように接すればいいのかなど考えてしまいますが、本人からしたら、1人の人間であることは確かなのです。犯罪など起こさないためにも、自分の大切な人がもう1人の自分として現れたとしても、専門家に相談することがその人の責任だと思います。何かあってからでは遅いのです。この作品の様に、二重人格で犯罪を起こしてしまうという悲しい事件が起きないようにするためにも、現実に二重人格で悩んでいる方がいたら、ぜひ全てを隠さずに専門医に診てもらうことを勧めます。そんなことを考えさせられた作品でした。見る前には考えませんでしたが、犯人が二重人格と分かって、最初とは違う観点で、もう一度見ることが出来る作品であると感じました。犯人の気持ちになって、自分の意志ではなくもう1人の自分の意思により犯罪を犯してしまったというハサミ女の気持ちを考えると何故か切なくもなります。病気のせい、とだけでは終われないことを痛感させられました。- あなたも感想を書いてみませんか?
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